師匠になると強くなる?

2025年05月09日

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 今年1月にデビューした38期生新人選手。新人選手それぞれに指導員(オート業界では師匠と呼ぶことが多い)がついて、乗り方や整備など指導し、1人前の選手になるように育てています。

 そんな指導員をしている選手(師匠)について、ふと思ったことがあります。

「師匠になったら、弟子に下手な所は見せられない、と奮起するのではないか?」
「師匠になった選手は成績がアップするのではないか?」

と、いうことで検証してみました。

 師匠として弟子を取る前の2024年1~3月の成績と、弟子を取る事になってからの2025年1~3月の成績を比べてみました。4名検証してみました。


◆A師匠のデータ

2024年1~3月
[1着]7回 [2着]7回 [3着]5回 [着外]20回 [優出]1回 [優勝]0回 3連対率 48.7%

2025年1~3月
[1着]7回 [2着]9回 [3着]7回 [着外]18回 [優出]3回 [優勝]0回 3連対率 56.0%

※出走回数の違いはありますが、A師匠の3連対率は48.7%から56.0%に上昇。優出も1回が3回と増え、成績が良くなっています。

◆B師匠のデータ

2024年1~3月
[1着]1回 [2着]1回 [3着]7回 [着外]23回 [優出]0回 [優勝]0回 3連対率 28.1%

2025年1~3月
[1着]5回 [2着]7回 [3着]9回 [着外]24回 [優出]1回 [優勝]0回 3連対率 46.6%

※B師匠の成績上昇が顕著で、2024年の3連対率28.1%に対して、2025年が46.6%と大幅に成績がアップしています。弟子を取った効果でしょうか。

◆C師匠のデータ

2024年1~3月
[1着]5回 [2着]6回 [3着]2回 [着外]16回 [優出]2回 [優勝]0回 3連対率 44.8%

2025年1~3月
[1着]8回 [2着]5回 [3着]2回 [着外]28回 [優出]2回 [優勝]0回 3連対率 34.8%

※C師匠は、データ上は弟子を取った後の方が3連対率は10%落ちていますが、1着回数が5本から8本に増えています。


◆D師匠のデータ

2024年1~3月
[1着]4回 [2着]6回 [3着]8回 [着外]20回 [優出]1回 [優勝]0回 3連対率 47.3%

2025年1~3月
[1着]7回 [2着]4回 [3着]10回 [着外]20回 [優出]1回 [優勝]0回 3連対率 56.0%

※D師匠は、3連対率が8.7%上昇。1着回数も4回から7回とやはり成績アップしています。


◎データ上は4名の師匠のうち、3名が弟子を取った後の方が成績がアップした。という事で、モチベーションアップしているのは間違いなさそうです。

 他の師匠にも、インタビューしてみました。

E師匠「自分は弟子を取った後でも、レースに対する姿勢は変わらないですよ。整備に関しても、基本的に何も言わないようにしている。自分で解決しないと成長しないからね。ただ、弟子が今、スタートの改善に苦しんでるけど、それを見て自分もスタートの改良に取り組んでいる。まず、自分が良くないとアドバイスできないからね」

F師匠「自分の場合はレースに対するスタンスは、弟子を取る前と全く変わらないです。整備なども本当に迷ったときにアドバイスをする程度ですね」

と、師匠によって考え方に多少違いはあっても、弟子の存在が刺激になっているようです。

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 師匠になるという話は、基本的に各場の期別順で順番に話を打診されるようですが、なかには師匠を辞退する選手もいます。「自分の事だけで全然余裕がなくて、責任をもって弟子を指導する事ができない」などが辞退の理由の一つのようです。

 師匠になるメリットは、レースへのモチベーションアップ、整備仲間が増えるなどがありますが、負担に感じる選手は辞退する気持ちも分かります。

 結論として、師匠になった選手の成績がアップする事が多いことを考えると、車券の検討の一つに入れるのも手かもしれません。38期だけでなく39期以降も師匠になる選手に注目していきたい。

(文/金子)

 

有吉辰也という男

2025年05月02日

 
 
