久しぶりに森且行の優勝が見たい!
2024年10月11日
2021年1月24日、飯塚オートで落車し、大怪我を負った森且行は長期間による休養とリハビリを終え、2023年4月6日に地元・川口で戦線復帰を果たした。復帰戦は白星、次のレースでも勝ち切り、不安視されていたレース勘は何ら問題ないと証明した。そして、復帰後3節目ですでに優出を決めてみせた。結果は8着だったが、これなら復帰後の初優勝もそう遠くない雰囲気を感じさせた。しかし、そこから優出する機会は何度もあったが、優勝まではなかなか到達していない(2024年10月10日現在)。
復帰後の優出回数は実に18回。その中には準優勝が6回含まれている。最初の準優勝の時は山陽の永島潤太郎に敗れてしまった。森にとって得意の重走路だったが、この時の永島は森の30M前からの競争だった。森は5車並んだ最重ハンからトップスタートを決め、早々と永島を追う態勢を作ったが交わし切るまではいかなかった。
次の優勝チャンスを阻んだのは武藤博臣。武藤は森の20M前に置かれていたが、この時の武藤は減量に成功し、スピードが増していた。レース中盤で抜け出すとペースを上げて走り、森の追い込みを僅かな差で振り切ってみせた。次は加賀谷建明。この時は0ハンに1車、40線に7車並ぶという珍しいハンデ構成だった。最内の森はしっかりと枠ナリスタートを死守し、0ハン単騎の伊東玲衣を追っていたが、その前に加賀谷に交わされてしまう。その後は離されながらも付いて行き2着入線だった。その次は佐藤摩弥が森の優勝を阻止した。最重ハン最内に置かれた森は、大外からカマシを仕掛けてくる佐藤摩を1コーナーで突っ張ってみせたが、バックストレッチで内側に潜り込まれてしまった。その後は巻き返しを図ったが、2番手に上がるのがいっぱいだった。5度目の準優勝の時は佐藤励の速攻に屈してしまった。20線に6車並んだ中枠からトップスタートを切った森だったが、やはり悪くないスタートを決めた佐藤励が2周1コーナーでインに突っ込んでいった。森は離れた2番手で入線となった。
そして、直近のレースでは再び加賀谷に敗れて準優勝となった。その開催では準決を終え、優出を決めた段階で優勝戦の日は降雨の予定だった。最近の重走路では無類の強さを発揮している加賀谷が断トツの優勝候補に推されていたが、優勝戦でも人気に応えて1周回った頃には先頭を走っていた。必死に食らい付いていた森が仕掛けのチャンスをうかがうが、最後まで逆転はできなかった。
レース後に森は「滑るねー、みんな滑ってる。乾き始めで走路が滑るんだよ。俺のは直線いいけど、流れ込みがない。付いていこうとすると滑っちゃう。あいつ(加賀谷選手)足つかないのに突っ込んでいくんだよ。エンジン良くても勝てないよ。でも、食らい付いて行こうと思って。ちょっと入れそうな感じもあったけどね」と悔しそうな表情を浮かべながらも、相手の技量をリスペクト。談話の後半には「新聞に書いておいて!『2着だったら優勝って』」と冗談も飛び出した。
対する加賀谷は「(競争中)ビジョンを見ると狙われてるなと思って。ずっと森さんいたもん。俺、滑ってるし、いつかやられるなと思って」と、いつ抜かれてもおかしくないくらいプレッシャーを感じていたようだ。
負けた森も収穫があった様子で「とりあえず、これで選手権の晴れタイヤができた。(付いて行けたのは)そのタイヤが良かったのかも。いつもは離されちゃってるから。雨ならもう少し先を作らないと。これでまた一つ勉強になりました」と、50歳になった現在でもレーサーとしての総合力アップに余念がない。復帰後の初Vを迎える日は近い。
文/高橋
9月を振り返って
2024年10月04日
9月を振り返って
