選手が行う整備について
2025年04月04日
「いいなぁ選手って、1日2分弱のレースで稼げるんだから。」「時給にしたら相当凄いね」と思った事、誰しも1度はあるんじゃないでしょうか。
確かにファンの前に出てくるのは、レース前の試走と本番のレースだけ(たまに練習)。でも、オートレーサーの仕事はそれだけじゃないんです。
そう、選手はレースで勝つために愛車に整備をほどこしています。そして整備をする場所は、多岐にわたります。
今回は2名の選手にレースが終わってから、どう整備し翌日のレースに向かうのかをインタビューしてみました。
【川口オート所属・S級選手の場合】
「自分がエンジン整備について考える場合、(優勝を目指しているので)まず、自分も含め96人(8車立て12Rの場合)の中でエンジンがどのレベルにあるのか、をまず考えます。そこからトップレベルにどう仕上げていくか、という流れになりますね」
「整備の優先度は、①エンジン本体、②タイヤ、③フレーム関係でしょうか。まずは、エンジンがいいのか、悪いのか、次にタイヤが滑ったりハネたりしていないか、最後はフレームに不具合がないか、といった感じです」
「レースや練習を乗った感じで、どこが足りないのかを考えて、調整場所を(バネ、キャブ、電気位置など)考えます。調整だけでは変化が期待できない時は部品交換になります」
「その次にタイヤ。タイヤの滑りやハネがなかったか。良ければ、掘っていくのかそのままか。滑りやハネがあった場合や、タイヤのヤマが低くなってしまったら交換します」
「最後にエンジンもタイヤも悪くないが、ハネてしまう場合、フレームやフォーク関係を疑います」
【浜松オート所属・A級選手の場合】
「自分の場合は、エンジンは悪くならなければ前日と一緒。気候に合わせて調整していくくらい。トップクラスの(鈴木)圭一郎とかとは、目指しているエンジンレベルが違うから、普段はそんなに部品交換はしないですね」
「パーツ交換をする時は、セッティングをやってもまったく反応がなくなった時です」
「タイヤは評判のいいロット番号の物を、整備仲間に聞いたりして使います。でも、必ずしもいいわけではない事もあるんですよね。タイヤ自体の個体差があったりして。難しいですね(笑)」
【まとめ】
エンジン状態がいい選手は作業量が少なくなり、エンジンが一息の選手は良くしようとするため、作業量が増えます。
作業をする場所は各選手の経験則に基づいて選ばれますが、選択肢は物凄く多く、良かれと思った整備でも失敗する事も多々あります。
成績が悪いと翌日は人気になりにくい傾向ですが、そんな中、整備の内容によっては、気配が一変することがあります。
一変しやすい代表的な整備は、下回りと呼ばれるエンジンを車体から外して(降ろして)行う大幅な整備です。
特にクランク交換の大幅整備が行われた翌日は、気配が一変しやすいので、選手のコメントには注目しつつ試走タイムや動きに注目です。
人気が落ちた選手が一変する瞬間を狙って好配当をゲットするのも車券戦術の一つと言えます。
最後に、前日のレースの成績が悪かった選手が必死に立て直そうとする姿を、取材のかたわらで見ていると、「立ち直って欲しいな」と思いますし、立て直しを狙って整備した選手のコメントを記事にした翌日、実際に立て直して好走した時は、嬉しさを共有したような気持ちになります。
これからも老若男女を問わず、ひたむきにレースへ向けた整備をやり続ける選手にエールを送りたいですね。
文/金子