金沢競馬の魅力再発見!石川優駿観戦記とおすすめスポット

2024年06月28日

こんにちはオッズパーク編集部です。
6月9日(日)に金沢競馬で行われた『石川優駿』を見に、金沢競馬場を訪れました。


■石川ダービーから石川優駿へ
『石川優駿』と言えば、金沢競馬3歳有力馬のいわば頂上決戦の一つ。

昨年まで石川ダービーとしてダービーシリーズの一角を担ってきましたが、
ダート再編の中、今年度からは新たに石川優駿としての歴史が始まりました。

1着賞金も700万円から1,000万円に増加するなど、
これまで以上に競馬ファン、関係者からの注目を集める金沢競馬の看板レースの一つとなっています。

今回はレース当日の様子を、場内の注目スポットの案内と合わせてお伝えいたします。


■金沢競馬場内案内



【パドック】
レトロ感のあるパドック。木製の出馬表には歴史も味もあります。間近で出走馬が見れるパドックにはファンの皆様の鋭い視線が集まります。



【充実の競馬場グルメ】
・金沢競馬名物の一つ金澤玉寿司
 金沢競馬と言えば、玉寿司!競馬場で本格的なお寿司がいただけます。



・場内には軽食や色々なジャンルの定食が楽しめる食堂がそろっています。


【芝生ひろば】
お子様たちが楽しめる芝生広場。ここはなんと金沢競馬レースコースの内にあります。
遊具もたくさんあり、のびのび遊べる穴場スポットとして、お子様連れのお客様にも親しまれています。
馬を見ながらお子様たちも楽しく遊べる注目のスポットです。



■勝負の行方・・・レコード更新のスピード勝負を制したのは、、、、
3歳最強馬決定戦、注目は1番人気4月の北日本新聞杯制し、さらには吉原騎手が騎乗となり注目を集めたリケアマロンと金沢移籍後、3連勝と調子と勢いを強める2番人気のナミダノキスの人気2頭。

レース展開は、3コーナーで先頭にたって、そのまま逃げ切りを狙うリケアマロンと、積極的に追うナミダノキスの戦いに。最終直線で迫力ある競り合いを見事に制したナミダノキスの勝利!

レースタイムもそれまでの石川ダービーのレコードを上回る2:08.8とスピード決着となりました。

レースを制した柴田勇真騎手は、これで重賞通算2勝目

JBC金沢開催の年に新たに設置されたウィナーズサークル
重賞レース開催日には目の前で重賞勝利馬と騎手の雄姿を見ることができます!
(写真はナミダノキスと柴田騎手、関係各位の口取り写真)


■石川県競馬事業局 篠川様からのコメント
『金沢競馬場は河北潟に隣接し、周りは美しい田園地帯が広がる自然豊かな環境の中にあります。
カウンターの職人が実際に握ってくれるお寿司をはじめ場内グルメはどの店もオススメです。
金沢駅からは無料ファンバスも出ておりますので、金沢へお越しになる際はぜひお立ちよりください!』



7月以降も年内16本もの重賞レースが予定されている金沢競馬。 9月23日には注目の白山大賞典(JpnIII)も行われます。 そして、7月28日(日)・30日(火)、8月5日(月)・6日(火)には初のナイター開催も行われます。

本格的な夏がいよいよ始まろうとしています。
ぜひ、今年の夏も金沢の熱いレースを一緒に楽しみましょう!

 

デビュー3カ月の新人騎手たち

2024年06月26日

 新人騎手がデビューして3カ月近くが過ぎた。4月付で今年地方競馬から新たに騎手免許を受けてデビューしたのは14名。そのうちオッズパーク対象競馬場からデビューしたのは8名(以下、成績・年齢等はすべて6月24日現在、写真はすべてNAR提供)。
 
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 ここまで220戦21勝、2着24回と、もっとも多く勝利を挙げているのが名古屋の望月洵輝(もちづき・じゅんき)騎手(17歳)。北海道や南関東からデビューした騎手を含めても最多の勝ち星をマークしている。初勝利はデビュー2日目の4月10日名古屋第5レースで11戦目。その日はいきなり2勝目も挙げ、14名の新人騎手で初勝利は一番乗りだった。
 その活躍からすでに重賞に騎乗するチャンスも得た。6月13日のトリトン争覇では重賞6勝の実績馬ナムラマホーホに騎乗して9着だった。
 たしかに220戦と騎乗数も多いが、勝率9.5%、連対率20.5%は新人騎手としては立派な数字といえる。
 テレビで競馬を見て小学5年から騎手を目指し乗馬を始めた。勝負服の黄色のダイヤは、名前の"月が輝く"からのイメージだという。
 