先月に続いて初Vを飾る選手が目立った9月。3日の山陽ミッドナイトで37期の村田光希が初優勝。デビュー後に勝ち上がり権利が発生してすぐ優勝する選手はいるが、村田もデビューしてから9ヶ月での優勝なので十分早い方だ。その次の山陽ミッドナイトで初優勝を決めたのが祐定響。祐定は36期でデビューは2023年2月。デビューから1年7ヶ月目にしての初優勝と、やや時間がかかった方だが、それでも2級車の内に優勝できたのだから大したもの。しかも、優勝した節は全て1着の完全優勝だった。ここからまた、更なる活躍を見せてくれるだろう。
3日の飯塚の昼間開催で初優勝したのは吉川麻季。吉川は2021年11月から長期離脱していたが、今年の3月に戦線復帰。その直後はなかなか結果が出ないでいたが、5月下旬あたりから1着を取るようになってきた。そして、8月31日からの4日間開催でオール1着。初優勝を完全Vで決めてみせた。吉川は以前からエンジンが良い時は試走タイムが出る方で、一人で走るような展開ならスピードを乗せて走ることができていた。0ハン単騎のハンデ構成なら好成績につながりやすい。今後は捌くレースでどうなるかだ。
そして、デビュー21年目にして悲願の初優勝を迎えたのが吉田恵輔。2級車の頃は粒ぞろいの29期の中でそれほど目立つ存在ではなかったが、着実に走力を付け、特に重走路では高い連対率を誇るようになった。それがあっただけに優勝戦で重走路になれば初優勝できそうな機会は何度かあったが、そこでもなかなか勝利にはつながらないでいた。ただ、決して諦めずに整備や練習を繰り返し、ようやく栄冠を掴み取ることができた。今ではスタート巧者の部類に入る方だし、捌きも磨かれているので、これまでの分を取り戻す勢いで頑張っていきたい。
9月のMVPを決めるなら間違いなく青山周平だ。青山周は9月に3節出番があり、その全てで優勝。しかも、その中にはG1ムーンライトチャンピオンカップや特別G1プレミアムカップも含まれている。更に言うなら全12走して1着が11本、負けたレースも2着でオール連対。その間には自身6度目となる10連勝も達成している。10月からはS級2位に陥落してしまうが、来期で返り咲きの態勢は十分すぎるほど整っている。ライバルである鈴木圭一郎は、9月は2節を消化。最初の川口の4日間一般開催では完全優勝。特別G1プレミアムカップでは予選、準決をオール1着。優勝戦は青山周に敗れて3着だったが十分な成績を残している。
区切りの1000勝に到達したのは荒尾聡。19日の特別G1プレミアムカップの初日に達成した。これは史上31人目の快挙だという。スタート良し、スピード良し、捌き良し、重走路良しのオールラウンダー。次は1500勝を目指して勝利を積み重ねていく。
文/高橋
チェックポイント《手前の良さ》
2024年09月27日
以前に私がベテランのS選手に取材をしていた際に、「S選手のエンジンが調子がいい時は試走でどこを見ればいいですか?」と聞いたところ「自分の場合は手前がいいかどうか、立ち上がりで膨らんでいっていないか、がポイントだよ」と教えてくれました。
S選手の言う「手前」とは、コーナーの中間から出口にかけての場所、俗に言う「2コーナー」と「4コーナー」付近になります。ただ、試走を見て手前がいいかどうか、判断するのはかなり難しく、VTRを何度か見直してようやく分かるか、といった感じで微妙です。
最近の中で「手前」の動きが分かりやすい映像としては、川口オートや飯塚オートの中継で4コーナーの立ち上がりだけを映した映像がいいですね。
また別の日に、今度はA選手に「手前」に関する質問してみました。
質問内容は「手前がいいと人を抜きやすいのか」「試走タイムが出ているのに人を抜けないのはどういう状況なのか」と聞きました。
【A選手の見解】
1、「立ち上がりで外を向いている車は手前の力がない」
