最高の結果を残すために

2024年03月15日


 整備代についての話
  
 オートレースの競争車は選手個人の持ち物。車体の購入はもちろん、各パーツを交換するときも自費で購入して組み替える。エンジンがしっかりと動いている時はいいが、不調になると何かしらパーツ交換をして、レースで戦える状態に仕上げなければならない。主要なパーツの値段(税込み)をリサーチしたので紹介していく。


 
 まずはエンジンの心臓部とも言えるクランク。エンジンの性質を大きく変えたい時や、他の部品を換えてもエンジンに変化がない場合に最後に交換する最重要パーツだ。これが、17万2507円。
 
 そのクランクを包むパーツとしてあるのがクランクケース(通称ケース)。これを換えるだけでもエンジン状態が大きく変わる場合がある。これが、31万4305円。次にコンロッド。略して『ロッド』と言われる場合が多い。クランクと連結するパーツで、これも交換することでエンジンの性質がまあまあ変わる場合がある。ちなみに、1万4320円。選手のコメントで「下回りを組み直してパーツ交換も考えている」とあったら、このクランク、クランクケース、ロッドの交換があるかも。
 
 「中間までバラして点検します」とあったらシリンダー回りの確認のことを指す。何か気になる点があったらシリンダーやピストンの交換、もしくはその両方を同時に換える時もある。これもエンジン状態の変化にそこそこ影響がある。シリンダーが11万4805円。ピストンはエンジンの中に2つあるが、1個4231円。また、ピストン交換の際に同時に換えることがあるピストンリング(通称リング)は7238円。ピストンリング交換ではエンジンのパワーアップが望める。
 

 
 たまにある表現で「上回りを点検します」と言ったらヘッド回りの確認。シリンダーの上にあるパーツのヘッドは、その中にカムやバルブやバルブスプリング(通称バネ)などを内包する。ヘッドだけを交換する場合もあるし、その中のパーツごと交換する場合もある。ヘッドの交換だけでもエンジンが良くなったり、そうでなかったりする。ヘッド自体は21万7059円。カムは1万7649円。
 
 ガソリンと空気を混合するパーツとしてキャブレター(通称キャブ)がある。これの交換によってエンジン状態が変わる場合はそう多くないが、たまに影響を与える場合もある。1万4306円。
 
 落車した後や、ドドドが直らない時に交換する可能性があるのはフレーム関係やフォーク。フレームの三角が7万9200円。上バックが1万5840円。下バックが2万7720円。フォーク各種3万8720円。
 
 最後に選手が最も購入する機会が多いのがタイヤ。同じ材料、同じ工程で作られるものだが、製造時期によって性能に差があったりする。これが1本1万516円。選手によって購入本数はまちまちだが、有力選手になってくるとひと月に10本程度購入する選手もいる。
 
 パーツによって値段は違うが、どれも安価ではない。選手たちは自身が思うようなエンジンを作るためにいろいろなものをかけている。レースで最高の結果を残すために。
 
(文・高橋)

 

2月を振り返って

2024年03月08日

 2月の出来事

 【最多勝利記録更新】
 2月の月始め、とんでもない偉業のニュースが飛び込んできた。高橋貢(伊勢崎22期)がオートレース最多勝利記録を更新した。2月2日時点で1,637勝を達成。それまでは山陽の元オートレーサー・小林啓二の1,636勝が通算勝利数で最高記録だった。それを抜いての通算1位。2月1日までの成績では以下、3位に岩田行雄(伊勢崎15期)が1,592勝。4位に秋田敬吾(山陽5期・引退選手)で1,557勝、5位に鈴木辰己(浜松13期)で1,525勝が入っていた。
 
 高橋貢「勝てて数字を見ると、大変な数字になる。長いことやったんだなという実感が大きいのと、ほっとしたと言うか、でも、あまり意識はしていなかった。1,637回、お客さんの期待に応えた数字。お客さんに感謝ですね。後から伸ばしてくる選手のモチベーションになるためにも、より、数字を伸ばしていきたい」とのコメントを残した。
 