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 次いで10勝(129戦)を挙げているのが笠松の明星晴大(みょうじょう・せいだい)騎手(17歳)。愛媛県出身で父は松山所属の競輪選手。父と同じように公営競技の選手になりたいと思っていたところ、小柄で細身の体形でもあり、中学のときに初めて高知競馬場に行ったことで刺激を受け騎手を目指した。勝負服は、名字の"明るい星"から黄色の星散らしにしたとのこと。
 4月1日にデビューし、初勝利は4月18日でデビューから19戦目。4月30日には笠松メインのヒロインカップ(3歳牝馬特別)でキテヤイヨジに騎乗し、4コーナー先頭の1番人気馬キスリングを直線半ばで内から交わして1馬身半差をつける快勝。6番人気での勝利だった。そのキテヤイヨジでは6月6日の重賞・クイーンカップにも騎乗(9着)した。
 6月18日から21日の4日間開催では3勝。それぞれ、3番人気、2番人気、1番人気での勝利で、有力馬への騎乗依頼という信頼も得ての活躍だ。
 
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 高知競馬で4月6日にデビューした城野慈尚(しろの・ちかなお)騎手(18歳)の初勝利は4月20日で、デビューから29戦目。今や全国の競馬ファンから注目を集める、一発逆転ファイナルレースを6番人気で逃げ切っての初勝利は印象的だった。
 実家は徳島県のお寺。中学2年のとき家族旅行で高知競馬場を訪れ、その迫力に感動して騎手を目指した。
 6月9日には1日2勝を挙げ、ここまで130戦8勝、2着8回と、確実に勝ち星を重ねている。
 
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 一挙4名がデビューした兵庫で、ここまで最多勝は、85戦8勝、2着10回の土方颯太(ひじかた・そうた)騎手(17歳)。勝率9.4%、連対率21.2%は優秀な成績だ。
 小学6年までは野球をやっていたが、体が小さかったこともあって大きな打球が打てず、結果がでなかった。そこで父から体が小さくても活躍できる騎手という職業があると教えられ騎手を目指したという。
 4月16日にデビューし、初勝利は11戦目となった4月23日。5月30日には1日2勝を挙げる活躍があったが、調教中に負傷し6月以降騎乗を休んでいる。
 
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 新庄海誠(しんじょう・かいせい)騎手(23歳)が初勝利を挙げたのはデビューから約1カ月後の5月17日で48戦目。兵庫デビューの4名ではもっとも遅い初勝利だったが、5月には初勝利も含めて2勝、そして6月には5勝と、勝ち星を着実に積み重ねている。
 実家の近くが園田競馬場で、小さい頃から父に連れられて行き、中学を卒業してすぐに地方競馬教養センターに入所。しかし「つらかった」ということで1カ月ほどで退所。その後、厩務員を5年経験。騎手の道を諦めきれず、20歳になった年にあらためて教養センターに入所して訓練を受け、22歳で騎手デビューを叶えた。勝負服のデザインは、名前(誠)の由来でもある新選組の羽織を模したもの。
 
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 兵庫の4名で初勝利一番乗りは、高橋愛叶(たかはし・まなと)騎手(18歳)で、デビューした4月16日の当日、3戦目で初勝利を挙げた。
 実家が兵庫県で、父に連れて行かれた園田競馬場でレースを見て騎手を目指した。勝負服の『白、胴緑二本輪、そで緑一本輪』は、競馬を見始めたころに好きだった中央のキセキの勝負服に"そで緑一本輪"を足したもの。
 6月21日にようやく2勝目を挙げたが、2着4回、3着7回と惜しい着順もあるだけに、今後の奮起に期待したいところ。
 
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 兵庫デビューでは佐々木世麗騎手に続いて2人目の女性騎手が、塩津璃菜(しおつ・りな)騎手(19歳)。
 実家は岡山県だが、小学4年のときにテレビで競馬を見て乗馬クラブに通い始めたという。未熟児として産まれ身体が弱かったことからさまざまなスポーツを経験してきたことが騎手になることにも生かされたようだ。勝負服は、岡山は桃が有名なので桃色を使ったとのこと。
 4月16日のデビュー戦で騎乗したのは、キャリア300戦を超える16歳馬。初勝利は4月23日でデビュー13戦目。前走を下原騎手で勝ったフィオリーナという4歳牝馬で2番人気の支持を受け、820m戦を一気に逃げ切り1番人気馬に4馬身差をつける圧勝だった。
 