 全オートレーサーの中でも有吉辰也ほど波乱万丈なオートレース人生を歩んできた選手はいないだろう。
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 粒ぞろいと言われている25期の中で、選手養成所最優秀賞を引っさげてオート界にデビュー。『レベル』号を駆った初戦は3着だったが、2戦目で初白星。その後も上位着を多く取り、2級車時代は6回の優出があったが準優勝が最も良い結果だった。そこから1級車『ファンネル』号に乗り換わり、2戦目で1級車初白星を挙げた。そして1999年8月9日、前の節で準優勝だった有吉は、ここで嬉しい自身初優勝を決める。
 
 2000年4月8日からはその後、長らく相棒となる『タツダンス』号に乗り換わった。最初の頃は落車も少なくなかったが、それでも着実にスピードとさばきを身に付け、2001年11月27日には伊勢崎の開設記念シルクカップ争奪戦でG1初優勝を達成。G2は2003年に地元でジュニア選手権とトーマスメモリアルカップを制覇。そこからもG1やG2で何度も優勝し、ついに2008年4月29日、浜松で行われたオールスターでSG初戴冠。そこからは2010年にオートレースグランプリ、2012年に全日本選抜を制しSG3V。また、2007年の全日本選抜から2010年の日本選手権まで、SG競走で19回連続で優出するという抜群の安定感を誇ってもいた。まさに充実一途と思われていたが...。
 
 2013年に悪夢が待っていた。9月8日、飯塚オートで落車し大怪我を負い、長期離脱を余儀なくされてしまう。復帰したのは翌年の4月11日の飯塚オートでだった。心機一転『ピスケス』号に乗り換わって再起を図った。ちなみに、それまでは『エムジェイ』号で競走をしていた。しかし、復帰直後は苦難の連続だった。なかなか思うような走りができず、8着を重ねることも少なくなかった。復帰後に初めて1着を取ったのは実に29走目、8月1日にしてようやくだった。2勝目を挙げるまでにも約2ヶ月半を要し、まさに前途多難。完全復調への道のりは遠く長く、そして険しいものだと誰もが思った。
 
 しかし、有吉は諦めなかった。2015年5月8日に復帰後初優出と果たすと(結果は4着)その後の7月22日に復帰後初優勝を決める。徐々に成績を上向かせ始めた。2017年11月5日にはSG日本選手権で優出。11月23日にはG1で準優勝。そしてついに2018年4月15日にG1で優勝(平成チャンピオンカップ)するまでに復調してきた。2019年からは今も乗っている『キックアス』号に乗り換わり、4月8日にG2で優勝(オーバルチャンピオンカップ)の後、8月26日に浜松でG2ウィナーズカップも制覇。今のところ復帰後はG1を2つ、G2を4つ獲っている。2021年以降は優出回数も大幅に増え、2025年3月12日には史上32人目となる通算1000勝も達成。いよいよ本格復調、いや、新たにパワーアップした有吉辰也として以前よりも存在感を増している。あとは大怪我からの復帰後初となるSG優勝を待つばかりだ。

 文/高橋

 

「オートレース スマートリレー」って何?

2025年04月25日

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 4月24日~29日、新年度一発目のSG開催「第44回オールスター・オートレース」が絶賛開催中だが、先日JKAから「オートレース スマートリレー」なるものが発表された。

 6月11日~7月13日の期間、デイ、ナイター、ミッドナイト開催において、発走時間帯が重ならない、「オートレース スマートリレー」を試行的に実施するとのこと。 この開催はレース数を11R制で実施し、デイ開催・ナイター開催においては8車立て、浜松アーリーレース、川口ナイトレース、飯塚・山陽ミッドナイトオートレース においては、7車立てで行う。

 実際に始まってみないと何とも言えないが、オートレース大好きな方にはたまらない企画だと思う。発表の日程では1日・11R+11R+8R=30R(記念レース絡みだと更に1R増える?)も楽しめることになる。

