「オートレース スマートリレー」って何?

2025年04月25日

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 4月24日~29日、新年度一発目のSG開催「第44回オールスター・オートレース」が絶賛開催中だが、先日JKAから「オートレース スマートリレー」なるものが発表された。

 6月11日~7月13日の期間、デイ、ナイター、ミッドナイト開催において、発走時間帯が重ならない、「オートレース スマートリレー」を試行的に実施するとのこと。 この開催はレース数を11R制で実施し、デイ開催・ナイター開催においては8車立て、浜松アーリーレース、川口ナイトレース、飯塚・山陽ミッドナイトオートレース においては、7車立てで行う。

 実際に始まってみないと何とも言えないが、オートレース大好きな方にはたまらない企画だと思う。発表の日程では1日・11R+11R+8R=30R(記念レース絡みだと更に1R増える?)も楽しめることになる。

《メリット》

 今まで8Rないし、9Rで行われてる別枠開催(浜松アーリーレース、川口ナイトレース、飯塚・山陽ミッドナイトオートレース・現時点では伊勢崎アフター5ナイターは含まれず)
を11R制にすることで1日の売り上げは上がり、オートレースの総売り上げも上がる。

 デイレース(10R~12R)とナイター(1R~3R)などで時間帯が重なってた部分がなくなり、迷うことなく車券を買えるようになる(今まではどちらを買うか、はたまた両方買うか、買わないで悩んでしまう)。

 レースとレースの時間が詰まるので(おそらく)間延びしないで次のレースに集中できる。(反面、あわただしいというデメリットも)

 12R制の開催が11R制になることで選手のあっせん総数が減り車立てを確保しやすくなる。

《デメリット》

 ファンの皆様の購入金額は限られてるので、1日のレース総数が増えるぶん1レースに費やす金額が減る(かも)。

 レースとレースの時間が詰まってあわただしくなる(上記のとおり)。
 デイ、ナイター以外の開催は11R制になることで選手の総数が増えて車立ての確保が重要になる。(2回乗りもありそう)

 事故レースや悪天候などで発走時間のズレが生じることは考えられる。

《総評》

  現在は全国で5場しかないオートレース場。選手全体の数も年々増えてるのだが、これだけ開催日程が増えるとあっせんする側もされる側も大忙しだ。あくまで『試行的に』の前置きはあるが、将来的には「当たり前」に開催されるのだろうか。

  公営競技としてのオートレースは規模でも、売上でも他の競技に遅れをとってるが、時代の流れでインターネット購入が主流になり、レース場の入場が減ってるのも事実。ゆえにレース数を密にして、できるだけ車券を買ってくださいのメッセージなのだが、ファンの皆様の投票がなければレースは成り立たず、選手の賞金にも影響が及ぶことに。

  くれぐれも無理なくオートレースを楽しんでくださいね!

(文/中村)

 

検査場のお仕事

2025年04月18日

 
 オートレースの競技が安全に執り行われるために、さまざまな人が運営に関わっています。今回はオートレースの車体の安全を確認する検車員の仕事について係りの方にお話を聞いてきました。
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 検車場にはバイクがずらっと並んでいます。バイクとバイクの間には十分なスペースがあり、ここに入って検査員の方がいろいろと作業をします。ちなみに、タイヤの部分に巻かれているのはウォーマーで、走路に出る前にタイヤ表面の温度が下がらないようにする器具です。
 
 -まず、検査ではどういった箇所の点検をするのですか?
 『ネジとかにヒビや緩みがないかとかを打検で確認します。その音を聞いて緩んでいたら、選手を呼んで締め付け直してもらったりします。あとはハンドルやフレームなどの一部が割れてたりしていないかを確認します。とにかく場所は全体ですね。フレームからエンジンの細かい所まで一ヶ所一ヶ所見ます。あとはオイル回りを見て、漏れがないかとか。それとガソリンタンクの中を見て、ガソリンを入れ忘れてないかとか。クラッチのワイヤーを見て、切れてないかとかですね』
-ごく稀に不具合がある時もあるんですか?
 『ありますよ。そうすると選手を呼んで締めてもらうんです』
-検査員の方で修正はしないのですか?
 『トルクとかあるし、本人の持ち物ですから選手自身にやってもらいます』
-タイヤの空気圧とかも確かめるのですか?
 『それはパンクしていないかを確認するぐらいです。空気圧は選手の好みもあるから、そこまでは確認していないですね』
-叩いて、音で分かるものなんですか?
『意外と分かりますよ。緩んでいるといつもと違う音がして、締まっていないのが分かります』
-検査員になるには研修とかあるのですか?
『とりあえず打検のテストをやります。練習用のバイクで、わざと何ヶ所かネジを緩めておいて、それで叩かせて気づくかどうかを確かめます。それをクリアしないと任せられないですから。いつテストをやるとか決まりはないんですけど、だいだい、検査課に配属されたら最初にテストをします。それで全部、間違いなく指摘できたら明日から叩きましょう、みたいな感じでやっています。開催中は一日あたり10人くらいでやってます。基本、バイクの両側に分かれてやってもらったりしています。でも、人が少ない時なんかは1人1台まるまる見ます』
-試走に出るどれぐらい前に検査をするのですか?
『例えば、今が8レース発売中だったら、9レースと10レースに出場するバイクを点検します。ですから、2個レース前には検車場にバイクを運んでもらうかたちです』
-こういった工程を経て、安全なレースが行われるのですね。
『そうですね。更に言えば、仮に検車場で見落としてしまった場合があったとしても、走路内のピットでも打検していますので、そちらで気づく場合もあります。二重三重じゃないですけど、何度もチェックして万全の状態にします』
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 オートーレースのファンには目に触れることのない作業ですが、検査員の方々の入念な確認があって安全なレースが執り行われます。
 