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 東京都出身ながら岩手からデビューしたのが坂井瑛音(さかい・えいと)騎手(17歳)。
 夢は野球選手だったが体格的に難しいと悩んでいたところ、競馬ファンだった父の影響で騎手を目指し乗馬クラブに通い始めた。勝負服は、所属する菅原勲調教師の騎手時代の勝負服と同じ青を基調にした。
 初勝利は4月22日の水沢で、4月7日の初騎乗から26戦目。そして5月27日の盛岡で2勝目を挙げている。
 「菅原勲調教師の(騎手時代の)記録に近づきたい」と、目標は大きい。
 
文/斎藤修

 

【私的名馬録】切磋琢磨して鍛えた強さ「テンショウボス」

2024年06月12日

07年みちのく大賞典から快進撃のテンショウボス
日本競馬界の歴史に名を刻んだ名馬・競馬ファンの記憶に残る名馬の活躍を競馬ライターたちが振り返る私的名馬録。


今回のテーマは─


同世代のライバル。
私はBNW(ビワハヤヒデ、ナリタタイシン、ウイニングチケット)の三強世代に競馬を覚えたこともあり、同じ世代の強豪同士がしのぎを削り合う姿を想像するとちょっと胸が躍る。


岩手の同世代のライバル......というとファンの方それぞれに思い入れある馬がいるのだろうが、自分は2006年の"三強"を挙げてみたい。
オウシュウクラウン、サイレントエクセル、テンショウボス。
06年の岩手ダービーダイヤモンドカップで1着から3着を占めたこの3頭のそれぞれの戦いぶりは、今でも自分の心の中に"同じ世代に強いライバルがいる重要性"を投げかけてくれるように思う。


2歳から3歳にかけては、もしかしたら"2強+1"だったかもしれない。
オウシュウクラウンはジャパンダートダービーGIで3着に、サイレントエクセルはダービーグランプリGIで3着に食い込んで見せた。
テンショウボスはしかし、まだそこまでの実績がなかった。


3頭が揃って出走した06年桐花賞の単勝オッズが当時の評価を端的に示している。
ライバル2頭が単勝ひと桁台の1、2番人気に支持された一方でテンショウボスは離れた6番人気。
そしてレースを制したのはオウシュウクラウン。
テンショウボスは僅差に健闘したものの4着。
当時としては、そう、"2強+1"の立ち位置だったと言うべきなのだろう。


だが4歳になってスポットライトが当たり始めたのはテンショウボスだった。
オウシュウクラウンは古馬になって伸び悩み、結果的にその桐花賞がキャリア最後の勝利となった。
サイレントエクセルは牝馬戦線で活躍し続けたが、4歳9月の青藍賞で勝って以降テンショウボスに先着できなくなった。
テンショウボスは、07年の一條記念みちのく大賞典を勝つと、マーキュリーカップJpnIII・4着、クラスターカップJpnIII・3着に入着。
冬には北上川大賞典、桐花賞も制した。
同一シーズンにこの3つの根幹競走を制した馬はトウケイニセイ以来でありその後は登場していない......といえばどれほどの快挙か分かっていただけるだろうか。
07年のシーズンを終えて世代トップの座に就いていたのはテンショウボスだった。


当時同馬を担当していた田嶋厩務員が「馬が180度変わった」と評したのは3歳秋のこと。
馬自身の素質の開花だけでなく、全国レベルの戦いを見せたライバル2頭をベンチマークに切磋琢磨できたこともテンショウボスのその後の活躍につながったに違いない。
しのぎを削り合う仲間がいてこそ自分も強くなる。
"「強敵」と書いて「とも」と読む!"みたいなノリまでは言いすぎかもしれないが、しかし1頭より2頭、2頭より3頭。
互いに競い合い、互いに高めあえるライバルがいる事が、やはり理想なのだと思う。


文/横川 典視
OddsParkClub vol.67より転載

 