《メリット》

 今まで8Rないし、9Rで行われてる別枠開催(浜松アーリーレース、川口ナイトレース、飯塚・山陽ミッドナイトオートレース・現時点では伊勢崎アフター5ナイターは含まれず)
を11R制にすることで1日の売り上げは上がり、オートレースの総売り上げも上がる。

 デイレース(10R~12R)とナイター(1R~3R)などで時間帯が重なってた部分がなくなり、迷うことなく車券を買えるようになる(今まではどちらを買うか、はたまた両方買うか、買わないで悩んでしまう)。

 レースとレースの時間が詰まるので(おそらく)間延びしないで次のレースに集中できる。(反面、あわただしいというデメリットも)

 12R制の開催が11R制になることで選手のあっせん総数が減り車立てを確保しやすくなる。

《デメリット》

 ファンの皆様の購入金額は限られてるので、1日のレース総数が増えるぶん1レースに費やす金額が減る(かも)。

 レースとレースの時間が詰まってあわただしくなる(上記のとおり)。
 デイ、ナイター以外の開催は11R制になることで選手の総数が増えて車立ての確保が重要になる。(2回乗りもありそう)

 事故レースや悪天候などで発走時間のズレが生じることは考えられる。

《総評》

  現在は全国で5場しかないオートレース場。選手全体の数も年々増えてるのだが、これだけ開催日程が増えるとあっせんする側もされる側も大忙しだ。あくまで『試行的に』の前置きはあるが、将来的には「当たり前」に開催されるのだろうか。

  公営競技としてのオートレースは規模でも、売上でも他の競技に遅れをとってるが、時代の流れでインターネット購入が主流になり、レース場の入場が減ってるのも事実。ゆえにレース数を密にして、できるだけ車券を買ってくださいのメッセージなのだが、ファンの皆様の投票がなければレースは成り立たず、選手の賞金にも影響が及ぶことに。

  くれぐれも無理なくオートレースを楽しんでくださいね!

(文/中村)

 

検査場のお仕事

2025年04月18日

 
 オートレースの競技が安全に執り行われるために、さまざまな人が運営に関わっています。今回はオートレースの車体の安全を確認する検車員の仕事について係りの方にお話を聞いてきました。
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 検車場にはバイクがずらっと並んでいます。バイクとバイクの間には十分なスペースがあり、ここに入って検査員の方がいろいろと作業をします。ちなみに、タイヤの部分に巻かれているのはウォーマーで、走路に出る前にタイヤ表面の温度が下がらないようにする器具です。
 
 -まず、検査ではどういった箇所の点検をするのですか?
 『ネジとかにヒビや緩みがないかとかを打検で確認します。その音を聞いて緩んでいたら、選手を呼んで締め付け直してもらったりします。あとはハンドルやフレームなどの一部が割れてたりしていないかを確認します。とにかく場所は全体ですね。フレームからエンジンの細かい所まで一ヶ所一ヶ所見ます。あとはオイル回りを見て、漏れがないかとか。それとガソリンタンクの中を見て、ガソリンを入れ忘れてないかとか。クラッチのワイヤーを見て、切れてないかとかですね』
-ごく稀に不具合がある時もあるんですか?
 『ありますよ。そうすると選手を呼んで締めてもらうんです』
-検査員の方で修正はしないのですか?
 『トルクとかあるし、本人の持ち物ですから選手自身にやってもらいます』
-タイヤの空気圧とかも確かめるのですか?
 『それはパンクしていないかを確認するぐらいです。空気圧は選手の好みもあるから、そこまでは確認していないですね』
-叩いて、音で分かるものなんですか?
『意外と分かりますよ。緩んでいるといつもと違う音がして、締まっていないのが分かります』
-検査員になるには研修とかあるのですか?
『とりあえず打検のテストをやります。練習用のバイクで、わざと何ヶ所かネジを緩めておいて、それで叩かせて気づくかどうかを確かめます。それをクリアしないと任せられないですから。いつテストをやるとか決まりはないんですけど、だいだい、検査課に配属されたら最初にテストをします。それで全部、間違いなく指摘できたら明日から叩きましょう、みたいな感じでやっています。開催中は一日あたり10人くらいでやってます。基本、バイクの両側に分かれてやってもらったりしています。でも、人が少ない時なんかは1人1台まるまる見ます』
-試走に出るどれぐらい前に検査をするのですか?
『例えば、今が8レース発売中だったら、9レースと10レースに出場するバイクを点検します。ですから、2個レース前には検車場にバイクを運んでもらうかたちです』
-こういった工程を経て、安全なレースが行われるのですね。
『そうですね。更に言えば、仮に検車場で見落としてしまった場合があったとしても、走路内のピットでも打検していますので、そちらで気づく場合もあります。二重三重じゃないですけど、何度もチェックして万全の状態にします』
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 オートーレースのファンには目に触れることのない作業ですが、検査員の方々の入念な確認があって安全なレースが執り行われます。
 
