11月を振り返って
2024年12月20日
10月2日に伊勢崎で優勝した白次義孝は、11月24日の伊勢崎でも優勝した。10月の時は最重ハンの30メートル前からの競争だったが、11月の開催ではハンデが重くなり20メートル前からだった。しかし、白次の場合は独走力があるので、一人で走れる展開になればどのハンデからの競争でも問題ない。事実、24日に優勝した時も0ハン単騎からの競争で、序盤からスピードに乗ることができていた。タイムが出やすい冬場で、自分の展開になれば強い。
11月の最初の優勝戦は2日の山陽ミッドナイト。ここでは地元の永島潤太郎が優勝した。0ハンに5車並んだ大外からスタート一気。いきなり逃げに入ると、そのまま先頭を譲ることなくゴールしてみせた。今年の7月以来の優勝を決めると、その次の地元昼間5日間開催でも優勝を決め連続Vを達成した。2日のレースは夜の良走路、10日のレースは昼の重走路。レースの時間帯や走路状況にも左右されず対応力の高さを見せつけた。同期の35期の中では佐藤励の快進撃が続いているが、永島も佐藤励に追いつけ追い越せの活躍を見せている。
その佐藤励は11月13日の飯塚ミッドナイトで優勝。それも初日からオール1着の完全Vだった。優勝戦では試走25、上がり357の好タイムをマーク。そのポテンシャルの高さを証明したが、続く23日からの飯塚ミッドナイトでも完全優勝だった。この優勝戦では前回の試走タイムを上回る24を計時。通算優勝回数は16となり、同期をけん引。このままどこまで強くなっていくのかは今のオートレース界の楽しみの一つとなっている。
佐藤励がいずれは乗り越えなければならない大きな壁となる存在は青山周平。その青山周は11月も絶好調。2節走っていたが、最初の山陽G2オートレースメモリアルで優勝した。更に、その次の浜松G1スピード王決定戦では、初日からオール1着の完全優勝で、同大会2013年以来のタイトルとなった。このまま突っ走り続けて、年末のSGスーパースター王座決定戦の連覇を目指す。
青山周と同期の大月渉は、27日の伊勢崎アフター5ナイターで優勝。今年5月以来、通算4度目の優勝となった。成績に安定感がある方ではないが、ここ一番で勝負強い走りを見せるケースが多くある。そういった時は、相手がどんなに強豪でもパワフルな走りを展開する。同じ伊勢崎勢では若手も着実に成長を見せている。17日の伊勢崎アフター5ナイターでは35期の菅野仁翔が優勝。エンジンの仕上げに手こずる期間もあるが、良くなればしっかりと試走タイムに表れるタイプ。同じレースで走るメンバーの中で、一番時計に近い試走タイムが出れば積極的に車券で狙える。
以前は重走路を得意としていた緒方浩一は、今年に入ってから重走路でスランプに入っていた。高い連対率を誇っていたが、思うような走りができないレースが続いていた。しかし、11月に入ってから最初の重走路で勝利を挙げると、26日の地元優勝戦の重走路でも勝ち切り優勝をゲット。昨年までの感覚を完全に取り戻した様子。今は良走路でも走りが良くなっている。
今年7月15日以来となる浜松オートの11月18日からの開催では地元の岩科鮮太が優勝した。同ハンに3車並んだ中枠からスタートこそ行けなかったが、素早い巻き返しから速攻を決め、同期の金子大輔を封じ切った。インコースをしっかり回れるタイプで、エンジン状態が良いと簡単には抜かれない技量がある。元々、センスは高い選手なので再成長に期待したい。
文/高橋
1級車での練習は
2024年12月13日
排気量が500ccの2級車でデビューするオートレーサーは、一定期間が過ぎると600ccの1級車に乗り換わってレースをすることになるが、その1級車に乗り換わる数ヶ月前から1級車で練習できるようになる。それまで乗っていた2級車との違いについて、2025年1月から1級車に乗り換わる36期の選手からコメントをいただいた。