各地の3歳注目馬〜金沢・岩手・高知編

2024年06月05日

石川優駿は中央からの転入馬が台頭
 
 6月9日に金沢競馬場で行われるのが石川優駿。昨年までの石川ダービーは1着賞金700万円だったが、今年から1000万円に増額。昨年まで全国的にシリーズ化されていた『ダービーシリーズ』で1着賞金が1000万円に満たなかったのは石川ダービーだけで、残念ながらシリーズではなくなったものの、石川優駿も賞金的に他場の"ダービー"に追いついた。
 石川優駿トライアルでもあり、一冠目の北日本新聞杯を制したのが牝馬のリケアマロン。1番人気に支持されたリメンバーアポロが向正面で競走中止になったとはいえ、3コーナーから一騎打ちとなったダブルアタックを直線突き放して5馬身差をつけた。中央未勝利で出走した3月19日の条件交流で2着に入り、そのまま金沢に移籍。これで2連勝とした。
 ナミダノキスも中央未勝利から転入して3連勝。初戦の1400メートル戦で2着に9馬身差、2戦目の1500メートル戦では2着に2秒の大差、そして5月12日の石川優駿トライアル特別(1900メートル)では、抜群の手応えのまま3コーナーで先頭に立つと、直線突き放して2着ロックシティボーイに3馬身差。最後は流すような感じだったので着差以上に強い勝ち方だった。本番は2000メートルだが、1900メートルを経験したことはアドバンテージになりそう。
 気になるのは、2歳時にデビューから3連勝でネクストスター金沢を制した牝馬のダヴァンティ。その後半年の休養があって、復帰戦となった3月10日の3歳A1特別(1500メートル)ではダブルアタックに3馬身差をつけての快勝で4連勝としたが、名古屋に遠征したネクストスター中日本では差のある4着。続いて出走した古馬B1特別(1400メートル)は1番人気に支持されるも最下位だった。佐藤茂調教師によると「(古馬で)相手も強かったし、2番手に控えたらレースをやめてしまった」とのこと。母の父ワークフォースという血統から距離延長にあらためて期待しているようだ。
 そのほか、北日本新聞杯では2着だったものの3着馬には6馬身差をつけたダブルアタック、3歳牝馬重賞・ノトキリシマ賞を制したハリウッドスマイルなども上位を狙えそう。
 
王者不在で混戦の東北優駿
 
 岩手のこの世代にはフジユージーンという絶対的な存在が現れた。2歳時の南部駒賞では北海道の重賞勝ち馬を蹴散らし、3歳初戦となったスプリングカップ(水沢1600メートル)は2着に2.4秒の大差をつける圧勝。さらに距離延長のダイヤモンドカップ(盛岡1800メートル)ではスタートから先頭に立つと、直線では軽く気合をつけられただけで2着オオイチョウ(北海道)に4馬身差をつけ危なげなく逃げ切った。デビューから無傷の7連勝で、重賞も5連勝中。3歳の早い時期から、京浜盃JpnIIから羽田盃JpnIという新たなダート三冠への挑戦もプランとして挙げられたものの、万全を期して地元戦を使われた。そして東京ダービーJpnIの指定競走となっていたダイヤモンドカップを勝ったことで、東京ダービーJpnIへの出走も意欲を見せたが、残念がら脚部不安で回避となった。東北優駿にも出走せず、今年からJpnIIとなった不来方賞(9月3日)に向けて調整されていくようだ。
 そのダイヤモンドカップは2〜5着が他地区からの遠征馬だっただけに、フジユージーン不在となれば、6月16日の東北優駿は混戦必至。
 中1週で出走してくるかどうかだが、ミヤギヴァリアントが出走してくれば期待となりそう。ここまで5戦4勝で、唯一の敗戦は2歳7月にフジユージーンの2着。10月の若駒賞はミヤギシリウスに1.8秒の大差をつけて圧勝。その後長期休養となって3歳初戦となった6月2日の3歳B1戦(水沢1600メートル)を勝利。その勝ちタイム1分42秒1(稍重)は、フジユージーンのスプリングカップの勝ちタイム1分41秒7(良)より0秒4遅いだけということではある程度期待できそうだ。
 同日に行われた水沢1400メートルの重賞・ウイナーカップを制したのが牝馬のミヤギシリウスで、3月のあやめ賞に続いて重賞2勝目とした。最大目標はひまわり賞(8月11日)とのことで、果たしてウイナーカップから中1週で東北優駿に出てくるかどうか。
 5月19日のイーハトーブマイル(盛岡1600メートル)を制したレッドオパール、同2着でウイナーカップでも前述ミヤギシリウスの2着だったコンバットスプーンなど、牝馬の活躍が目立っている。
 