文/高橋

 

車名の由来 6

2025年04月11日

 選手が自分のエンジンの車名を決める理由は人それぞれ。強い思い入れがあったり、そうでもなかったり。そんな車名を決める決定打を聞いてきました。
 
 北原岳哲...フィロソフィー。「哲学を英語でいうとフィロソフィーなんですけど、自分の名前の『岳哲』の哲が哲学の哲なので付けました。親からずっとその漢字が付けられているんですよ。父親も哲郎で、兄貴にも哲が付いてるんです。甥っ子とかもみんな哲が付いているんですよ。せっかくなのでそこから付けたんです。(レース場でもいろいろ考えながら走っているんですか?)常に頭フル回転ですよ。腕がなかなか追いつかないので、とりあえず考えるだけ考えながら、体を動かして頭使いながらです」
 
 平川博康...ヤワラ。「『やわら鉄筋』という会社があって、そこの人にお世話になっているんですけど、その人、オートレースが大好きなんです。親父の後輩なんですけど、もう家族同然でかわいがってくれてるんですよ。田舎なので、そういうのは大切にしたいんです」
 
 高石光将...チビサウザー。「北斗の拳の『サウザー』に似てるって言われるんですよ。あとは自分の身長を考えて。そのまんまですけど、北斗の拳も好きなので」
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 ↑右が深谷俊太選手、ちなみに左は北市唯選手
 深谷俊太...シグナル。「アジアで台風の意味らしいですよ。自分もよく分からないんですけど、味道楽のお客さんが付けてくれたんです」(深谷選手は以前に『アジドウラク』という車名を付けていました)
 
 宮地朗...ザトラクターズ。「これは『ザドリフターズ』から文字って付けたんですよ。ちょうど休みの日に近所の仲間と農業をやっていて、それでトラクターも運転するので。米を作っているので、これから田植えとかあるし忙しくなるんですよ。乗り換わってからエンジンも良くなってるんです」
 
 鈴木静二...ミル。「特に意味はないんですけど、リシャール・ミルっていう時計があって、それで車名に付けました。昔は時計が好きだったんですよ。まあ、今は持っていないんですけどね(苦笑)」
  
 中原誠...ワンハート。「息子の名前を英語化したんですよ。息子の名前は『いっさ』といって、漢字で書いたら『壱』に『心』っ書くんですけど、それを英語化してワンハートです。(では、息子さんの名前を背負って走る、みたいな感じですか?)いやいや、そんな大きな意味はないですよ(笑)。そこまではないです(笑)。背負って走るとかそこまで重いモノはないですよ」
 
 井上智詞...ウォーデン。「これはただ単に子どもが好きなゲームに出てくるキャラクターの名前です。マインクラフトっていうすごく流行っているゲームがあるんですけど、それの敵の強いキャラらしくて...。子どもに(車名を)どうしようかって話していたら、強そうだしウォーデンがいいんじゃない!?って言われて付けました」
 
 下平佳輝...ガラナ。「そんなに意味はないんですけど、『ガラナ』っていう飲み物があって、力が付くみたいな事を言われてたから、じゃあ車名に付けてもいいかなって思いました。(エンジンにもパワーが出たらいいですね?)そうそう。最近はエンジンに力がないけどね(笑)」


 

選手が行う整備について

2025年04月04日

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《写真は整備風景》

 「いいなぁ選手って、1日2分弱のレースで稼げるんだから。」「時給にしたら相当凄いね」と思った事、誰しも1度はあるんじゃないでしょうか。

 確かにファンの前に出てくるのは、レース前の試走と本番のレースだけ(たまに練習)。でも、オートレーサーの仕事はそれだけじゃないんです。
 そう、選手はレースで勝つために愛車に整備をほどこしています。そして整備をする場所は、多岐にわたります。