※これは、手前の力がないとトルク感がなく、そのままインコースを小さく立ち上がると失速気味になって、逆に前に離されてしまうという。そのため、外に向けて勢いを殺さないように走るしかなくなっている、という事らしい。
2、「力がないから外へ行く。レースは人に合わせるので回転数が落ちるが、手前がないと回転がついてこない」
※ハンデ戦などで相手を追い抜く時には、ひとりで走る試走と違い、相手に合わせて回転を一旦落としながらも切り返したり、捲りに行ったりするのだが、手前がないと1度回転が落ちてしまった際に、回転がなかなか上がってこないので結果的にロスをしてしまう。
3、「(立ち上がりを)フワッと走っているのは止まりが甘い、立ち上がりの力がない」
※止まりが甘い、というのはエンジンブレーキが効きづらい状態で、自分の思った所で止まらず抜く体勢を作れない。また、前が混戦だと追突する恐れがあるため、車群のない外を回るか、早めにアクセルグリップを戻すか、という対応に迫られる。結果的に毎コーナー人を抜けない状態に陥る。
4、「試走が出やすいのは先があって手前がない(事が多い)」
※先がある、というのは直線からコーナー入口にかけて伸びて行く状態。ただ、手前がないと人を抜く態勢を作れず、結果的に試走タイムは出ていても抜けない事につながる。
5、「手前の力があると小さく立ち上がっても進んでくれる」
※手前の力がある、すなわちトルク感がある状態だと、小さく立ち上がっても、回転が落ちずに直線の伸びにつながり、人を抜きやすくなる。いわゆるレース足がある状態となる。
結論として、試走の見た目も、選手のコメント的にもかなり「手前の良さが大事」と言え、車券作戦のポイントとして注目してみて下さいね。
文/金子
8月の出来事
2024年09月20日
8月の出来事
川口オートは1節しか開催されなかったが、ここでは岡谷美由紀が優勝。岡谷は2022年11月10日の浜松でのレースを走った後、長期の休養に入っていた。約1年半、競走から遠ざかっていたが今年の6月に戦線復帰。その初節でいきなり優出を果たした。長期欠場が続いていたのでレース勘の面で一抹の不安はあったが、完全に払拭してみせた。そこからも上位着を取り続け、ついに8月の川口開催で優勝を決めた。
8月に行われたSGはオートレースグランプリ。青山周平にとっては地元開催となったが、初日からオール1着の完全優勝で幕を閉じた。さらに、このオートレースグランプリでは初となる3連覇達成で5度目の優勝。SGは通算で17V。これはSG優勝回数で単独の2位。今の青山周平なら、これからもSGで優勝できるだろうからこの数字はもっと増えるはず。伊勢崎オートは、次のアフター5ナイターで三浦康平が優勝。三浦康平は今年2度目の優勝となった。8月末の開催では高橋貢が優勝。4日間の日程で、全て重走路だったがオール1着の完全優勝だった。今年は3V。通算優勝回数は218となった。この数字を越える選手はなかなか現れないだろう。
この8月に初優勝を決めた選手は2人。丹下昂紀と中村颯斗だ。丹下は8月9日の山陽ミッドナイトレースで達成。今年1月にデビューしてからはなかなか思うような走りができないでいたが、良走路では5月に初勝利を挙げ、7月に入ったあたりから徐々に成績が上向いていた。7月20日からの開催で初優出を決めると、いきなり準優勝。そして、8月6日からの開催では2日目から3連勝で初優勝を達成。今のところ2優出して全て連対している。中村颯斗は2021年12月にデビューしてから重走路では1着を取っていたが、良走路での初勝利は2022年の10月で、約11ヶ月の月日を要した。2024年に入ってからは、ちょこちょこ優出する場面が増え、8月19日の飯塚開催で待ちに待った初優勝を遂げた。これからはさらに自信を持ってレースに臨めるだろう。
