「当たりタイヤ」とタイヤマネージメント

2024年08月02日

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 選手がコメントで良く口にする「当たりタイヤ」とは...。「食いつきが良くて滑らない」「ドドドが全くこない」「コーナーの掛かりがいい」。「タイムがケタ違いに出る」などなど。選手の技量とエンジンのポテンシャルを存分に発揮できる魔法のタイヤ。

 ただ、そんな「当たりタイヤ」は選手が、レースで使用してみた体感で初めて分かるもの。しかも、最初からタイヤメーカーが意図的に「当たりタイヤ」が作っているという訳ではなく、タイヤが製造された時に偶然、程度のいい個体ができてくるそうなのだ。

 レースというシビアな条件で1000分の1秒を競っているのだから、ほんの少しの食いつきの良さ、個体差が「当たりタイヤ」の正体となる。

 タイヤには市販の物と同様にロット番号が「50」や「51」と白字で印刷されている。これは1年のうちの第50週目または51週目に製造されたという事。1年が約52週なので、「50」「51」は12月くらいに作られたタイヤという事になります。

 レース後、1着やいい走りをした選手のところには、仲のいい選手が、「何番(のタイヤ)使ったの?」と聞いてきます。「51だよ」という会話がされて、選手間であっという間に「51はいいらしい(当たりタイヤ)」と評判が広がっていきます。

 「当たりタイヤ」の番号が分かったからと言って、あとから追加注文はできません。タイヤの購入は1~2ヵ月前に、1ヵ月単位で希望の注文数を表に書き込んでいく(おそらく受注生産のような形)ので、同じ品質の物を後から買うことはできないのです。


 選手は個人事業主のようなもので、タイヤを何本購入するかは人それぞれ。SG常連のトップレーサーになると1ヵ月に20本近く買う選手もいるとか。ただし、1本約1万円するタイヤを気軽にはポンポンとは買えません。選手の中には、「冬場に作られたタイヤが当たりが多いから冬は多めに注文する」という方もいます。

 どんなタイミングで「当たりタイヤ」が登場するか分からないため、「当たりタイヤ」の使いどころを考えなければなりません。タイヤマネージメントも重要になってきます。

 タイヤが最も威力を発揮できるのは、当たりをつけてから2~3走と言われてます。選手によりますが、「一番大事な準決、決勝で使用したい」と思うのが人情。予選の最中は、「当たりタイヤとは言えないがそれに次ぐもの」を使ったりします。選手のコメントで「勝負タイヤ(当たりタイヤ)で行ったけど、明日も同じもので行く」という話があった場合は、翌日もタイヤ面ではいいパフォーマンスが期待できるので注目です。
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文)金子

 

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