高知優駿は二冠を狙うプリフロオールイン
 
 同じく6月16日に行われる高知優駿は、早くからここを目標としてきたプリフロオールインが断然の注目となる。800メートルの2歳新馬戦こそ2着に敗れたものの、その後は7連勝。前走、5月5日の黒潮皐月賞(1400メートル)は、抜群のスタートダッシュでレースを主導すると、直線後続を突き放し、2着サノノスピードに6馬身差をつけての圧勝だった。1600メートルまでしか経験がないため、初の1900メートルでどんなレースを見せるか。
 出走してくればプリフロオールインの最大の強敵となりそうなのがシンメデージー。重賞初挑戦となった土佐春花賞(1300メートル)をデビューから5連勝で制し、園田に遠征した西日本クラシック(園田1870メートル)も勝って6戦全勝。東京ダービーJpnI出走から中10日という間隔で、しかもプリフロオールインと同じ打越勇児厩舎ということでは、果たして。
 黒潮皐月賞で完敗の2着だったサノノスピードだが、その前走、1600メートルの仙台屋桜特別ではプリフロオールインに3/4馬身差で食い下がっており、デビューした中央では芝2000メートルの経験もあるだけに、距離延びて再び迫る場面があるかどうか。
 1800メートルの準重賞・山桃特別を勝って目下4連勝というマジックセブンはここにきての充実ぶりがうかがえる。
 2月の土佐水木特別(1600メートル)でプリフロオールインに1馬身差と迫ったワンウォリアーは西日本クラシック4着から臨む。
 他地区からも、南関東で重賞上位実績があるアムクラージュライゾマティクス、名古屋・笠松で重賞3勝を挙げ、現在は兵庫所属のミトノユニヴァースなどが出走予定馬となっている。地元のプリフロオールインに対してどんなレースを見せるか。
 
文/斎藤修

 

各地の3歳注目馬〜佐賀・名古屋編

2024年05月22日

 各地で3歳戦が盛り上がる"ダービー"の季節。ただ、地方競馬の"ダービー"は今年、大きな様変わりとなった。
 地方競馬では2010年に始まった『ダービーウイーク』から『ダービーシリーズ』へ、全国の"ダービー"を連携して盛り上がってきた。しかしこの度の"ダート競馬の体系整備"の中核として南関東の三冠が今年からすべて中央と交流のJpnI格付の"ダート三冠"となったことで、ダービーシリーズは昨年まででその役割を終えた。
 それでもこの10年ほどで地方競馬は売上をV字的に回復したことで全国的に賞金が上昇。各地の"ダービー"に相当するレースは今年すべて1着賞金が1000万円を超え(ばんえいを除く)、シリーズではなくなったとはいえ注目のレースであることに変わりない。
 ただダート競馬の体系整備によって、地方競馬の"ダービー"は東京ダービーが唯一であるとして、今年から東京ダービー以外は"ダービー"を名乗ることができなくなり、いくつかの主催者では今年からレース名が変更されている。
 
