ミッドナイトに眠る富

2025年02月14日


 2月11日に青山周平のダブルグランドスラムという偉業で幕を閉じたSG第38回全日本選抜。その夜に山陽ミッドナイトでは早津圭介が自身初の優勝を成し遂げた。

 
 2015年11月に飯塚で試行されたミッドナイトレースは8車立ての6R制で開始。11/18に湿走路での優勝戦は優勝・滝下隼平、2着・荒尾聡、3着・岩崎亮一で3連単は4-8-7 3290円、2連単は4-8 830円。その後、2016年6月から本格導入され、6/16と6/28は7車立て7R。開始から3節連続で湿走路での優勝戦だった。28日にいたっては3連単(優勝・岩科鮮太)6-5-1 12万8900円 2連単も6-5で15890円と深夜に目玉が飛び出る配当に。この頃からすでに『荒れる飯塚ミッド』は始まってたのかもしれない。

 山陽ミッドナイトは2019年2月から。まだ、7車立ての7R制で2/19の最終日1Rは3連単13万2760円。これまた湿走路で人気集中した福永貴史が飛んでのもの。山陽ミッドナイト9節目に6車立て9R制となり売上も開始早々は6~8千万円で推移していたのが、コンスタンスに1億円を突破し始めた。ところが、他場のナイター開催中にミッドナイト6R制を行ったり、4日間を2日ずつに分け(初日から準決)優勝戦2つにするなど(ちなみに吉松憲治が2022年8月3日と5日に連続V達成)、とにかくいろんなアイデアを出し、試行錯誤を繰り返して現在に至る。

 6車立て9R制が山陽ミッドナイトのスタイルに定着してから、なんと先日2025年2/4にはミッド史上過去最高の総売上4億2千万を超えた(その翌日5日は降雪・積雪で中止)。対して飯塚ミッドは7車立ての8R制となっている。


 どちらのレース場も走路改修を経て高速走路に変身したが、試走タイム通りに決まりにくいのが7車立ての飯塚場。6車立ての山陽は堅い決着となる傾向が多い反面、人気車が飛ぶと高額配当となるのは当然の結果。たった1車、されど1車で展開は変わるが車立てが少なければ展開も読みやすくなる。

  『オーバーミッド』と銘打ち、深夜0時を過ぎるレースもできるようになったが、いかんせん時間が深すぎる印象は否めない。反対に浜松の『アーリーレース』は朝9時から始まる。近い将来、一日中オートが楽しめるように...これは飛躍しすぎか。


 かねてからデイレースやナイターで行われてきたオートレースは深夜の時間帯にシフトした『ミッドナイト』が加わったことでファン層も拡がり、全体の売上にも貢献できるまでに成長してる。川口では『ナイトレース』、伊勢崎は『アフター5ナイター』、そしてミッドナイトは運営側からすれば、いずれも『無観客』レースで経費が大幅に削減されるメリットがある。競輪、ボートレースに比べると、キャパ不足は否めないが『ミッドナイト』はオートレース業界にとっても、ファンにとってもWINWINになりえたと言えよう。

(文/中村)

 

デビュー節をオール連対でまとめた注目の38期新人

2025年02月07日

植村選手
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 デビュー節を2着、2着、1着で終えた植村愛悠斗選手に感想を聞いてみました。
 『どうですか?実際にデビューしてみて』「まだあまり実感が湧いてないです。まだレースっていうレースを自分の中でしてるって感覚がないので」
 
 『デビュー戦で緊張はありましたか?』「なかったです。逆に、やってやろうって気持ちが高ぶりすぎて、力が入ってしまってって感じでした。すみませんでした。自信あったんですけど...。次の伊勢崎でもしっかり勝って、レースらしいレースをしたいなって思います。今のところタイヤも大丈夫ですし、エンジンもやっていただいているので大丈夫だと思います。いい状態でレースに行けると思います」と、やる気が溢れんばかりの眼力で力強くコメント。
 『次の伊勢崎、頑張ってください』「ありがとうございましたぁ!」元気一杯の声で応えていただきました。養成所では最優秀賞を取れなかったことを本気で悔やんでいた植村選手。上を目指す気持ちは誰にも負けない様子。今後もその1走1走に注目していきたいです。
 

上原選手
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 デビューして2節目の初日は8着に沈んだ上原大輝選手。
 『感じが悪かったんですか?』「ダメでした。全然良くなくて、すみません」「試走から全然良くなくて、ずっと滑っちゃって、タイヤの選択ミスで...。アドバイスをいただいたので改善していきたいです」と。
 
