歴代チャンピオンの仲間入り果たした 黒川京介
2024年12月27日
黒川京介選手は、川口所属の33期生で現在26才。2017年にデビューして今年7年目の川口期待のホープです。すでにGIを2回、GIIを4回獲得しており、自身最高ランクはS3。次世代のスター候補としてすでに、名をあげていました。
川口オート生え抜きの選手がSGを獲ったのは2020年SG日本選手権の森且行選手以来。長らく続いているオート界2強時代(青山周平、鈴木圭一郎)に、ついに割って入るニュースターが誕生した瞬間でした。
今回はその黒川選手にSG初制覇などについてインタビューしました。
--優勝戦の試走から質問します。試走タイムは3秒30だったのですが、のちのインタビューでは、もっと出ていたと思ったとの事でしたが。
黒川 そうですね。準決で試走が3秒28出ていて、優勝戦の試走は感触的に3秒27くらい出たかな?と思う感じがあったので。30秒って発表されて不安はあったけど、ピットの中のVTRで確認したら直線で伸びているのが確認できたので(感覚は)間違いじゃないと思いました。
--1回目のスタートはフライング。準決後のインタビューで「スタートのタイミングも掴めている」との事でしたが...
黒川 プレッシャーに負けました(苦笑)
--フライング後に動揺はなかったのですか?その時、どんな事を考えましたか?
黒川 動揺は...意外となかったですね。考えていたことは、来年の選手権に出られないなぁと思いましたが、それと同時に、こんなにエンジンの状態が良くて、1枠で優勝戦に乗れる事はめったにない。自分の中で一番のビッグチャンスなんだから、と気持ちを切り替えていました。
--SG優出9回目にして、SG初制覇となりました。その前の9月のプレミアムカップでも、トップスタートを決めるも青山選手やられて2着でしたが、今回何か作戦はあったのですか?
黒川 今までの優勝戦では、何回か序盤で大きく走ってペースを上げようと思って走っていたんですが、(青山選手に)やられてしまう事が多かったんです。そこでプレミアムカップ直後から小さいコースを走る事を、一般開催の夕練で重点的に練習しました。
--日本選手権の優勝戦では練習通りの走りができたのですか?
黒川 自信はなかったですけど。実際まだ下手で、序盤で膨らんでしまったりして...でも、それっぽくは走れたかな?と思います。まず、序盤の5周を(青山選手に抜かれずに)クリアできたのが大きかったです。あとは徐々にペースを上げていって勝てました!
--優勝したゴールの後、青山選手に祝福されていましたよね。どう思いました?
黒川 嬉しかったですね。
--優勝した直後にどんな事が思い浮かびましたか?
黒川 優勝して嬉しいのは半分、やはり、最初にフライングを切ってしまって、他の選手の方に迷惑をかけてしまった事の反省が浮かびました。
それと今まで色々な人の応援や支えが一杯あったので「ありがとう」という気持ちがあり、本当に感謝したいと思いました。
--SGを獲る前と獲った後の心境の変化はありますか?
黒川 早めにまず1つはSGを獲らないと、という変なプレッシャーがなくなりましたね。チャンスを逃しちゃうと獲れなくなっちゃう、という思いがありました。
最近は速い後輩が増えてきていて、佐藤励君なんか、どんどん自分に近づいてきてる感覚があったので。
--速い後輩が入ってくるという話で、以前ポケバイつながりで鈴木圭一郎選手が言っていた「今度、ポケバイ出身で黒川君が入ってくる。彼が入ってきたら僕もヤバイかも」という話があり、まさに現実になったんですね。鈴木圭一郎選手についてはどう思いますか?
