3月の活躍した選手
2024年04月19日
3月のオッズパーク的MVPは佐藤励と金山周平
月間3度の優勝を決めたのは佐藤励と金山周平。佐藤励は3月2日の川口昼間開催、3月19日の川口ナイトレース、3月30日の山陽ミッドナイトで優勝。その間に川口のG1で優出3着という結果もある。良走路での試走は全て30を切り、ベストタイムは3月2日の優勝戦で出した23。他もほとんど25近辺の数字をマークしている。エンジンを高い状態で安定させることに成功している。そして、エンジンが良ければ乗り手の方もしっかりと結果を出している。これで佐藤励は通算11V(3月30日時点)となった。
金山周平は3月6日の飯塚ミッドナイト、3月13日の伊勢崎昼間開催、3月26日の伊勢崎アフター5ナイターで優勝。飯塚ミッドナイトでは最重ハンの20メートル前からの競争だったが、その後の伊勢崎昼間開催では初日からハンデが10メートル重くなった。それにも関わらず連続優勝を達成。スタートが決まらず、更に同ハンの中で1度は後ろまで下がってしまったが、そこから巻き返しての優勝。エンジンが良いだけではなく、乗り手の方も周りの動きが良く見えていた。3月は全部で15走し、4着以下は3回だけ。金山周平もエンジン好調をキープできていた。
3月中に2度の優勝があるのは新人37期の森下輝。3月5日と28日の浜松で優勝している。5日の方は自身初優勝で、デビューしてから12走目。そこまでの成績は1着11回、2着が1回。つまりデビューしてからオール連対で初優勝を成し遂げている。その後の節は準決に乗れなかったが、その次は初日から4連勝で完全V。通算2度目の優勝となった。同期では浅倉樹良、福岡鷹の活躍が目立っているが、この森下輝もそこへ加わり37期の3本柱を形成している。
3月に行われた記念レースは3つ。まず最初は山陽のG2ミッドナイトレースで、ここでは新井恵匠が優勝した。これが記念レースでは約5年ぶりの優勝となった。記念タイトルはG1、G2を含め4つ目。残すはSGのみとなっている。川口で行われたG1開設記念グランプリレースは青山周平が制した。同タイトルは2014年に獲得して以来、2度目の栄冠。4月からは全国ランク1位に返り咲き、青山周平の時代はまだまだ続きそう。山陽で行われた特別G1プレミアムカップは鈴木圭一郎が優勝。4月からは全国ランク2位に陥落したが、巻き返しの態勢は十分整っている。
川口での昼夜同時開催では谷島俊行が両方の優勝戦に進出していた。昼間開催の方で優勝し、夜も優勝すると同日に2度優勝という快挙がかかっていたが、先述のとおり、夜は佐藤励が優勝し大記録達成とはならなかった。しかし、今後の話題としては十分なものを提供してくれた。23日の飯塚ミッドナイトの優勝戦は別府敬剛が制した。別府敬剛は1月に2度優勝しており、今年は早くも3度目の優勝となった。今年は別府敬剛にとって特別な年になりそう。
文/高橋
難走路への対応
2024年04月12日
一日を通して良走路、もしくは重走路なら対応もしやすいが、徐々に走路が変化してくると...。
4月9日の川口オートは暴風雨で第1Rが始まり、そこからは雨も風も徐々に治まっていったが2、3Rあたりはまだ走路に水たまりができていて最も悪条件でのレースとなった。その第2Rで1着を取った選手は「(水たまりの)抵抗がないようになるべく足をつかないようにして走りました。足をつくと水の抵抗で、足が後ろに持っていかれちゃうので。風も強くて難しかったですね。試走はうまく走れなかったです」。やはり通常の重走路とも違い、気を使った走り方になるようだ。
第3Rで勝利した選手からは、ひと味違ったコメントが聞かれた。(今日の雨は降り方がひどかったですね)と話を振ったところ「いや、これが一番好きです。雨が降れば降るほどみんなが走りにくくなるし、みんな嫌がれば嫌がるほどチャンスあるので」と、逆転の発想もあるようだ。特殊な重走路にも「あまり足をつかないようにした。足をつかないで走ればいいのは知っていたし、ちょん、ちょんとつくくらいにして走りました」。対策面もバッチリだ。
