2025年度後期適用ランクを考察

2025年08月08日

 2025年度後期適用ランクの発表があった。これは2025年1月1日から6月30日までの間における競争成績を審査した結果、各選手の全国ランクが決まるというもの。実際にレースで適用されるのは2025年10月~2026年3月開催分となる。
 
 今回の新ランク発表では今までにない大きな変化があった。2019年度後期から2025年度前期までは、青山周平鈴木圭一郎の2人が全国ランク1位と2位に必ず入っており、いわゆる2強時代が続いていたが、2025年度後期のランク付けでは2位に黒川京介が食い込んだ。採点期間の1月から6月いっぱいまでの成績は確かに驚異的で、16優出の内、優勝が10回。その中には記念レースが4つ含まれている。予選や優勝戦、一般戦などレースの種別を問わず競争したのは全92走で、その内1着が62本。1着率は約67パーセントに及ぶ。オートレース界の強固なツートップに割り込めるだけの成績を残している。
 黒川 8
↑黒川京介選手
 
 3位に転落したのは鈴木圭一郎。採点期間にG1を2回制しているが、優勝自体がこの2回のみ。選手全体で見れば十分な結果だが、いつもの鈴木圭一郎からすればやや物足りない成績とも言える。
 
 2025年度前期に続き全国ランク1位になったのは青山周平。採点期間にSGを1回、G1を2回制している。それらを含め優出回数は11回で、黒川京介より数字は落ちるがほとんどの優勝戦で車券に貢献できているように、優出しただけではなく好成績を残し続けている。レースの種別を問わず競争したのは全70走で、その内1着が49本。1着率にすると黒川京介越えの70パーセントにまで及ぶ。2連単率で言うと約87パーセントとなる。車券を買う際には、安心できる存在感を放っている。
 
 上位3名以外で特に目立った動きがあったのはS級12位にまでランクアップした栗原佳祐。2025年度前期がA級25位だったので、大幅にランキングを上昇させた。採点期間の最初の節では初日から4連勝で完全優勝。その3節後まで優出を続け、その節でも完全優勝を決めた。結局、7回優出し優勝は3回。他の4走も全て車券に絡む活躍を見せていた。2月に地元浜松で行われたSG競争では、補充参戦ながら3走して2勝。最高グレードレースのSGでも通用する走りを披露した。正選手として出場したSGは2級車の時で、1級車になってからは正選手でSGに出場していない。しかし今回、S級にランクされたこともありSGには優先的に出場できる。そのポテンシャルの高さから早い段階でSG優勝も予感させる。今後に注目だ。ちなみに、同期同地区の吉林直都も来期から嬉しいS級入り。浜松勢はこの両者がこれからを引っ張っていく存在になりそう。
 
 他で躍進を見せたのは山陽の山本翔で、来期からS級35位になった。スピードも捌きも上達しているが、特に素晴らしいのはスタート。最重ハンに数車並んでいても先行するケースが多く見られる。同期の藤川竜はA級103位から9位に急上昇。スタート力が増しているし、人を抜くレースでも通用するようになっている。まだ2級車ではあるが、福岡鷹もA級91位から7位までランクアップした。自身よりもハンデが後ろの人に交わされても、道中で抜き返すシーンが何度も見られ、新人離れした走りを展開している。
 
 文/高橋

 

オートレースは個人戦? チーム戦?

2025年08月01日

優勝を祝う選手達 (1).jpgのサムネイル画像

 優勝戦が終わった後、優勝者のウイニングランが行われる前の記念撮影に、同じ整備グループの選手が一緒に写って優勝を祝っているシーンが良く見られます。
 優勝した選手も一人で勝ち取ったというより、普段から整備グループのバックアップもあっての優勝、と思っている人が多いと思います。


 開催の最終日は、選手は自分のレースが終わると参加解除となり、帰宅して良いのですが、同じ整備グループの選手が優出している時は最終レースまで残っていて、優勝した時はお祝いしてあげるのが恒例となっています。


 オートレーサーは基本的に個人事業主のようなものですが、大切なエンジンの整備は、整備グループを作って、整備情報を共有しあったり、作業や修理を手伝ったりしています。


 選手によっては特定の整備グループは作らず、2~3名の師弟同士、親しい選手同士で整備をしている方たちもいます。


 川口オートの整備グループは大きく分けてみると9グループくらい。グループ内で最年長の選手が中心となる事が多い(例外もあり)です。主なグループ内の選手名とグループの特徴を私の印象で列記してみました。