黒川 まず、圭一郎さんは整備力が凄いですね。整備をしてエンジンを合わせるのと、レースでも思い切りの良さが凄い。ほぼほぼ弱点はないです。
決定力とか、展開を問わず常に1着の勝負圏に入ってくるのが凄い。
--SGを初制覇して今後の目標を教えてください。
黒川 今、自分がSGを勝てるパターンはトップスタートが絶対条件だと思います。でも、今後は捌いても勝てるようになるのが目標です。
それと今までのランクはS級3位が最高なので、まずは1回2位になって、2人(青山周、鈴木圭選手)に割って入りたい。S2を経験したいですね。
--いよいよ27日からスーパースタートライアルが始まります。豊富を聞かせてください。
黒川 スーパースターは選手になってから1度は優勝したいと思っている大会なので、まずはそこに向かってやっていきたい。
そして、その後も努力を怠らず、いい選手になれるように頑張っていきたいですね。
黒川選手はデビュー7年目と、比較的早くSGを初制覇したイメージですが、あのダブルグランドスラマーの永井大介選手でさえも、かつてはSG初制覇までにはかなり苦労しました。
反則や落車など肝心な所でのミスが続きましたが、デビューから11年目の2008年8月のSGオートレースグランプリで、SG初制覇を遂げるとそこから一気にSGを獲りまくり、2010年にスーパースター王座決定戦を制して、見事にSGグランドスラムを達成。2014年にはダブルグランドスラムを達成するなど、業界のトップに君臨しました。
黒川選手もSGを1つ獲ったことにより、次々とタイトルを獲得していくことになるのでしょうか。これから大いに期待したいですね。
文/金子
11月を振り返って
2024年12月20日
10月2日に伊勢崎で優勝した白次義孝は、11月24日の伊勢崎でも優勝した。10月の時は最重ハンの30メートル前からの競争だったが、11月の開催ではハンデが重くなり20メートル前からだった。しかし、白次の場合は独走力があるので、一人で走れる展開になればどのハンデからの競争でも問題ない。事実、24日に優勝した時も0ハン単騎からの競争で、序盤からスピードに乗ることができていた。タイムが出やすい冬場で、自分の展開になれば強い。
11月の最初の優勝戦は2日の山陽ミッドナイト。ここでは地元の永島潤太郎が優勝した。0ハンに5車並んだ大外からスタート一気。いきなり逃げに入ると、そのまま先頭を譲ることなくゴールしてみせた。今年の7月以来の優勝を決めると、その次の地元昼間5日間開催でも優勝を決め連続Vを達成した。2日のレースは夜の良走路、10日のレースは昼の重走路。レースの時間帯や走路状況にも左右されず対応力の高さを見せつけた。同期の35期の中では佐藤励の快進撃が続いているが、永島も佐藤励に追いつけ追い越せの活躍を見せている。
その佐藤励は11月13日の飯塚ミッドナイトで優勝。それも初日からオール1着の完全Vだった。優勝戦では試走25、上がり357の好タイムをマーク。そのポテンシャルの高さを証明したが、続く23日からの飯塚ミッドナイトでも完全優勝だった。この優勝戦では前回の試走タイムを上回る24を計時。通算優勝回数は16となり、同期をけん引。このままどこまで強くなっていくのかは今のオートレース界の楽しみの一つとなっている。
佐藤励がいずれは乗り越えなければならない大きな壁となる存在は青山周平。その青山周は11月も絶好調。2節走っていたが、最初の山陽G2オートレースメモリアルで優勝した。更に、その次の浜松G1スピード王決定戦では、初日からオール1着の完全優勝で、同大会2013年以来のタイトルとなった。このまま突っ走り続けて、年末のSGスーパースター王座決定戦の連覇を目指す。
青山周と同期の大月渉は、27日の伊勢崎アフター5ナイターで優勝。今年5月以来、通算4度目の優勝となった。成績に安定感がある方ではないが、ここ一番で勝負強い走りを見せるケースが多くある。そういった時は、相手がどんなに強豪でもパワフルな走りを展開する。同じ伊勢崎勢では若手も着実に成長を見せている。17日の伊勢崎アフター5ナイターでは35期の菅野仁翔が優勝。エンジンの仕上げに手こずる期間もあるが、良くなればしっかりと試走タイムに表れるタイプ。同じレースで走るメンバーの中で、一番時計に近い試走タイムが出れば積極的に車券で狙える。
以前は重走路を得意としていた緒方浩一は、今年に入ってから重走路でスランプに入っていた。高い連対率を誇っていたが、思うような走りができないレースが続いていた。しかし、11月に入ってから最初の重走路で勝利を挙げると、26日の地元優勝戦の重走路でも勝ち切り優勝をゲット。昨年までの感覚を完全に取り戻した様子。今は良走路でも走りが良くなっている。
今年7月15日以来となる浜松オートの11月18日からの開催では地元の岩科鮮太が優勝した。同ハンに3車並んだ中枠からスタートこそ行けなかったが、素早い巻き返しから速攻を決め、同期の金子大輔を封じ切った。インコースをしっかり回れるタイプで、エンジン状態が良いと簡単には抜かれない技量がある。元々、センスは高い選手なので再成長に期待したい。
文/高橋
1級車での練習は
2024年12月13日
排気量が500ccの2級車でデビューするオートレーサーは、一定期間が過ぎると600ccの1級車に乗り換わってレースをすることになるが、その1級車に乗り換わる数ヶ月前から1級車で練習できるようになる。それまで乗っていた2級車との違いについて、2025年1月から1級車に乗り換わる36期の選手からコメントをいただいた。