 小林啓二が1,636勝を達成したのが64歳の時。高橋貢は52歳での記録更新なので、高橋貢の偉才さがより際立つ。レースで勝つためにあらゆる技術を身に付けているが、その中でも特に雨を全く苦にしない点は、通算勝利数を伸ばせる大きな要因。オートレースは良走路だけでなく、重走路でも競争しなければならない。


 【オート界初の昼夜同日開催】


 5日から7日の川口オートで、同じ日程で昼と夜に2つの開催が行われた。昼間は8車立てで全12R制。夜は7車立てで全8R制。昼間に出場した選手の中から56人が夜もレースをすることになった。同じレース場で1日に20R楽しめる企画は、おおいに関心が寄せられた。結果的には降雪のため、初日の昼間5R以降が中止。初日の夜も、2日目の昼も夜も開催中止になってしまった。3日目は開催可能で、昼間開催は中村雅人、夜開催は加賀谷建明の優勝で終わった。この企画は3月17日から3日間の日程で、同じ試みが行われる。
 
 【オートレース38期選手候補生の合格者決定】
 38期選手候補生が決定し、4月中旬からオートレース選手養成所に入所することが決まった。応募者数361名に対し合格者は20名(男子16名、女子4名)。競争倍率は18.1倍だった。約9ヶ月の養成期間を経て、2025年の1月にデビューする予定だ。
 
 【新人オートレーサー・浅倉樹良が記録ずくめの優勝】

 15日、伊勢崎オートで浅倉樹良(伊勢崎37期)がオートレース史上デビュー最速優勝を達成。デビュー後22日目の優勝は、青山周平が持っていたデビュー後35日目の記録を大きく上回った。また、デビューから10連勝を達成。今年デビューした37期の中でも最速での優勝となった。
 浅倉樹良「素直に嬉しいです。レース道中は、後ろの森村亮選手のエンジン音が聞こえていて、近い距離にいると思ったので、ミスをしないよう走りました。これからもたくさん頑張り、次節も優勝したいと思います」とコメントし、結果的にこれは有言実行となる。
 その後の3日間開催でもオール1着の完全優勝を達成し、2節連続での優勝。そしてデビュー13連勝を決め、青山周平が持っていたデビュー12連勝の記録をも更新してみせた。

文/高橋

 