◎篠崎実選手のグループ

・相馬康夫選手、早津康介選手の他、森且行選手、小椋華恋選手、斎藤撤二選手、上和田拓海選手も、篠崎実選手は気にかけています。


◎長谷川啓選手のグループ

・若井選手を筆頭として、吉田幸司選手、佐藤摩弥選手、中野憲人選手、黒川京介選手、木村悦教選手、君和田裕二選手、高塚義明選手、運天諒雅選手など実力者が多く集まっているグループ


◎岡崎秀二選手のグループ

・高橋祐一選手、高橋義弘選手、増田伸一選手、谷島俊行選手、本田仁恵選手、山際真介選手、田辺誠選手、菅原すずの選手、間中大輔選手、広瀬勝光選手。厳しさの中にもいい意味での和気あいあいさがあるグループ。


◎柴山信行選手のグループ

・山田達也選手、小原望選手、阿部剛士選手、佐藤励選手、中山透選手、中山光選手と次世代を担う若手有望株が多いグループ。


◎牛沢和彦選手のグループ

・丸山浩信選手、大木光選手、上原大輝選手、吉田祐也選手。元支部長だった牛沢和彦選手の人望が厚く、川口以外の各地区にも慕われているグループ。


◎鈴木清選手のグループ

・山田徹選手、泉田修佑選手、小林瑞季選手、稲川聖也選手。鈴木清選手を筆頭に、小林瑞季選手、稲川聖也選手と常に上を求めて整備をしつづけ、整備量が半端ではないグループ。

◎佐藤裕二選手のグループ

・掛川和人選手、加賀谷建明選手の他、佐藤裕二選手と同期の他場の24期の選手と仲が非常にいい印象。夏場が得意な掛川和人選手、雨が得意な加賀谷選手と一芸に秀でてているグループ。


◎川原剛選手のグループ

・伊東玲衣選手、片野利沙選手、森谷隼人選手。優しさの中にも厳しさ、誠実さがある川原剛選手、森谷隼人選手の指導で、女子2選手が成長しているグループ。片野利沙選手はいつも癒しの存在。


◎28期のグループ

・中村雅人選手、武藤博臣選手、高石光将選手、石井大輔選手に加え、他場の28期が川口遠征にくると大所帯になる。特に同期の仲の良さが見られるが、仕事のオンオフはしっかりありつつ、極めて明るい雰囲気があるグループ。


 以上はあくまで記者の私の印象であり、実は違うよ!と選手からお叱りを受ける事があるかもしれませんが、ご容赦ください。


 一般の会社に例えれば、それぞれの部署の上司・同僚といった感じでしょうか。ただ、オートレースで勝利を目指すという目的は、どの整備グループも一緒です。
 また、仕事上のグループですが、プライベートでも遊びに行ったり、食事したりして人間関係がより深まっているようです。


 オートレースの選手達は個人戦に見えますが、より団体戦の色合いが濃いと言っていいでしょう。


(文/金子)


 

6月のMVP等

2025年07月25日

 
 
 6月に入ってからすぐに行われた記念開催の優勝戦は、山陽のG2ミッドナイトチャンピオンカップ。ここでは川口の黒川京介が優勝した。黒川京介は今年3月に行われたG2ミッドナイトでも優勝しており、同大会連覇となった。3月の優勝戦は良走路だったが、6月の優勝戦は重走路。どちらのレースも大外枠から好スタートを決めると、道中も落ち着いた走りで先頭まで浮上してみせた。ここ一番でのスタートの切れ味は抜群で、全選手から恐れられている。レース運びの方も安心して見ていられるようになった。黒川は29日に行われた浜松G2の優勝戦も制している。このレースでは黒川京介の外枠に鈴木圭一郎と青山周平が控えていたが、しっかりとスタートで先行し、わずか2周半で先頭に立つ速攻劇。2周を回ったホームストレッチでは鈴木圭一郎にインを狙われかけたが、グリップを開け足して封じ込み、レース運びの巧さも披露した。終わってみれば鈴木圭一郎や青山周平を大きく引き離す圧勝だった。6月のMVPは文句なしに黒川京介で異論はないだろう。
 
 渡辺篤 5.JPG
 ↑渡辺篤選手
 
 6月にはもう一つ記念開催が行われた。伊勢崎のG2稲妻賞だ。ここでは浜松の渡辺篤が記念タイトル初獲得を決めた。この時、渡辺篤は48歳。オートレースの世界で記念レース初優勝となるとかなり高齢の部類になるが、伊勢崎の鈴木幸治が51歳で記念レース初優勝を決めているように、決して不可能な年齢ではない。昨年、本人にお話を聞いたときには、当面の目標として記念タイトルを獲ることを挙げていた。デビューしてから記念レースの優勝戦には23回乗っていたが、最高位は準優勝までだった。それが24回目のチャレンジにして初の栄冠となった。この結果は本人にとって大きな糧になるだろう。今後のG1、SG開催での躍進があるかもしれない。6月のMVPとまではいかなくても、それに準ずる価値のあるものと言える。
 