祐定響...「いやぁ難しいですね。跳ねて全然乗れてない感じなので。フレームを点検したり、交換とかもいろいろしてはいるんですけど、跳ねてあまり乗れてないですね。2級車の時はあまり跳ねなかったし、跳ね持ちとかではないんですけどね。エンジンなのか他のところなのかまだ分からないですね。たぶんエンジンだと思うので、そこをやっていこうかなって感じです。練習できる期間も少ないので、どこやればいいか探し中です。まずはちゃんと乗りたいので。(エンジン的には)2級車よりはるかに進むので、車の行き方が全然違いますね。なんでこんな2級車に乗ってるんだろうっていうぐらい。びっくりしました。こんなに違うなら、そりゃあ抜かれるわって感じです。でも、やっぱりコーナーは2級車の方が乗りやすいんで、そこが有利なのかなとは思います。スタートもいろんな切り方を試してます。結構、(思い切り)クラッチを離そうとしたら(車が)浮いちゃうんで、そこの兼ね合いも2級車と違うなと思います。それで(エンジンの)噴かし方もいろいろ変えてみたりしてます。でも、楽しみですね1級車は」
帆影岬...「最初はこんなの乗っててズルイなぁって思ったんですけど、なかなか乗りこなせないですね。突っ込んでからも曲がれないし。2級車とは全然違います。1級車じゃ乗れないけど、そんなことも言っていられないので、とにかく練習するしかないですね」
浜野翼...「2級車との違いというか、とにかく時間がなさすぎて。復帰節(2024年11月18日)から1級車の練習を始めたんですけど、1級車の練習期間が合計で3節くらいしかなくて...。ちょっとやばいですね。乗り込むしかないなって感じですね。真っ直ぐスタート切ることと、ちゃんと6周回まともに走れるように。それができるようにしか考えてないですね。2級車は正直、整備だったり、タイヤとか意外となあなあでいいと言うか、そこまで白黒はっきりしてないって感じなんですけど、1級車はトルクがあるので、タイヤの良し悪しがほんとに分かれるのと、整備はそこまで分からないですけど、乗る面では力が強いので、ちゃんと抑え切れてないと乗れないので、難しいところばっかりですね。2級車と同じ感じで乗っちゃうと全然ダメだし、そもそもどういうコースを走るかっていうのからイチからまたやらないといけないので難しいですね」
やはり、デビューしてから乗っていた2級車とは勝手が違うようだ。しかし、1級車に乗ってから走力が飛躍的にアップする選手はこれまでに多くいた。選手にとっても大きな節目になることは間違いない。
文/高橋
10連勝記録について
2024年12月06日
12月3日、川口オートの第8レースで佐藤励が1着でゴールし、自身初となる10連勝を達成。オートレースは走路状態の変化に対応しなければならなかったり、優勝戦ともなるとメンバーが濃くなったりするので勝ち星を挙げ続けるのは至難の業。それを24歳の若者が達成したのだから見事としか言いようがない。
ちなみに、これまでに10連勝を達成したことがある選手は14人。複数回達成した選手もいるので、回数で表すと計26回となる。
一番最初は元オートレーサーの飯塚将光が1977年3月19日に達成している。この時は12連勝まで記録を伸ばしている。飯塚将光は1982年2月11日にも11連勝を決め通算で2度、10連勝の大記録を持っている。飯塚将光は言わずと知れたオートレース界のスーパースターだった。『ミスターオート』の異名を持ち、一時代を築いた名選手だ。最高峰のレースであるSG日本選手権オートレースで6度の優勝を誇っている。
↓2013年7月、元オートレーサー・飯塚将光の引退セレモニーにて
その飯塚将光と同期の篠崎実も10連勝を達成している。1978年3月13日に地元川口で決めた。その時から46年経過した現在でも現役バリバリでレースをしているのだから恐れ入る。2023年には、73歳10ヶ月29日で優勝し、公営競技最年長優勝記録も保持している。もちろん今でも血気盛んな走りは健在。最重ハンの10メートル前から競争している。
同じ15期でライバル関係にもあった岩田行雄と元オートレーサーの田代祐一も1回ずつ、10連勝の記録を持っている。岩田行雄は1992年12月14日に11連勝を決め、田代祐一は1988年12月13日に12連勝を決めている。両選手は前を走る選手を交わせる距離に入ったら、必ずインに突っ込んでいくのでファンから熱い声援を受けていた。岩田行雄は67歳になった今でも最重ハンから競争をしており、常に全力投球の走りを披露している。
『絶対王者』・高橋貢はこれまでに10連勝以上を4回達成している。最初に決めたのは2001年1月14日で、この時は14連勝まで数字を伸ばしていた。この14連勝は最多連勝記録としてしばらく破られることはなかった。その記録を上回ったのが中村雅人。2015年8月1日に15連勝の新記録を作った。これまでは重いハンデから追い込む側に有利な冬場に連勝記録が作られることが多かったが、夏場に達成したこの記録は14連勝を越えた以上の衝撃が走った。この15連勝の記録もまた、長い間破られなかったが、2024年4月26日に鈴木圭一郎が16連勝を決め、記録を塗り替えた。鈴木圭一郎はその後、2つ数字を伸ばし、結果的に現在でもトップとなる18連勝の新記録を作った。鈴木圭一郎はその後も13連勝を決めるなどし、10連勝以上を4度経験している。
10連勝記録を最も多くマークしているのは青山周平で6回。最初の記録はデビューからの12連勝。13走目も1着を取り、無敗で初優勝を決めたが、その優勝戦ではフライングを切り、記録は12連勝までとなっている。そのため、デビューからの連勝記録で言えば浅倉樹良の13連勝が最多。これは当分、塗り替えられることはないだろう。他にも10連勝を決めているのは和久田正勝(引退)、木村武之、上和田拓海、丹村飛竜などがいる。