落車後の作業について
2025年06月06日
オートレースに落車はつきもの。そこで今回は落車した後の競走車の修理作業やその様子についてお伝えしたいと思います。
落車が起こったあと、負傷した選手はそのまま医務室にて診断、治療が施されます。軽傷や無傷の場合はそのまま自分のロッカーに戻りますが、重症の場合は救急車で病院に搬送されます。
競走車は検査場という所に運ばれてきます。
検査場に運ばれてきた競走車。時にはハンドルが曲がり、時にはフェンダーが飴のようにひしゃげ、時にはタイヤのスポークまで折れて飛び出している事もあり、落車時の衝撃の強さに驚かされます。(もし、こんな衝撃が人体に直接加わったら...)と身震いする思いです。改めて、選手は命がけで走っているのだと気づかされます。
競走車は、各レース場の競走会の検査課の方が破損している場所をチェックします。この時、被害落車した選手の競走車の、破損場所の部品は全額修理代が保証されます。ただし上限金額はあるとの事。また、落車妨害した選手の競走車も一部は保証されるようです。
ギリギリの所を攻めて競走をしている以上、事故はつきもので仕方ないのですが、部品の保証はあったとしても、ケガ以外に、エンジンのバランスが崩れてしまい不調になったり、ヒザ当てと言われるバイクを膝で抑えるバーが破損して、乗り心地が悪くなるなど、選手は「落ちなくて(落車しなくて)良かったー」という声が良く聞かれます。落車した後の後遺症がけっこう大きいからですね。
さて、検査課の検査の後、5~10名の選手が一斉に落車した選手のロッカーでの修理に集結します。その姿はまるで、人間がケガをして出血した時に、傷口をふさごうと一斉に集まってくる白血球のようです。(わたくし、某映画に影響されすぎですね...汗)
主に落車妨害をしてしまった選手が、被害を受けた選手の競走車を直すシーンが多く見受けられます。ただ、落車妨害をした本人が負傷してしまった場合は、同じ整備グループの選手が、代わりに競走車を直す姿が通常のシーンとなります。
また、遠征車の場合は多少ルールが違うようで、たとえば川口に遠征に来ている山陽の選手が落車した場合、同じく遠征で川口に来ている山陽の選手が派閥、年齢関係なく修理を手伝うといった流れのようです。
それゆえに、落車した選手が翌日勝利した時の勝利者インタビューで「周りの人に競走車を直してもらって(出走できた事を)感謝しています」というコメントが聞かれたりするのです。
山陽のベテラン選手は「自分らの若い頃は、今みたいに派閥を超えて修理しに行くことはなかったんだよね」と語ります。以前は「派閥内で修理する、派閥以外の手は借りない」という、矜持というか結束も強かったのでしょう。
落車は「百害あって一利なし」に近いのですが、まれに「落車してフレームを換えたら、落車する前より乗りやすくなった」という事が聞かれます。
これは、フレームの悪さ(経年劣化や輸送によるゆがみやひびなど)が乗りにくさの原因であったが、なかなか気づく事が難しく、落車によってフレームを換えざるを得なくなったことにより、乗りにくさが解消したというケースです。
(文/金子)