 『デビュー戦は緊張しましたか』「しました。緊張しましたね。ホントに緊張して、師匠だったり、兄貴分だったり、牛沢さんだったりに背中を押してもらって、そんなに堅くなるなって。普通に走れれば取れるから、とにかく落ち着いて自分の走りだけすれば大丈夫だよって。そんなに堅くなることなく気持ち良く乗ってきなって言われたんですけど、デビュー1戦目は堅くなっちゃいましたね」
 『実際デビューしてみてどうですか?』「そうですね、前節はホントにレースもそうなんですけど、準備だったりだとかタイヤの当たりつけだったりだとか、全てのことにおいて自分の中では、なんていうんですかね、落ち着いてしっかり選択できる時間や余裕がなかったので、そこも経験を積んで、もうちょっと落ち着いて余裕を作ったうえで、腰回りだったりだとか方向性を間違えないように判断基準をしっかり見極めていかないと、この世界では勝てなくなってしまうので...。前節はホントに師匠とか派閥の方に助けていただきながら、その中でやっぱり自分にあまり余裕がなかった」
 『デビュー節の結果はまあまあ良かったかなと思いますが』「う~ん(微妙そうな表情で)、1、2、1、1...」「そうですね、ただ今回もちょっとミスしたし、いい流れにはなっていないですね。3節目から勝ち上がり権利があるので、そこでしっかり勝ち上がって行けるように、準備をしっかりして、しっかり勝負できるようにしていかなければいけないかなと」
 『最近は勝ち上がり権利発生の節でいきなり優勝ってのもありますからね』「そうですね、そこをまずは目指して、自分も頑張りたいなと思っています。しっかり準備して、練習して、良い悪いの判断基準をしっかりして、レースに向かいたい」
 『勝ち上がり権利発生節で優勝は狙いたいですか?』「狙いたいですね」
 気持ちが前面に表れるタイプではないが、自分の現況をしっかりと分析し、慎重に言葉を選んでコメントしていただきました。ロードレースでの経験の裏づけがあるからなのか、若手ながらクレバーさを感じさせる雰囲気を持っています。
 
 1ヶ月前はまだオートレーサー候補生だった2人ですが、将来のスター選手候補に挙げたくなる逸材です。

文/高橋


 

得点制における勝負駆け

2025年01月31日

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 グレードレースの3、4日目の準々決勝戦で良く聞かれる「勝負駆け」を狙って好配当をゲットしよう!

 今回は得点制における勝負駆けについて考察してみます


■「勝負駆け」が発生しやすいレースとは


 現在、グレードレースにおける準決勝戦への勝ち上がり方式は、主に3パターンあります。

(1)準決勝戦の前日の各予選レース(準々決勝戦など)の1着と1着を除く上位数名が、準決へ勝ち上がり

(2)準決勝戦の前日までの予選の平均競走得点上位32名が、準決へ勝ち上がり

(3)準決勝戦の前日の予選(準々決勝戦など)の1着と1着を除く、3日間の平均得点上位者が準決へ勝ち上がり

 「勝負駆け」が顕著に見られるのは(2)と(3)のパターン。5日間開催の3日目、6日間開催の4日目が準々決勝戦となり、ここが「勝負駆け」の日になります。


■「勝負駆け」の選手を知るには


 「勝負駆け」の選手を知るには、まず選手の得点状況を見なければなりません。
 オートレース公式のHPに「得点表をアップしました」と表示されているのを見る方法や、専門紙に掲載されている点数で知る方法があります。

 着順点とタイム点を足したものが1日分の得点で、予選が3日間なら(準々決勝戦を含む)、3日分の合計点を3で割った平均点が、採点用の点数となります。


■選手の心理面から「勝負駆け」を察知する


 選手の心理面から、得点制における「勝負駆け」を考察します。

 まず、準決への進出条件に「1着は準決進出」が含まれているかどうか、が大事です。

 準決は32名が進出なので、「1着は準決進出」の条件がある場合は、準々決勝戦5R~12Rの1着8名と、1着を除く平均得点上位24名が準決進出となります。

 「1着は準決進出」の条件があれば、予選の得点に関係なく、準々決勝戦に出場する選手全員に準決への「勝負駆け」をチャレンジする権利があります。

 「1着は準決進出」の項目がなく「予選中の平均得点上位32名が準決進出」だと、準々決勝戦で1着を取ってもボーダーラインに点数が足りない、という状況がありえるため、下位の得点選手の「勝負駆けを狙ってやろう」という心理は少なくなるでしょう。