2023年オートレース選手表彰式

2024年03月01日

 
 2月27日、2023年オートレース選手表彰式が東京都内のホテルで行われた。
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 最優秀選手賞(MVP)には青山周平(伊勢崎31期)が選ばれた。青山はSGオートレースグランプリ、SG日本選手権オートレース、SGスーパースター王座決定戦で優勝し、更に賞金王、年間最多勝利となる97勝を挙げるなど文句のない成績を収めた。これで最優秀選手賞は2年ぶり4度目の獲得となった。
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 青山周平「昨年は想像を超える成績を収められました。まあ、勝利数は、出走回数も増えていますし」と謙そんしていたが、年間勝利数は過去最多。大みそ日のスーパースター王座決定戦を制した後は「(家に帰ってから)奥さんのヒレカツを食べました。(開催中は)食事を制限しているし、苦しい苦しい開催が終わって、家に帰った時のご飯はもの凄くおいしかったです」と昨年最後の食事は最高のごちそうになった。若手の活躍については「スピードある、若さ溢れる走りが目立っているので本当に刺激になります」といい方に作用している様子。今年については「いつも通り、目の前の1走1走を全力で挑めるように頑張りたいと思います」と締めた。
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 優秀選手賞は鈴木圭一郎(浜松32期)、黒川京介(川口33期)、佐藤摩弥(川口31期)の3名が受賞した。4度目の受賞となる鈴木圭一郎はSG全日本選抜オートレース、SGオールスターオートレース、G1ゴールデンレース、G1開設記念レースなどで優勝。十分な成績を残したが「とても嬉しいんですけど、悔しいって方が大きいです。やっぱり、もう一つ上のMVPっていうのが存在するので、それを取れなかったのはとても悔しいです」と、優秀選手賞受賞にも複雑な心境を吐露した。やはり、トップレベルの選手は目指すところが違う。今年の目標は「昨年はケガをしてしまったので、ケガなくあっ旋されたレースは全て走り切りたいなと思っています。そして、今年はMVPを取れるように精一杯頑張りますので、応援よろしくお願いいたします」と決意を表明した。
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 黒川京介は初受賞。SGスーパースター王座決定戦で3着、SGオートレースグランプリでは準優勝、G2を2つ優勝するなどの活躍が評価された。「新人賞以来、初めて来れたので、頑張ってやってこれて良かったなと思っています。苦しい時期もありましたし、いい時期も長く続いたってのもあって、嬉しい気持ちも悔しい気持ちも、いろんなことが経験できた1年だったと思います」と1年を振り返り「いい状態が続いているので、来年も優秀選手賞に呼ばれるように、また、もう一個上を目指して1年間頑張ります」と力強く述べた。
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 佐藤摩弥は「特別賞は何度かいただいていたんですけど、優秀選手賞は今回が初めてなのですごく嬉しいです」と女子レーサー史上初のG1優勝や、SGオールスターオートレース準優勝などが評価された。SG優勝へ向けての話題になると「(G1)キューポラ取る前も、ファンの方にはSG取れるよって言ってもらったりしてたんですけど、優勝戦に乗れても優勝争いするところまではいけなくて、その前にG1と思っていたので、その段階は踏めたかなと思うんですけど。じゃあ次はSGってなると、まだまだ実力が足りないと思っているので、早くSG取りたいって言えるようになりたいですね」と謙虚さの中にもほのかに燃える闘志を感じさせてくれた。
 
 最優秀新人選手賞には栗原佳祐(浜松36期)、優秀新人選手賞には吉林直都(浜松36期)が選出された。
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 栗原佳祐は36期生の中で最初に優勝。更には完全優勝を成し遂げた。「この素晴らしい会場で、このような式典に呼んでいただき、大変光栄に思っています。1年間、波は激しかったけど、いい経験ができたと思います。これからも1走1走、全力で走るので応援よろしくお願いいたします」。
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 吉林直都は優勝3回で、36期の中では最多優勝回数。「そんなに大きなミスをしないタイプではあるので、まずは試走から、きょうの吉林はどうかなと見ていただければと思います」とアピールポイントを語っていた。
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 表彰式 上村.jpg 通算勝利記録選手賞は1着1500回で篠崎実(川口9期)と鈴木辰己(浜松13期)、1000回で上村敏明(浜松7期)が受賞した。篠崎実は公営競技界最年長優勝(73歳10ヶ月29日)も達成した。3者ともすでに70歳を越えるレジェンドレーサー。元気一杯の走りは同年代のファンにも希望を与えるはず。
 
 文/高橋

 

年別獲得賞金1位選手から考察

2024年02月22日

 平成の終わりから令和にかけて賞金王争ってるのは鈴木圭一郎と青山周平の2名のみ。令和の年号は6年目に突入。令和4年の賞金1位は鈴木圭一郎だったが、昨年は青山周平がトップの座を奪い返した。これで令和に入って4度目の賞金王と勢いは止まらない。

 賞金王を獲るのは並大抵のことではない。SG優勝は無論のこと、開催・天候・ハンデに関係なく常に後半(準決・優勝戦)のレースに進まなければならず、さらに濡れ走路も克服しないと上位には行けないということだ。

 昭和~平成にかけては『ミスターオート・飯塚将光』、『船橋四天王・島田信廣』の名前が多々挙がる。かつての船橋オートを常に牽引してきた選手。平成元年は飯塚将光の賞金王で幕を開けた。意外なのは『セアの申し子・片平巧』が平成6年と7年の2度しか賞金王獲ってない事実。その片平巧と同じ誕生日(6月14日)の『絶対王者・高橋貢』は平成9年に賞金王となってから7度の栄冠をものにし、オート史上最高獲得賞金額1億4812万4255円(平成16年)を樹立。これはいまだに破られてない。