祐定響...「いやぁ難しいですね。跳ねて全然乗れてない感じなので。フレームを点検したり、交換とかもいろいろしてはいるんですけど、跳ねてあまり乗れてないですね。2級車の時はあまり跳ねなかったし、跳ね持ちとかではないんですけどね。エンジンなのか他のところなのかまだ分からないですね。たぶんエンジンだと思うので、そこをやっていこうかなって感じです。練習できる期間も少ないので、どこやればいいか探し中です。まずはちゃんと乗りたいので。(エンジン的には)2級車よりはるかに進むので、車の行き方が全然違いますね。なんでこんな2級車に乗ってるんだろうっていうぐらい。びっくりしました。こんなに違うなら、そりゃあ抜かれるわって感じです。でも、やっぱりコーナーは2級車の方が乗りやすいんで、そこが有利なのかなとは思います。スタートもいろんな切り方を試してます。結構、(思い切り)クラッチを離そうとしたら(車が)浮いちゃうんで、そこの兼ね合いも2級車と違うなと思います。それで(エンジンの)噴かし方もいろいろ変えてみたりしてます。でも、楽しみですね1級車は」
帆影岬...「最初はこんなの乗っててズルイなぁって思ったんですけど、なかなか乗りこなせないですね。突っ込んでからも曲がれないし。2級車とは全然違います。1級車じゃ乗れないけど、そんなことも言っていられないので、とにかく練習するしかないですね」
浜野翼...「2級車との違いというか、とにかく時間がなさすぎて。復帰節(2024年11月18日)から1級車の練習を始めたんですけど、1級車の練習期間が合計で3節くらいしかなくて...。ちょっとやばいですね。乗り込むしかないなって感じですね。真っ直ぐスタート切ることと、ちゃんと6周回まともに走れるように。それができるようにしか考えてないですね。2級車は正直、整備だったり、タイヤとか意外となあなあでいいと言うか、そこまで白黒はっきりしてないって感じなんですけど、1級車はトルクがあるので、タイヤの良し悪しがほんとに分かれるのと、整備はそこまで分からないですけど、乗る面では力が強いので、ちゃんと抑え切れてないと乗れないので、難しいところばっかりですね。2級車と同じ感じで乗っちゃうと全然ダメだし、そもそもどういうコースを走るかっていうのからイチからまたやらないといけないので難しいですね」
やはり、デビューしてから乗っていた2級車とは勝手が違うようだ。しかし、1級車に乗ってから走力が飛躍的にアップする選手はこれまでに多くいた。選手にとっても大きな節目になることは間違いない。
文/高橋
10連勝記録について
2024年12月06日
12月3日、川口オートの第8レースで佐藤励が1着でゴールし、自身初となる10連勝を達成。オートレースは走路状態の変化に対応しなければならなかったり、優勝戦ともなるとメンバーが濃くなったりするので勝ち星を挙げ続けるのは至難の業。それを24歳の若者が達成したのだから見事としか言いようがない。
ちなみに、これまでに10連勝を達成したことがある選手は14人。複数回達成した選手もいるので、回数で表すと計26回となる。
一番最初は元オートレーサーの飯塚将光が1977年3月19日に達成している。この時は12連勝まで記録を伸ばしている。飯塚将光は1982年2月11日にも11連勝を決め通算で2度、10連勝の大記録を持っている。飯塚将光は言わずと知れたオートレース界のスーパースターだった。『ミスターオート』の異名を持ち、一時代を築いた名選手だ。最高峰のレースであるSG日本選手権オートレースで6度の優勝を誇っている。
↓2013年7月、元オートレーサー・飯塚将光の引退セレモニーにて
その飯塚将光と同期の篠崎実も10連勝を達成している。1978年3月13日に地元川口で決めた。その時から46年経過した現在でも現役バリバリでレースをしているのだから恐れ入る。2023年には、73歳10ヶ月29日で優勝し、公営競技最年長優勝記録も保持している。もちろん今でも血気盛んな走りは健在。最重ハンの10メートル前から競争している。