栄城賞で二冠なるかウルトラノホシ
 
 今年も全国のトップを切って"ダービー"に相当するレースが行われるのは佐賀。例年どおり、5月最終日曜日の26日に行われる。
 かつて九州には佐賀競馬場のほかに、大分県の中津競馬場、熊本県の荒尾競馬場があり、『九州競馬』として連携した2001年から『九州ダービー栄城賞』として行われてきたが、前述のとおり"ダービー"の名称が使えなくなったため、2000年以前の『栄城賞』というレース名に戻った。
 ちなみに"栄城"とは佐賀城の別称で、かつて佐賀藩(鍋島藩)が"栄の国"と呼ばれていたことに由来する。
 今回の栄城賞で、まず注目となるのは、一冠目の佐賀皐月賞を制したウルトラノホシだ。2歳時はネクストスター佐賀、カペラ賞と重賞連勝のあと、全日本2歳優駿JpnI(川崎)に出走。地方馬では北海道のサントノーレ(3着)に次ぐ6着と好走した。そして3歳となり、佐賀から新たなダート三冠へ挑むべく、再び南関東に遠征。ブルーバードカップJpnIII(船橋)では地方馬最先着の4着、勝ち馬から0秒2差という健闘の走りを見せた。そして一冠目の羽田盃JpnIへの出走権を得るべく雲取賞JpnIII(大井)へも遠征。中団から位置取りを上げ、5番手で直線を向いた。前にいる地方馬は北海道のサントノーレだけ。地方馬は上位2頭に羽田盃JpnIへの優先出走権となるため、そのままゴールすれば羽田盃の切符をつかむところだった。しかしゴール寸前、船橋のフロインフォッサルにクビ差交わされ(6着)、惜しくも優先出走権は得られなかった。それでも羽田盃JpnIはフルゲートにならなかったため、「出る」と言えば出られたと思われる。しかし陣営は地元三冠に舵を切った。そして出走した佐賀皐月賞は、スタートいまいちで中団からの追走となったが、4コーナー手前で抜群の手応えのまま一気に先頭に立つと、直線では後続を寄せ付けずの完勝。栄城賞にも断然人気での出走となりそうだ。
 対するのは、佐賀皐月賞で2番人気ながら4着だったトゥールリー。2歳時は九州ジュニアチャンピオンを制し、ネクストスター佐賀、カペラ賞では、それぞれウルトラノホシの3着、2着だったが、その後6連勝。ウルトラノホシが留守になった佐賀で台頭した。園田に遠征したネクストスター西日本は高知勢が上位3着まで独占となっての6着。佐賀皐月賞は前述のとおり4着だが、2番手から3コーナー過ぎでウルトラノホシより一瞬早く先頭に立つという、勝ちに行っての結果だけに、その着順だけで見限るのは早計だ。
 飛燕賞でトゥールリーの2着、佐賀皐月賞で3着と安定して上位争いをしているのがトレベルオールで、さらなる距離延長をこなせるかどうかがカギとなりそう。
 佐賀皐月賞では10番人気ながら2着と健闘したデッドフレイもここまで4着以内を一度も外していない堅実な成績だけに、再度の好走も期待できそうだ。
 
東海優駿は混戦か
 
 名古屋の東海ダービーは、『東海優駿』と名称変更し、5月29日に行われる。
 もともと1971年の第1回から第9回まで東海優駿として行われていたが、80年の第10回から東海ダービーとなり、中央との交流となった96年からは名古屋優駿、再び地方重賞となった2005年に東海ダービーに戻り、さらに今回、東海優駿という当初のレース名に回帰することとなった。
 東海地区のこの世代は確たる主役不在の混戦。それを象徴するかのように、一冠目の駿蹄賞は、3番人気→8番人気→4番人気という波乱の決着となった。
 2番人気のミトノウォリアーは4コーナー手前で先頭に立って直線を向いたものの、失速して4着。しかしなんとそこから中5日で笠松の新緑賞に出走。2着に3馬身差をつけての快勝で、あらためて東海地区の世代トップクラスである実力を示した。東海優駿へはそこから中2週という日程で臨むことになりそうだ。
 駿蹄賞で1番人気に支持されたのはスティールアクター。ホッカイドウ競馬のシーズン終了後に転入し、重賞初挑戦の新春ペガサスカップは3着だったが、スプリングカップ、笠松・ジュニアグローリーと連勝し、移籍後6戦5勝。東海地区の三冠はこの馬が牽引するかに思われた。ところがネクストスター中日本は出走取消。前述駿蹄賞は、3番手追走から4コーナーでは抜群の手応えで前をとらえにかかったように見えたが直線ばったりで7着。同厩舎のミトノウォリアー同様、中5日で笠松・新緑賞にエントリーしたものの競走除外となった。順調には使えていないようなので、東海優駿は果たしてどうか。
 そして駿蹄賞を6馬身差で圧勝したのがフークピグマリオン。中団から3コーナー過ぎでまくって出ると、直線で突き抜けた。2歳時にはゴールドウィング賞を制し、前走ネクストスター中日本からの連勝で重賞3勝目。新春ペガサスカップは2着、スプリングカップはスティールアクターの3着だったが、後半末脚勝負というタイプだけに展開に左右される面はありそう。ただ長く脚を使えるだけに距離延長はいいはず。駿蹄賞のレースぶりから、東海優駿では人気の中心になりそうだ。
 笠松所属馬では、2歳時にデビューから5連勝でネクストスター笠松を制した牝馬のワラシベチョウジャが期待となりそう。その後は勝ちきれないレースが続いたが、新緑賞でミトノウォリーアに3馬身差2着と復活の兆しを見せた。
 
文/斎藤修

 

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