8月21日の山陽ミッドナイトレースと27日の山陽ミッドナイトレースで連続優勝したのは地元の丸山智史。今年は9優出中、2回の優勝。まずまずの成績と言えるが、丸山智史はこれまでにG1とG2を1回ずつ制しているように走力は確かなモノを持っているので、今後は記念レースでの活躍にも期待したい。
8月の記念は先述のオートレースグランプリの他に、飯塚でG1ダイヤモンドレースが行われた。ここで優勝したのは小林瑞季。この優勝戦には青山周平や鈴木圭一郎、それに地元の有吉辰也や荒尾聡などそうそうたるメンバーでの競走になったが、小林瑞季はこのプレッシャーをはねのけて栄冠を勝ち取ってみせた。小林瑞季は通算9Vの内、G1が3つある。どちらかと言うと、大きな大会などで相手が強くなるほど本人の能力を最大限出せるタイプと言えるかもしれない。次はSGでの初優勝が視野に入っているか。
文/高橋
オートレースのルールについて 2
2024年09月13日
前回、触れられなかったオートのルールを紹介
レース中にそこそこ取られることがあるのが反則妨害。これは競争中、他車に対して不利を与えた場合に取られる反則。この反則をしてしまうとその節での勝ち上がり権利が消失してしまう。更に不利を受けた選手が落車すると、翌日罰則休の対象となり翌日のレースに出走できなくなる。競争をしている選手は誰一人、反則などしたくないのだが勝負どころやどうしても引くに引けない場面でこういったシーンが見られることがある。不利を与えた程度が大きくない場合は戒告となり、反則には至らないケースもある。ただし、この戒告も6回出場中2回取られると、反則妨害をした時と同様に勝ち上がり権利がなくなる。
スタートに関する反則でフライングは前回述べたが、他にも後方スタートや出残りというものがある。後方スタートは、スタートする時に補助線と呼ばれるラインに接地しないで、しかも、大時計の針が0を指す前にスタートしてしまうこと。普段よりも助走の距離が少しだけ多くなるので、加速しやすい状況になり、公正ではない競争になってしまう。スタート後に他車より少しでも有利な態勢を作りたくて気持ちが前のめりになってしまう場合や、うっかりしていた場合など原因はさまざま。この場合も翌日のレースに出走できなくなる。もう一つあるのが出残り。これは大時計の針が0を指したのにもかかわらず発走しない場合、もしくはスタート直後に停止してしまうこと。この場合はフライングと同様に再発走となり、当該選手は勝ち上がり権利がなくなる。
まれに見られる反則で周回誤認というものがある。通常のレースは6周で決着をつけるが、5周目を回った段階でゴールしたと勘違いし、競争から離脱してしまうこと。番手を大きく落としてしまう可能性が高く、上位着争いに加わっていたのに着外でゴールを迎えることも少なくない。的中になりそうな車券を持っている側からすると大きな損失となるので重罰となる。その節は翌日から参加解除、更に次節とその次の節も出場規制となる。
同じくらい罰が重いものにタイムアップがある。これは良走路においての競争で、試走タイムよりも競争タイムの方が良く、更に3着以内で入線した場合。試走タイムはスピードが乗った状態から計測するのに対し、競争タイムは停止した状態から計測するので、通常なら競争タイムの方が良くなることは考えづらい。しかし、試走が極端にうまく走れなかった場合に当てはまってしまうことがある。この罰は翌日から参加解除、更に次節も出場規制となる。
次に欠車と停止。欠車は体調不良や車体不良により試走に参加できず当然、競争にも出場できない場合。停止は試走には参加したものの、その後に何か不具合があり競争に出場できない場合。たまにあるのがパンク。試走は普通に走れたものの、その後、徐々にタイヤの空気が抜けていきレースができない状態になってしまうことがある。欠車も停止も勝ち上がり権利は消失してしまう。もっとも、体調不良で欠車の場合はそのまま参加解除になるケースが多い。
文/高橋