 川口オートでは広瀬登喜夫(森且行の師匠)が昭和44年に賞金王となり、阿部光雄や且元滋紀らが続く。驚くべきは昭和51年に1度だけ賞金王になっている『弾丸ミッキー・篠崎実』が現在も記念レースで活躍しており、まことに頭が下がる。御年75歳なのに...。他には平成15年に久門徹、18年に田中茂、19年に山田真弘、22年に有吉辰也がそれぞれ1度。ちなみに記録が残ってる初代の賞金王は昭和41年の稲垣国光。

 青山周平・鈴木圭一郎の2強へ割って入る選手が早く出てきて欲しい。それが、オートレースの未来を明るくすることは間違いない。

(文/中村)

 

1月を振り返って

2024年02月16日

 1月の出来事 

  
 今年の優勝戦第一弾を制したのは吉原恭佑。約4年半ぶりで久しぶりの優勝となったが、実力的には1年に何度優勝してもおかしくないモノを持っている。スタートは枠ナリにしっかり出て行けるし、エンジンが仕上がれば攻めの方も鋭さを増す。スピードも十分あるので縦長の展開になっても追って行ける。どちらかと言うとゴチャ付く展開の方が得意。混戦になればなるほど吉原は存在感を示すことができる。
 
 9日の飯塚ミッドナイトと15日の飯塚ナイターで連続優勝したのは別府敬剛。その後の開催でも優出していたし、月末の開催では準決でフライングしたものの全3走してオール1着。1月に最も活躍した一人に挙げられる。ハンデは最重ハンだが、全国ランクがA級55位なので内枠に置かれることが多い。スタートで枠ナリ発進をキープできればレース展開もそこまで苦しくない。
 
 昨年末は苦しんだ印象のある佐藤摩弥だが、新年になってからは2節目でいきなり優勝。その後の浜松GⅠでも優出し3着に食い込んでみせた。悪い流れは完全に軌道修正できている。金子大輔も1月は活躍が目立った。お正月開催の川口で完全優勝を達成すると、その後も好走を連発。1月は全15走して1着10回、4着以下は1回と抜群の安定感を誇っていた。本人が課題に挙げていたスタートも良化の兆しが出ており、それが好成績につながっている様子。
 
 1月には記念レースが2度行われたが、伊勢崎のGⅠシルクカップは青山周平が制し、浜松のGⅠスピード王は鈴木圭一郎が制した。どちらも地元の選手がきっちりと結果を出した。今のオート界のツートップは今年も上々の滑り出し。この2人が中心になってオート界が回っていく。
 
 また、各地で新人・37期のデビューが相次いだ。この37期生は粒ぞろいとの前評判があったが、それに違わぬ快走が何度も見られた。特に注目なのは伊勢崎の浅倉樹良と飯塚の福岡鷹、それに浜松の森下輝だ。養成所で最優秀賞を受賞した浅倉は、デビュー戦で3秒445のタイムを出し快勝。それを含め4連勝でデビュー節を走り抜けた。その節での最高時計は3日目に出した上がり3秒426。大物感を存分に示してみせた。
 
 その浅倉を上回るタイムを出したのが福岡。デビュー節は全3走してオール1着だったが、最終日には上がり3秒397の強烈なタイムを叩き出した。この時はナイター開催で走路温度が低かったため、タイムが出やすい状況ではあったが、それでもデビュー節でこの数字はなかなか出せない。森下はデビュー節で3走して、やはりオール1着。最終日に出した上がり3秒435が最高タイム。この3者が37期を引っ張っていく存在になるか。
 
 14日に山陽ミッドナイトで泉田修佑、18日に飯塚ミッドナイトで吉松優輝、19日に山陽ナイターで角翔太郎が優勝しており、33期生もまだまだ成長盛り。37期や36期の後輩たちからの突き上げに負けじと頑張っている。

 文/高橋

 

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