■いつも以上に気合が入るシチュエーション

 また、「最重ハンの選手」と「軽ハンの選手」(最重ハンの10~20m前)でも、考え方が違います。

 例えば、最重ハンの20m前の選手の心理を考えると、
「グレードレースの準決に乗る事が第一の目標で、優出、優勝などは正直厳しい。それならば「勝負駆けとなる準々決勝戦」に一番いいタイヤを使えるようにマネージメントする。そして、レースはスタートから勝負を懸けて1着を狙いに行く」という作戦を立てる事は十分考えられます。

 それに対して連勝などで得点的に準決進出が当確している最重ハンの選手は、
「優出、優勝を狙うために準々決勝戦は、より良いセットを試したい。タイヤももっといい物がないか試したい」「ただ、Fや反則で勝ち上がりの権利を失っても元も子もない」という心理は少なからず働くと思います。

 得点不足の軽ハン選手が目イチの仕上げととっておきタイヤで挑むのに対し、得点に余裕があり、目標は優出、優勝の最重ハン選手との、思惑やモチベーションの差が「勝負駆け」が決まりやすい下地を生みます。


■「勝負駆け」は決まったり、決まらなかったり


 実際の準々決勝戦では、得点的に「勝負駆け」となる選手が、たとえ万全の準備をしても、銘柄級の実力車に力負けてしまう事は多々あり、必ずしも「勝負駆け」が決まるとは限りません。

 ただ、鮮やかに「勝負駆け」が決まって好配当を的中させた時の快感は、予想の醍醐味と言っても過言ではないでしょう。

 「1着勝負駆け」の選手をアタマから狙って、2、3着を手広く流す、というのも、好配当をゲットする作戦の一つかもしれません。


文/金子


 
 
 

 

2024年のオートレース その1

2025年01月24日

青山周平 10.JPG

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 今回から数度に分けて2024年のオートレースを振り返ってみたい。


 まずは1月。前年2023年をSS王座決定戦5度目のVで締めくくり、年明け9日には通算5度目となる2023年の賞金王に輝いたことの発表された青山周平が、翌1月10日に伊勢崎G1シルクカップ優勝戦に勝利。そして1月24日には鈴木圭一郎が浜松G1スピード王決定戦を優勝。両者とも、その年の最初に地元で開催されるグレードレースを制したことになり、地元エースの面目躍如。2024年もこの両雄を中心にオートレースが回っていく予感を抱かせた。


 一歩あと戻りして1月9日。前年4月から訓練を積んできた第37期選手候補生12名がこの日に養成所を卒業。その中で養成訓練の最優秀賞を受賞した浅倉樹良(伊勢崎)、優秀賞を受賞した森下輝(浜松)と福岡鷹(飯塚)の3名が、それぞれ直後に迎えたデビュー戦以降、怪物ぶりを発揮することになった。
 浅倉樹良は2月15日、青山周平が持っていたデビュー最速優勝記録(デビュー35日)を塗り替える、デビュー22日目での初優勝。同時にデビューから無敗の10連勝も達成。2月28日にはこの記録を13連勝まで延ばして、デビュー無敗のまま2節連続優勝の快挙を成し遂げた。ちなみに勝ち上がり権利を得た最初の節に優勝したケースは、24期以降では史上5人目となる。
 森下輝は、勝ち上がり権利を得たデビュー3節目の初日を2着に敗れて、デビューからの連勝が6で止まるとともにその節の準決勝戦進出を逸したが、3月上旬のデビュー4節目は3日間を全勝して初優勝した。福岡鷹も勝ち上がり権利を得たデビュー3節目の準決勝戦が雨に苦しみ大敗したが、翌日の最終日から次節の3日間まで4連勝して初優勝。
 前年2023年にデビューした36期生からも栗原佳祐をはじめとする逸材が出現しており、オートレースの明るい未来を期待、確信させてくれた。


 2月のはじめに、高橋貢がまた記録を樹立した。小林啓二(引退)が持っていた従来の通算最多勝利数を超える1637勝を決めたのだ。通算V回数218とともに前人未到の領域を独走し続ける現役レジェンド、それが高橋貢という不滅の大スターである。