同じ15期でライバル関係にもあった岩田行雄と元オートレーサーの田代祐一も1回ずつ、10連勝の記録を持っている。岩田行雄は1992年12月14日に11連勝を決め、田代祐一は1988年12月13日に12連勝を決めている。両選手は前を走る選手を交わせる距離に入ったら、必ずインに突っ込んでいくのでファンから熱い声援を受けていた。岩田行雄は67歳になった今でも最重ハンから競争をしており、常に全力投球の走りを披露している。
『絶対王者』・高橋貢はこれまでに10連勝以上を4回達成している。最初に決めたのは2001年1月14日で、この時は14連勝まで数字を伸ばしていた。この14連勝は最多連勝記録としてしばらく破られることはなかった。その記録を上回ったのが中村雅人。2015年8月1日に15連勝の新記録を作った。これまでは重いハンデから追い込む側に有利な冬場に連勝記録が作られることが多かったが、夏場に達成したこの記録は14連勝を越えた以上の衝撃が走った。この15連勝の記録もまた、長い間破られなかったが、2024年4月26日に鈴木圭一郎が16連勝を決め、記録を塗り替えた。鈴木圭一郎はその後、2つ数字を伸ばし、結果的に現在でもトップとなる18連勝の新記録を作った。鈴木圭一郎はその後も13連勝を決めるなどし、10連勝以上を4度経験している。
10連勝記録を最も多くマークしているのは青山周平で6回。最初の記録はデビューからの12連勝。13走目も1着を取り、無敗で初優勝を決めたが、その優勝戦ではフライングを切り、記録は12連勝までとなっている。そのため、デビューからの連勝記録で言えば浅倉樹良の13連勝が最多。これは当分、塗り替えられることはないだろう。他にも10連勝を決めているのは和久田正勝(引退)、木村武之、上和田拓海、丹村飛竜などがいる。
ブチ走路は好配当の宝庫!?
2024年11月29日
オートレースの走路状況には「良走路」「湿走路」「斑(ブチ)走路」と種類があります。
その中でも特殊なのは「斑(ブチ)走路」です。
そんなブチ走路は2種類あります。
①良走路から雨が降り出して、表面がうっすら濡れてきた状態
②湿走路から雨が止んで路面が乾いてきて、まだら模様になってきた状態
①も②も試走の時とは急速に走路の状況が変わっているため、レースでは試走タイムからの予想とは異なる結果になりやすく、好配当や高額配当が出やすいイメージがあります。
走路状況は実際にレース場にいれば分かりやすいのですが、テレビ中継のみの場合は判断が難しい。
走行ラインがうっすらと白く乾いてきていればブチと判断できますが、走路の色が分からない場合は、コース内のアスファルト部分が濡れてテカテカしているかどうか、というのが一つの目安になるかもしれません。
では、好配当が出やすいブチ走路のレースを車券的にどうやって狙えば良いのか。一つの手としては試走タイムに関係なく「ブチ走路が得意」な選手を狙う、という事が思いつきます。
以前に、ブチが得意と思われる選手にお話を聞いたところ「多少のブチなら晴れと同じ気持ちでコーナーに突っ込んでいく」との事で、ブチ巧者の選手は滑りを恐れずに突っ込んで行けるメンタルと、滑っても対処できる技術を持っているのでしょう。
「ブチ走路が得意」と公言している選手が実際にいますし、公言していなくても、ブチになると明らかに成績が良くなる選手もいます。
ここからはあくまで主観となりますが、比較的ブチを得意としていると思われる選手をピックアップします。
【川口】上和田拓海 泉田修佑 加賀谷建明 佐藤励 篠崎実 長谷川啓 若井友和
【伊勢崎】岩田行雄 清水卓 高橋貢
【浜松】岩科鮮太 金子大輔 辰巳裕樹
【飯塚】佐藤裕児 篠原 睦 田中 茂 東小野正道 松尾隆広