第5Rあたりからは水たまりがなくなってきたが、そのレースを制したのは雨巧者で定評のある選手。(同じ重走路でも濡れ方とか水の量とかで感じは違いますか?)「全然違う。試走からタイムが違うしね。でも、自分は走り方は特に変えない。川口走路は外を回れるから。他の場は違うよ。今日の2Rとか3Rだと足がつけないくらいだったから足を持っていかれちゃうけど、今はそんなに水がなかったからね。(今さらですけど、重走路をこなすコツとかあるんですか?)コツなんかないよ。セッティングも晴れと変わらないし。メンタルがでかいよ」。雨巧者のコメントに多いのが『雨は気持ちで乗る』だ。
第7Rくらいになると、走路に乾いた部分がポツポツと見え、いわゆるブチ走路。(走路状況が変わってきて、レースも難しかったと思いますが?)「どこまで(車を)寝かせていいか分からないから怖かった。まだ寝かせられる、まだ寝かせられるって探りながら走ってました。朝練は嵐の中、乗りましたよ。その時とレースは全然、状況が違ってました。朝は水がたまっていたから、キャブの調整だけ変えていって、レースは乗りやすかったですよ」。走路状況の変化に、キャブ調整で合わせられた様子。
第8Rの試走ではだいぶ走路の水気が減ってきたが、レース前に小雨が降り、再び走路一面に乾いた部分がなくなった。そこで1着の選手は「まあ、濡れ切っちゃったんで、重走路だと思っていきました。タイヤも雨タイヤでいきました。タイヤは迷ったんですが、もう1回雨が降ってくれたので結果的に良かったです」。タイヤの選択が走路状態にうまくマッチしたようだ。
第9Rは試走で雨が降っていたがレースでは止んで走路はブチに近かった。1着選手は「エンジン的に乗りやすかったです。自分の場合はドシャ降りだからセッティングをどうするとかはなくて、内を回りたいか外を回りたいかによってセッティングを変えます。今日はうまく合ってくれましたね」。
第10Rはだいぶスピードが出る走路状況に変わっていった。「1、2コーナーはまだ滑る感じで3、4コーナーは食いつく感じがありました。3、4コーナーの方が乾きが早かったかな」と1着選手のレース後のコメント。走路状態はかなり特殊だったようだ。「自分は雨でも晴れのセッティングで乗るんですよ。前は雨のセッティングもやってたんですけど、そこまでやると訳わかんなくなっちゃうので。乗り方は変えますけどね」。難走路でも乗り手でカバーしていた。
第11Rになると、ほぼ良走路に近いタイムが出ていた。勝った選手は「ほとんど9割方晴れだった。準備も晴れ用で行ったよ。今日はレースまでに3回タイヤを換えたよ」。走路コンディションを考えて入念にタイヤを選び、それが奏功。
優勝戦は上がりタイム3・378が出て良走路と言える状態だった。優勝者は「いろんなパターンのタイヤを作っておいてって感じで、タイヤの準備が忙しかったですね」。万全の状態でレースに臨めるように手を動かしていた。
走路の状態によって選手はいろいろ対応を考えなければならないので大変ではあるが、それがうまくいった時は喜びもひとしおだろう。
文/高橋
車名の由来 2
2024年04月05日
車名の由来
西翔子...ニッキ。「2級の時は『ハンナリ』で、京都感を出すためにやっていたんですけど、ファンの方に次はどんな京都っぽいものにするんだろうと言われてたので、京都感を出さないといけないかなと思って。なんか、先輩とかに『八つ橋』にすればって言われたんですけど、ダサいじゃないですか。でも、ニッキの味が八つ橋では結構ベタなので、それで『ニッキ』にしました。(遠めに、京都に関係あるかな、みたいな感じで?)そうです。なんか、連想できるかなと思って。(ちなみに、八つ橋って好きなんですか?)八つ橋好きですよ。よく買います。生八つ橋とか、高いヤツとかいろいろあるんですよ。美容にもいいんですよ。何の成分だったかは忘れちゃったけど...。はははっ。実はいいんですよ。新幹線に乗る時とか買ったりします。(では、お土産とかにも買ったりして?)そうですね。でも、八つ橋って結構、好みが分かれるんで、人にはあまり渡さないですけど、自分はメチャ食べます。(それで、車名にもしたんですね?)なんか、短くて、呼んでもらいやすいのがいいと思って、覚えやすいですし。【オートレーサーでは珍しい京都出身のレーサーです。その京都に縁のあるモノをひとひねりして車名に選んでいるようです】
