地方競馬ドキドキコラム

各地の3歳注目馬〜佐賀・名古屋編

2024年05月22日

 各地で3歳戦が盛り上がる"ダービー"の季節。ただ、地方競馬の"ダービー"は今年、大きな様変わりとなった。
 地方競馬では2010年に始まった『ダービーウイーク』から『ダービーシリーズ』へ、全国の"ダービー"を連携して盛り上がってきた。しかしこの度の"ダート競馬の体系整備"の中核として南関東の三冠が今年からすべて中央と交流のJpnI格付の"ダート三冠"となったことで、ダービーシリーズは昨年まででその役割を終えた。
 それでもこの10年ほどで地方競馬は売上をV字的に回復したことで全国的に賞金が上昇。各地の"ダービー"に相当するレースは今年すべて1着賞金が1000万円を超え(ばんえいを除く)、シリーズではなくなったとはいえ注目のレースであることに変わりない。
 ただダート競馬の体系整備によって、地方競馬の"ダービー"は東京ダービーが唯一であるとして、今年から東京ダービー以外は"ダービー"を名乗ることができなくなり、いくつかの主催者では今年からレース名が変更されている。
 
栄城賞で二冠なるかウルトラノホシ
 
 今年も全国のトップを切って"ダービー"に相当するレースが行われるのは佐賀。例年どおり、5月最終日曜日の26日に行われる。
 かつて九州には佐賀競馬場のほかに、大分県の中津競馬場、熊本県の荒尾競馬場があり、『九州競馬』として連携した2001年から『九州ダービー栄城賞』として行われてきたが、前述のとおり"ダービー"の名称が使えなくなったため、2000年以前の『栄城賞』というレース名に戻った。
 ちなみに"栄城"とは佐賀城の別称で、かつて佐賀藩(鍋島藩)が"栄の国"と呼ばれていたことに由来する。
 今回の栄城賞で、まず注目となるのは、一冠目の佐賀皐月賞を制したウルトラノホシだ。2歳時はネクストスター佐賀、カペラ賞と重賞連勝のあと、全日本2歳優駿JpnI(川崎)に出走。地方馬では北海道のサントノーレ(3着)に次ぐ6着と好走した。そして3歳となり、佐賀から新たなダート三冠へ挑むべく、再び南関東に遠征。ブルーバードカップJpnIII(船橋)では地方馬最先着の4着、勝ち馬から0秒2差という健闘の走りを見せた。そして一冠目の羽田盃JpnIへの出走権を得るべく雲取賞JpnIII(大井)へも遠征。中団から位置取りを上げ、5番手で直線を向いた。前にいる地方馬は北海道のサントノーレだけ。地方馬は上位2頭に羽田盃JpnIへの優先出走権となるため、そのままゴールすれば羽田盃の切符をつかむところだった。しかしゴール寸前、船橋のフロインフォッサルにクビ差交わされ(6着)、惜しくも優先出走権は得られなかった。それでも羽田盃JpnIはフルゲートにならなかったため、「出る」と言えば出られたと思われる。しかし陣営は地元三冠に舵を切った。そして出走した佐賀皐月賞は、スタートいまいちで中団からの追走となったが、4コーナー手前で抜群の手応えのまま一気に先頭に立つと、直線では後続を寄せ付けずの完勝。栄城賞にも断然人気での出走となりそうだ。
 対するのは、佐賀皐月賞で2番人気ながら4着だったトゥールリー。2歳時は九州ジュニアチャンピオンを制し、ネクストスター佐賀、カペラ賞では、それぞれウルトラノホシの3着、2着だったが、その後6連勝。ウルトラノホシが留守になった佐賀で台頭した。園田に遠征したネクストスター西日本は高知勢が上位3着まで独占となっての6着。佐賀皐月賞は前述のとおり4着だが、2番手から3コーナー過ぎでウルトラノホシより一瞬早く先頭に立つという、勝ちに行っての結果だけに、その着順だけで見限るのは早計だ。
 飛燕賞でトゥールリーの2着、佐賀皐月賞で3着と安定して上位争いをしているのがトレベルオールで、さらなる距離延長をこなせるかどうかがカギとなりそう。
 佐賀皐月賞では10番人気ながら2着と健闘したデッドフレイもここまで4着以内を一度も外していない堅実な成績だけに、再度の好走も期待できそうだ。
 
東海優駿は混戦か
 
 名古屋の東海ダービーは、『東海優駿』と名称変更し、5月29日に行われる。
 もともと1971年の第1回から第9回まで東海優駿として行われていたが、80年の第10回から東海ダービーとなり、中央との交流となった96年からは名古屋優駿、再び地方重賞となった2005年に東海ダービーに戻り、さらに今回、東海優駿という当初のレース名に回帰することとなった。
 東海地区のこの世代は確たる主役不在の混戦。それを象徴するかのように、一冠目の駿蹄賞は、3番人気→8番人気→4番人気という波乱の決着となった。
 2番人気のミトノウォリアーは4コーナー手前で先頭に立って直線を向いたものの、失速して4着。しかしなんとそこから中5日で笠松の新緑賞に出走。2着に3馬身差をつけての快勝で、あらためて東海地区の世代トップクラスである実力を示した。東海優駿へはそこから中2週という日程で臨むことになりそうだ。
 駿蹄賞で1番人気に支持されたのはスティールアクター。ホッカイドウ競馬のシーズン終了後に転入し、重賞初挑戦の新春ペガサスカップは3着だったが、スプリングカップ、笠松・ジュニアグローリーと連勝し、移籍後6戦5勝。東海地区の三冠はこの馬が牽引するかに思われた。ところがネクストスター中日本は出走取消。前述駿蹄賞は、3番手追走から4コーナーでは抜群の手応えで前をとらえにかかったように見えたが直線ばったりで7着。同厩舎のミトノウォリアー同様、中5日で笠松・新緑賞にエントリーしたものの競走除外となった。順調には使えていないようなので、東海優駿は果たしてどうか。
 そして駿蹄賞を6馬身差で圧勝したのがフークピグマリオン。中団から3コーナー過ぎでまくって出ると、直線で突き抜けた。2歳時にはゴールドウィング賞を制し、前走ネクストスター中日本からの連勝で重賞3勝目。新春ペガサスカップは2着、スプリングカップはスティールアクターの3着だったが、後半末脚勝負というタイプだけに展開に左右される面はありそう。ただ長く脚を使えるだけに距離延長はいいはず。駿蹄賞のレースぶりから、東海優駿では人気の中心になりそうだ。
 笠松所属馬では、2歳時にデビューから5連勝でネクストスター笠松を制した牝馬のワラシベチョウジャが期待となりそう。その後は勝ちきれないレースが続いたが、新緑賞でミトノウォリーアに3馬身差2着と復活の兆しを見せた。
 
文/斎藤修

 

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