【山陽】池田康範 緒方浩一 西久保英幸
と、パッと思いついたブチ巧者を挙げましたが、皆さんもこれからブチのレースでブチ巧者を発見したらアップデートしてください。
また、ブチ走路が不利になるのは2級車。走路はレースでの走行ラインから乾いて行く傾向が強いため、2級車の走るアウトコースがまだ濡れている事が多く、スピードが出しにくくなる。なかには例外もいるかも知れませんが、2級車はかなり厳しい戦いを強いられます。
走路状況で好配当を獲れるチャンスがありますので、特にブチ走路に変化した時は、注目して狙ってみて下さい。
文/金子
10月の出来事
2024年11月22日
10月14日、新記録のニュースが飛び込んできた。この日に行われていたG2若獅子杯争奪戦の最終日に鈴木圭一郎が1着でゴール。この勝利で今年の1着回数が98回となり、これまで青山周平が持っていた年間最多勝記録を更新した。この時点での出走回数は123。つまり、123走して1着が98回と、驚異的な1着率を叩き出していた。
その時の鈴木圭のコメントを一部抜粋。「自分が持っている(年間最多勝利数)94勝は144走以上走っていると思うけど、今年は120走ぐらいで98勝しているので早かったと思います。次節はしっかり勝ち上がって100勝できたら嬉しいと思います」。ちなみに、この節の若獅子杯争奪戦では3日目に落車妨害で勝ち上がり権利を失っていた。そして、次節となったSG日本選手権では初日から連勝決め、10月31日にオートレース史上初の年間100勝を達成。その時の鈴木圭のコメントは「100勝は嬉しい。だけど、開催日数も増えているので、そのうち抜かれますよ(笑)」。大記録樹立に素直に喜んでいたが、謙そんする気持ちも忘れていない。確かに、ミッドナイトレースなどの増加により、開催自体が多くなり全体的に以前より1年間の出走回数も増えているが、とはいえ年間100勝を越えるのはなかなか厳しいだろう。ましてや125走で100勝など異次元の勝率だ。これまでの年間最多勝記録は2023年に青山周平が打ち出した97勝。この記録は135走してのものなので、今年の鈴木圭の1着率は際立っている。更に「今年はできるところまで伸ばしていきたい」と語っており、11月以降も1着を量産している。
10月中の最初の優勝戦は、2日に行われた伊勢崎アフター5ナイターでのレース。ここで優勝したのは白次義孝だった。今年は春先から夏場にかけて苦しんでいたが、9月の中旬から上向いてきた。そして、10月の上旬に約2年ぶりとなる優勝を決めた。スピードが持ち味の白次はこれからの季節でこそ活躍が見込まれる。
同じく夏場はイマイチだった木村武之は、5日の山陽ナイターで優勝。その後の17日の川口でも優勝し連続Vを決めた。下旬から始まったSG日本選手権では2日目に反妨したが、その後の4走はオール1着。エンジン的には完全に復調していた。
20日の山陽ミッドナイトで優勝したのは落合巧。その後のSG日本選手権では苦戦を強いられたが、次の伊勢崎では準優勝していた。一時、伸び悩んでいる時期はあったが、ここにきて再成長の兆しが見えている。
16日の伊勢崎アフター5ナイターで優勝したのは佐久間健光。今年はおおむねエンジンが安定しており、その後の伊勢崎ナイターでも準優勝している。以前は課題に挙げられていたスタートも、だいぶ改善されている。同ハンに数車並んでいても枠ナリには出て行けている。
26日の山陽オーバーミッドナイトで優勝したのは長田恭徳。長田恭は今年最初の節で落車し、長期離脱を余儀なくされたが9月から戦線復帰。そこから5節目で早くも復帰後初Vで完全復活となった。
ちなみに、10月29日はオートレース発祥の日だった。1950年10月29日に千葉県船橋市にある船橋競馬場のコース内側で初めてオートレースが開催された。それから74年間、多くのオートレースファンを賑わすレジャーになっている。
文/高橋