 中旬には山陽でG2若獅子杯争奪戦の決勝戦がおこなわれて、黒川京介が鈴木圭一郎と青山周平に完勝。下旬には川口SG全日本選抜にも優出し、一層の地力アップを印象づけた。その全日本選抜を制したのは金子大輔。自身9年ぶりとなる、3度目のSG制覇を果たした。この開催では35期の新鋭である佐藤励が1級車では2度目となるSG挑戦で6戦2勝を挙げており、のちに振り返ると、青山周と鈴木圭の2強で推移していた近年の状況に変化をもたらすターニングポイントがこの2月に潜んでいた。


 だがしかし、3月の川口G1開設記念グランプリレースは青山周、特別G1プレミアムカップは鈴木圭が優勝。そして4月には青山周がデビュー最速100Vを達成すると、鈴木圭はG1令和グランドチャンピオンカップも制して、プレミアムカップからの山陽G1連続Vを決めると、続くSGオールスター3日目の勝利で通算16連勝。オートレース新記録を打ち立てた。オールスター決勝戦は4着に敗れて連勝は18でストップしたが、この年の鈴木圭はその後も勝って勝って勝ちまくることになる。
 勝てば史上最多となった、鈴木圭のオールスター4連覇を阻止したのは、青山周。2016年以来2度目の大会制覇で、今後2度目のSG全日本選抜Vが成れば、ダブル・SGグランドスラムも達成することになる。


~中編に続く~

 

第38期生卒業式

2025年01月17日

 
 
 2025年1月10日、茨城県にあるオートレース選手養成所で第38期生の卒業式が行われました。式では公益財団法人JKA会長の挨拶や、オートレース選手養成所第38期生代表の答辞などが実施されました。そして、昨年の4月から約9ヶ月にわたる養成訓練を終え、各レース場の所属地へと羽ばたきます。
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 最優秀賞受賞選手は川口所属となる上原大輝選手で「最優秀賞に選んでいただき大変光栄に思います。養成所での走行訓練の日々は自分にとって忘れることのできない充実した時間でした。養成所での経験を生かして、一走一走全身全霊をかけて頑張ります」と高らかに宣誓。
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 式が終わると、中庭で恒例の集合写真の撮影。
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 最優秀賞の上原選手にデビュー戦に向けての意気込みをうかがいました。「まだ実感が湧かないけど、ここで経験したことを生かし、デビュー戦で1着を取れるように頑張りたいです」。オートレーサーを目指したきっかけは「ロードレースをやっていたのですが、その監督だったり先輩選手がいたのでオートレースを知っていて、2輪で生計を立てていきたいと思っていました。上和田さん(川口34期・上和田拓海選手)や小椋華恋さん(川口35期・小椋華恋選手)とは小さい時から一緒に走っていました。養成所では苦しい時も楽しい時もあったけど、苦しい時は同期と一緒に乗り越えたりしました。いずれは感動や勇気を与えられるような、オートレースは素晴らしいと思ってもらえるような選手になりたいです」。待望のデビュー戦は1月18日の予定。走行検定タイムは3・42秒。落ち着いて走ることができれば、ハンデ差を生かしてデビュー戦で白星を挙げられそう。そこでどんな走りを見せてくれるのか楽しみでならない。
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 左・佐々木選手、真ん中・上原選手、右・植村選手
 
 優秀賞を受賞したのは2人。伊勢崎所属の佐々木光輝選手と山陽所属の植村愛悠斗選手。佐々木選手はデビュー戦に向け「少し緊張してるけど、とにかくミスしないように無事に完走したい。ゆくゆくはファンの方々に刺激を与えられるような選手になりたいです」。言葉自体は強気ではないが、内に秘めた静かな闘志は感じられた。走行検定タイムは3・43秒で、最優秀賞の上原選手ともそん色ない数字。鮮烈なデビュー戦が待っているかもしれない。
 
 植村選手は「自信は満々だけどコース取りが小さいので...。でもデビュー戦はイケると思います。勝っていくとハンデがどんどん重くなってくると思うけど、2級車でも前を抜けるようになりたいです。最優秀賞を逃したのは悔しいです。選手になろうと思ったのは、地元の山陽オートからエンジン音が聞こえてくる環境で、親に連れていってもらってオートレースを見ているうちに好きになりました。見ている時は早川さん(伊勢崎29期・早川清太郎選手)が好きでしたね。乗っている姿が格好いいので」。気持ちを前面に押し出すタイプのようで、オートレース界のような厳しい環境でも力強く成長していく予感をひしひしと感じさせた。
 
 文/高橋

 

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