佐藤励...シロウWV。「2級の時は『シロウFT』っていうのに乗っていて、シロウっていうのはお爺ちゃんの名前で、もう死んじゃったんですけど。自分がオートレーサーになる前にずっとレースをやっていて、バイクに乗るのってすごいお金がかかるんですけど、金銭面で助けてもらっていたので。『FT』は《ファイトトゥギャザー》で、今の『WV』のWは《ウィズ》で一緒にという意味で付けて、Vが《ビクトリー》。一緒に勝つぞっていう意味で。2級では一緒に戦ってきたので、1級でも一緒に勝とう!と、その意味合いで付けました。(明日は前節に続いてダブルVになるといいですね)それ、それですね。イケれば理想ですね。頑張ります!【このお話を聞いたのは2023年の12月30日で、前節の山陽GⅠ優勝からSSシリーズ戦の連続優勝がかかっていました。そして、見事に達成されました】
青木治親...ヤルゼSSP。「ぼくがやっている社会貢献活動で、サイドスタンドプロジェクトっていうのがあるんです。前にオートレースのCMでやっていたんですが、障害者の方にオートバイに乗ってもらう事業をやっていて、それのSSPです」(それで、ヤルゼっていうのは?)「ヤルゼは、箱根ターンパイクで以前、障害者の方にオートバイに乗ってもらうイベントをやったんですよ。最初は補助輪付きのオートバイを使って練習してもらって、最終的には僕たちが乗っているような1000ccのオートバイを一緒に楽しむような。で、箱根で公道を走ったり、相模原の公道を借り切って、そこでみんなでオートバイに乗ったりツーリングして、それで、箱根でやる時のタイトルが『やるぜ!!箱根ターンパイク』なんですよ。なので、ヤルゼとSSPをくっつけてるんです。本当はSSPだけでもよかったんですけど、それ(アルファベット)だけじゃダメって言われたので、ヤルゼをつけて」【社会貢献活動からのネーミングです】
文/高橋
あるひのオートレース
2024年03月29日
1999年12月8日に浜松オートでその事件(できごと)は起きた。第3回SGオートレースグランプリの優勝戦である。準決で3.305秒と、その時点では日本レコードタイムを出して4連勝の竹谷隆にオール連対の濱野淳。この両者が目立った今大会。0mオープンでの優勝戦は1枠・田代祐一が欠車。これで事実上の最内枠で有利になったのが伊藤信夫。
*****************************
枠 車 名 選手名 H 本走T 秒/100m 試走T
② ポトラッチ 伊藤信夫 0 2.47.5 3.284 3.25
⑤ ラブボート 竹谷 隆 0 2.47.6 3.286 3.23
③ ウォリアーズ1 島田信廣 0 2.48.1 3.296 3.24
④ エンブレム 濱野 淳 0 2.48.4 3.302 3.24
⑦ キブロワイト5 片平 巧 0 2.48.6 3.306 3.27
⑥ タイガー 鈴木辰己 0 2.49.1 3.316 3.26
⑧ ジゲン 淺香 潤 0 2.50.9 3.351 3.27
① ジンリキ 田代祐一 0 欠 車 故障 再試
2連複 2-5 1670⑧ 2連単 2-5 3670⑰
*****************************
スタートは竹谷が飛び出すが、伊藤信は枠を主張して1コーナーうまく回ってペースを上げて後続をチギる。あの鉄人・島田信廣でさえこの超ハイペースにはお手上げ状態で3着一杯だった。1着ゴールした伊藤信は、いまだに破られてない本走3.284秒を記録し、初のSG優勝をSG初優出、しかもホームグラウンドの浜松で獲ったことは、のちの選手・伊藤信夫のオートレーサーとしての歴史には忘れようにも忘れられない事件(できごと)だった。当時の伊藤信夫コメント「SG初優出に加え地元で優勝できたことが、たまらなく嬉しいです。スタート勝負とは思っていたが(田代祐一さんの)欠車のことは考えなかった。日本選手権の落車で師匠(山田隆久)に『焦るな』と言われ注意して走りました。とても乗りやすく10周回も短く感じました」。