 6月に入ってから一番初めに行われた優勝戦は川口の昼間一般開催。ここでは地元の佐藤摩弥が優勝した。佐藤摩弥は今年に入ってから9回目の優出にして今年の初優勝となった。ただ、それまでの優出にはSGやG1なども含まれているので、悪い状態が長く続いていたというわけではない。優勝後も優出を重ね、上位着を取り続けている。
 
 6月の優勝者で最も若い期なのは36期の石田啓貴。20日に行われた浜松の昼間一般開催の優勝戦で結果を出した。このレースでは0ハン単騎に置かれたものの、20線には鈴木圭一郎をはじめ、佐藤貴也、伊藤信夫、木村武之などそうそうたる顔ぶれが揃った。しかし、レースではスタートでしっかりとハンデ差を保って発進し、猛追撃してきた鈴木圭一郎を振り切り、見事に自身3度目の優勝となった。その後はハンデが重化し、最重ハンの10メートル前になり、現在まで苦戦が続いている。それでも若手の部類なので成長の余地は大きい。これを克服して更に選手としてパワーアップするだろう。
 
 文/高橋

 

38期19名の成長日記

2025年07月18日

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佐々木光輝.jpg


デビューから半年が過ぎ、熱走路も体験した38期。各場に散らばった19名はフランチャイズでも、他場でも経験を積んでいる最中。

デイレース、ナイターにミッドナイトと異なる時間帯でいかに活躍できるか、師匠や同期にアドバイスをもらいながら、あるいは自分なりに考えて整備にレースに奮戦している。


 川口の選手から見ていこう。

 上原大輝は良走路43走で10勝、濡れ走路11走して2勝の合計12勝と38期の中では稼ぎ頭だ。養成所の最優秀選手だけあって、センスと車速を持ち合わせている。6月5日のナイトレースでは初めて優勝戦へ名を連ねた(結果は4着)。     

 続いては運天諒雅。デビュー2走目で初勝利を挙げ3節走って3勝とマズマズの滑り出しだった。ところが、3月15日に落車してしまい(植村に落車妨害)その後は濡れ走路で2着2回、良走路で2着1回と1着を取れてない。素質は悪くないだけに上昇のキッカケを掴めるかどうかだ。

 3人目は染谷和香。デビュー2節目に落車し、その後は8着、7着が続き車券の対象になってない。初勝利が待ち遠しいが、6月以降は休場している。

 伊勢崎の選手は2名配属。

 佐々木光輝は41走して10勝と上原に続く勝ち星を挙げている。まだ、逃げる展開ながらペース掴むと後続を離せる力がある。川口遠征でも1着取っており、伸びしろはかなりありそうだ。

 2人目は浜田樹来。41走して未勝利。伊勢崎で雨6着がベストの成績。良走路のタイムは3・5秒台を一度も出せてなく、6周しっかり回れるように精進していただきたい。

 浜松の選手は坂本茉奈が養成所のケガでデビューが遅れてしまい初出走は6月3日の雨走路。結果は6着で以降8着が続いたが、7月5日に3・5秒台を出して2着と上昇の兆しを見せた。

 鈴木景斗は50走して5勝だが、晴雨にかかわらず走れる印象。実際、良走路3勝で濡れ走路は2勝。2着も良走路で5回、濡れ走路で2回となかなかのもの。今後の活躍に期待が持てるひとりだ。

 瀬戸尾侑宏は50走して1勝のみ。まだ、走りは確立しきれておらず、本当の実力は見せてないようだ。
 
 宮司佳奈が4走で4勝と38期の女子選手としてはトップで全体的に見ても上位に位置する。3月28日に中村友和を振り切って初勝利。印象に残ったのは3勝目の4月21日。試走は再試走3・47と悪かったが、フタを開ければブッチ切りの勝利(上がり3・49で試走戒告)。試走より本番に強い印象で、ツボにハマると手が付けられない怖い選手。

 脇川大樹は5月23日に4着があるが、37走して未勝利。勝ちたい気持ちとマシンが一体化すれば大化けあるのか。

 飯塚選手は4名

竹尾竜星は32走で4勝と勝ち星は増えてないが、本場で1勝、川口・浜松・山陽でそれぞれ1勝とレース場に左右されない強みを持ち合わせてる。 ただ、そのうち3勝は濡れ走路。先日の7月11日に地元初勝利を良走路で挙げた。今後も期待できそう。