文/高橋

 

車名の由来 6

2025年04月11日

 選手が自分のエンジンの車名を決める理由は人それぞれ。強い思い入れがあったり、そうでもなかったり。そんな車名を決める決定打を聞いてきました。
 
 北原岳哲...フィロソフィー。「哲学を英語でいうとフィロソフィーなんですけど、自分の名前の『岳哲』の哲が哲学の哲なので付けました。親からずっとその漢字が付けられているんですよ。父親も哲郎で、兄貴にも哲が付いてるんです。甥っ子とかもみんな哲が付いているんですよ。せっかくなのでそこから付けたんです。(レース場でもいろいろ考えながら走っているんですか?)常に頭フル回転ですよ。腕がなかなか追いつかないので、とりあえず考えるだけ考えながら、体を動かして頭使いながらです」
 
 平川博康...ヤワラ。「『やわら鉄筋』という会社があって、そこの人にお世話になっているんですけど、その人、オートレースが大好きなんです。親父の後輩なんですけど、もう家族同然でかわいがってくれてるんですよ。田舎なので、そういうのは大切にしたいんです」
 
 高石光将...チビサウザー。「北斗の拳の『サウザー』に似てるって言われるんですよ。あとは自分の身長を考えて。そのまんまですけど、北斗の拳も好きなので」
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 ↑右が深谷俊太選手、ちなみに左は北市唯選手
 深谷俊太...シグナル。「アジアで台風の意味らしいですよ。自分もよく分からないんですけど、味道楽のお客さんが付けてくれたんです」(深谷選手は以前に『アジドウラク』という車名を付けていました)
 
 宮地朗...ザトラクターズ。「これは『ザドリフターズ』から文字って付けたんですよ。ちょうど休みの日に近所の仲間と農業をやっていて、それでトラクターも運転するので。米を作っているので、これから田植えとかあるし忙しくなるんですよ。乗り換わってからエンジンも良くなってるんです」
 
 鈴木静二...ミル。「特に意味はないんですけど、リシャール・ミルっていう時計があって、それで車名に付けました。昔は時計が好きだったんですよ。まあ、今は持っていないんですけどね(苦笑)」
  
 中原誠...ワンハート。「息子の名前を英語化したんですよ。息子の名前は『いっさ』といって、漢字で書いたら『壱』に『心』っ書くんですけど、それを英語化してワンハートです。(では、息子さんの名前を背負って走る、みたいな感じですか?)いやいや、そんな大きな意味はないですよ(笑)。そこまではないです(笑)。背負って走るとかそこまで重いモノはないですよ」
 
 井上智詞...ウォーデン。「これはただ単に子どもが好きなゲームに出てくるキャラクターの名前です。マインクラフトっていうすごく流行っているゲームがあるんですけど、それの敵の強いキャラらしくて...。子どもに(車名を)どうしようかって話していたら、強そうだしウォーデンがいいんじゃない!?って言われて付けました」
 
 下平佳輝...ガラナ。「そんなに意味はないんですけど、『ガラナ』っていう飲み物があって、力が付くみたいな事を言われてたから、じゃあ車名に付けてもいいかなって思いました。(エンジンにもパワーが出たらいいですね?)そうそう。最近はエンジンに力がないけどね(笑)」


 

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