注)当時はまだ3連単の賭式は確立されておらず、2連単で3千円は好配当なのである。
今年は8月10日から15日に伊勢崎で行われる第28回SGオートレースグランプリ(ナイター・6日間)。かつて08年には永井大介が、09年には木村武之がSG初載冠を果たした大会。そして、七不思議である鈴木圭一郎が獲ってないSGという事実。今年もドラマが起きるのか、いささかフライング気味ではあるが楽しみである。
(文/中村)
2024年度前期ランクを考察
2024年03月22日
2024年度前期ランクを考察
近年は青山周平と鈴木圭一郎のどちらかがナンバー1を獲得している全国ランキングだが、2024年度前期は青山周平が1位になった。これが2期ぶり9度目の全国1位となる。
青山周平の活躍ぶりはあえて述べるまでもない。昨年は最優秀選手賞にも輝いたし、年間最多勝利記録も塗り替えた。SGを含め記念レースでも好成績を残し続けた。走りの力強さは随一で、厳しいレース展開になっても強引に打開していく芯の強さがある。車券を買う側から見れば頼もしい存在だ。鈴木圭一郎は2位に陥落したが、高い連対率を誇っているし記念レースでも上位着でまとめている。
地区別で見ると川口に大きな変化があった。ここ近年は中村雅人と永井大介が1位を争うことが多く、2期前は加賀谷建明、3期前は若井友和が1位になっていたが、2024年度前期は黒川京介が川口のナンバー1に始めてなった。更に言えば全国ランクでも3位に入る大躍進。前期の20位からは大幅なジャンプアップとなった。未だSGタイトルこそ取れていないが、あと一歩というところまでは辿りついている。SG未冠組の中では初Vに最も近い選手になっているのではないか。業界に新しい風が入る意味でも、黒川京介の川口ナンバー1奪取は嬉しいニュース。同じ川口地区では佐藤励が初のS級入り。前期はA級の100位だったので、こちらも急激な成長を感じさせるランクの変動。ランクの審査期間である2023年7月1日から12月31日までに9回の優出があり、その全てで連対している。その内、優勝が6回。その中にはG1とG2が1回ずつ含まれている。まだまだ成長の余地が大いにあるので、今後の走りにも注目だ。
伊勢崎地区は青山周平が10期連続でナンバー1だが、今期から初のS級昇格となる選手がいる。33期の伊藤正真だ。伊藤正真は数期前からA級の上位につけることはできていたが、S級になるのは初めて。言わずと知れた2世レーサーだが、実父の伊藤正司とは走りのタイプが真逆で、大外をブン回ってスピードを上げるスタイル。1級車乗りになってから課題点を一つずつ解消させている印象がある。スタートが安定して切れるようになってきたし、2023年5月からは重走路での成績が飛躍的に上がっている。いずれは伊勢崎を背負って立つレーサーへとなっていくだろう。
飯塚地区は有吉辰也が2期連続4度目の1位。それまでは荒尾聡が8期連続で1位を維持していたが、有吉辰也がここにきて盛り返しを見せている。大きなケガを乗り越え、少しずつ以前の動きを取り戻してきたが、ここ数期は全盛期の走りに近い状態になっている。若手では長田稚也が前期の17位とほぼ同じの18位。中村杏亮も前期の14位近辺の19位。この両者が将来の飯塚地区を担っていくか。
山陽地区は丹村飛竜が3期ぶり5度目の1位。エンジンの急激な変動が少なく、一度下降すると苦しい時期が長く続くこともあるが、その反面、好調時には1着を量産する傾向がある。基本的にスタートは切れるしスピードもある。特に重走路では高い1着率を誇っている。山陽地区では若手のS級選手が不在だが、永島潤太郎や山本翔、山本将之などは次期S級へ向け力を付けている。
文/高橋