 田中海斗は32走して最高位は5着と伸び悩んでる状態。現在80mのハンデをもらっており、後半のペースを保って初勝利を挙げたい

 3人目は壷井亜羅汰。良走路では未勝利ながら濡れ走路で3勝と悪天候に強いレーサー。地元では良走路3着止まりだが、川口・浜松・山陽で2着があり良走路での初勝利も近いか。
 地元の雨で1勝のみの藤井真弘だが、良走路で2着・3着が多く大きく崩れないのが持ち味。願わくば自力で勝利数を重ねて欲しい選手だ。

 山陽には逸材がいる。

 その選手の名は植村愛悠斗。養成所の優秀選手であり上原大輝にもヒケをとらない。現在6勝と全体では3番目タイの勝ち数。良走路で勝ったときは全て3・5秒を切っており速さも兼ね揃えてる。

 藤本悠仁も6勝と健闘してる選手のひとりだ。飛びぬけたタイムや安定感はないが、節間に見せ場を作れる『何か』を持っており、十分車券の対象にはなり得る。

 小川可蓮、小松俊輔、日名子幹正の3選手は未勝利ながら、近い将来に初勝利を飾れる雰囲気はあり、応援したい。

植村愛悠斗.jpg
藤本悠仁.jpg

《38期・勝利数トップ5》※データは7月16日現在のもの
12勝...上原大輝
10勝...佐々木光輝
6勝...植村愛悠斗、藤本悠仁
5勝...鈴木景斗
4勝...竹尾竜星、宮司佳奈

(文/中村)

 

新品のタイヤがレースで使われるまで

2025年07月11日

 
 
 オートレースのタイヤが、どのような流れで実際にレースで使用されるまでになるかを説明していきたい。
 
 まず選手がタイヤを手に入れるには事前に購入意思を示しておかなければならない。新品のタイヤは部品庫に常時、保管されているわけではなく、これから作られるものを事前に購入予約しておく形式になっているからだ。そして、タイヤ注文表と呼ばれる紙に欲しい本数を記入する。タイヤ注文表はひと月ごとに一枚用意されている。例えば、今が7月だとしたら、9月の分、10月の分、11月の分などこれから来る月の分の購入予定本数を記入する。
 
 タイヤには4桁の製造番号が刻印されている。前半の2桁は、その年の第何週かを表す数字で、後半の2桁は年を表す数字になる。例えば、1125と刻印されているタイヤならば2025年の第11週に製造されたものとなる。オートレースのファンの方ならすでにご存知のことと思われるが、タイヤは『当たり』、『ハズレ』が存在する。基本的にタイヤ工場では同じ材質、同じ工程でタイヤが作られるので同じ性能のものが仕上がるはずなのだが、作られる時期やその時の気象などの影響なのか性能に差が出るケースがほとんど。そして、選手たちはこれまでの経験から『当たり』が出やすい製造週のタイヤを多めに注文する傾向がある。近年では第50週目や51週目に製造されるタイヤが人気がある。タイヤ1本の値段は約1万円。なるべく『ハズレ』を引きたくはないので、タイヤ注文表に書き込まれる注文数は、月によって大きな差が出てくる。
 
 そうして新品のタイヤを手に入れた選手は、レースで使えるようにするまでにいくつかの準備をする。新品のタイヤには、通称『いぼいぼ』と呼ばれる小さくて柔らかな突起物が付いている。これを『サンダー』と呼ばれる工具を使ってきれいに取り除いていく。その『サンダー』は個人の持ち物ではなく、タイヤを調整する部屋に置かれているので、選手たちはその部屋にタイヤを運んで作業に取りかかる。
 タイヤ調整場.JPG
 ↑タイヤ作業所
 
 『いぼいぼ』が取れてきれいになったタイヤはすぐにレースで使えるわけではない。新品タイヤは溝(通称ヤマ)が深いため、良走路で使うには適していない。ある程度、ヤマを低くするために練習走行に出て、適度にすり減らす。こうして、ようやくレースで使える状態になる。ただし、重走路で走る場合はヤマが高い方が適しているため『いぼいぼ』を取り除いた状態のままレースで使用する。俗に言う雨タイヤとは、まだレースで使用されたことのないタイヤのことを言う。一度レースで使用するとヤマが低くなってしまうからだ。ごく稀に同じタイヤで重走路で2走する選手もいるが...。
 
 レースで何度か使われたタイヤは、走路との摩擦のためヤマが低くなる。低くなりすぎると滑りにつながるので、タイヤの溝を作るために工具を使って溝を掘る作業も出てくる。それでも、良い状態で競争するために1本のタイヤでレースできるのは4~5走程度。よほど性能の良いタイヤだともっとレースで使用する場合もある。そうして、レースで使用することができなくなったタイヤは、タイヤ廃棄場に運んでいくことになる。これがオートレースで使われるタイヤの一連の流れである。
 
 文/高橋

 

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