新品のタイヤがレースで使われるまで

2025年07月11日

 
 
 オートレースのタイヤが、どのような流れで実際にレースで使用されるまでになるかを説明していきたい。
 
 まず選手がタイヤを手に入れるには事前に購入意思を示しておかなければならない。新品のタイヤは部品庫に常時、保管されているわけではなく、これから作られるものを事前に購入予約しておく形式になっているからだ。そして、タイヤ注文表と呼ばれる紙に欲しい本数を記入する。タイヤ注文表はひと月ごとに一枚用意されている。例えば、今が7月だとしたら、9月の分、10月の分、11月の分などこれから来る月の分の購入予定本数を記入する。
 
 タイヤには4桁の製造番号が刻印されている。前半の2桁は、その年の第何週かを表す数字で、後半の2桁は年を表す数字になる。例えば、1125と刻印されているタイヤならば2025年の第11週に製造されたものとなる。オートレースのファンの方ならすでにご存知のことと思われるが、タイヤは『当たり』、『ハズレ』が存在する。基本的にタイヤ工場では同じ材質、同じ工程でタイヤが作られるので同じ性能のものが仕上がるはずなのだが、作られる時期やその時の気象などの影響なのか性能に差が出るケースがほとんど。そして、選手たちはこれまでの経験から『当たり』が出やすい製造週のタイヤを多めに注文する傾向がある。近年では第50週目や51週目に製造されるタイヤが人気がある。タイヤ1本の値段は約1万円。なるべく『ハズレ』を引きたくはないので、タイヤ注文表に書き込まれる注文数は、月によって大きな差が出てくる。
 
 そうして新品のタイヤを手に入れた選手は、レースで使えるようにするまでにいくつかの準備をする。新品のタイヤには、通称『いぼいぼ』と呼ばれる小さくて柔らかな突起物が付いている。これを『サンダー』と呼ばれる工具を使ってきれいに取り除いていく。その『サンダー』は個人の持ち物ではなく、タイヤを調整する部屋に置かれているので、選手たちはその部屋にタイヤを運んで作業に取りかかる。
 タイヤ調整場.JPG
 ↑タイヤ作業所
 
 『いぼいぼ』が取れてきれいになったタイヤはすぐにレースで使えるわけではない。新品タイヤは溝(通称ヤマ)が深いため、良走路で使うには適していない。ある程度、ヤマを低くするために練習走行に出て、適度にすり減らす。こうして、ようやくレースで使える状態になる。ただし、重走路で走る場合はヤマが高い方が適しているため『いぼいぼ』を取り除いた状態のままレースで使用する。俗に言う雨タイヤとは、まだレースで使用されたことのないタイヤのことを言う。一度レースで使用するとヤマが低くなってしまうからだ。ごく稀に同じタイヤで重走路で2走する選手もいるが...。
 
 レースで何度か使われたタイヤは、走路との摩擦のためヤマが低くなる。低くなりすぎると滑りにつながるので、タイヤの溝を作るために工具を使って溝を掘る作業も出てくる。それでも、良い状態で競争するために1本のタイヤでレースできるのは4~5走程度。よほど性能の良いタイヤだともっとレースで使用する場合もある。そうして、レースで使用することができなくなったタイヤは、タイヤ廃棄場に運んでいくことになる。これがオートレースで使われるタイヤの一連の流れである。
 
 文/高橋

 

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