 今回は2名の選手にレースが終わってから、どう整備し翌日のレースに向かうのかをインタビューしてみました。

【川口オート所属・S級選手の場合】

「自分がエンジン整備について考える場合、(優勝を目指しているので)まず、自分も含め96人(8車立て12Rの場合)の中でエンジンがどのレベルにあるのか、をまず考えます。そこからトップレベルにどう仕上げていくか、という流れになりますね」

「整備の優先度は、①エンジン本体、②タイヤ、③フレーム関係でしょうか。まずは、エンジンがいいのか、悪いのか、次にタイヤが滑ったりハネたりしていないか、最後はフレームに不具合がないか、といった感じです」

「レースや練習を乗った感じで、どこが足りないのかを考えて、調整場所を(バネ、キャブ、電気位置など)考えます。調整だけでは変化が期待できない時は部品交換になります」

「その次にタイヤ。タイヤの滑りやハネがなかったか。良ければ、掘っていくのかそのままか。滑りやハネがあった場合や、タイヤのヤマが低くなってしまったら交換します」

「最後にエンジンもタイヤも悪くないが、ハネてしまう場合、フレームやフォーク関係を疑います」

【浜松オート所属・A級選手の場合】

「自分の場合は、エンジンは悪くならなければ前日と一緒。気候に合わせて調整していくくらい。トップクラスの(鈴木)圭一郎とかとは、目指しているエンジンレベルが違うから、普段はそんなに部品交換はしないですね」

「パーツ交換をする時は、セッティングをやってもまったく反応がなくなった時です」

「タイヤは評判のいいロット番号の物を、整備仲間に聞いたりして使います。でも、必ずしもいいわけではない事もあるんですよね。タイヤ自体の個体差があったりして。難しいですね(笑)」

【まとめ】
 エンジン状態がいい選手は作業量が少なくなり、エンジンが一息の選手は良くしようとするため、作業量が増えます。
 作業をする場所は各選手の経験則に基づいて選ばれますが、選択肢は物凄く多く、良かれと思った整備でも失敗する事も多々あります。

 成績が悪いと翌日は人気になりにくい傾向ですが、そんな中、整備の内容によっては、気配が一変することがあります。
 一変しやすい代表的な整備は、下回りと呼ばれるエンジンを車体から外して(降ろして)行う大幅な整備です。

 特にクランク交換の大幅整備が行われた翌日は、気配が一変しやすいので、選手のコメントには注目しつつ試走タイムや動きに注目です。
 人気が落ちた選手が一変する瞬間を狙って好配当をゲットするのも車券戦術の一つと言えます。

 最後に、前日のレースの成績が悪かった選手が必死に立て直そうとする姿を、取材のかたわらで見ていると、「立ち直って欲しいな」と思いますし、立て直しを狙って整備した選手のコメントを記事にした翌日、実際に立て直して好走した時は、嬉しさを共有したような気持ちになります。
 これからも老若男女を問わず、ひたむきにレースへ向けた整備をやり続ける選手にエールを送りたいですね。

文/金子

 

試走路とは

2025年03月28日

 
 各オートレース場には試走路と呼ばれる場所が設けられている。これはエンジンの細かい調整を施している選手たちが、その変化の具合を確認しにいくスペースである。レース前でもレース後でも自分の好きなタイミングでその場所に行ってかまわない。ここでエンジンの空ぶかしをして回転の上がり具合を耳で確認する。また、レース場によって形状は異なっているが、直線にして100メートルくらいは走れるので、実施に競走車にまたがって加速感を試したりする。
 
 だいたいはロッカーの外に試走路があるのが一般的で、唯一、川口オートレース場だけは室内に設けられている。川口オートレース場はロッカーと宿舎が一体となっている大型の建物で、試走路も建物から外に出ることなく、建物内にそのスペースがある。となると、他のレース場とは違ってエンジン音の聞こえ方が多少変わってくる。屋外ならエンジン音が外へ向かって放出されるが、屋内だと壁があるので音がこもりやすく、他のレース場とは違って聞こえるようだ。普段から川口の試走路を使うことが多い川口所属の選手ならだいぶ慣れているが、遠征で川口にやって来る他のレース場所属の選手の中には川口の試走路ではエンジン音が確認しづらいといった声もたまに聞かれる。
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 ↑川口オートレース場の試走路
 
 もちろん開催中にはレースの合間に練習時間が設けられていて、競走路で練習走行もできる。ただ、これは時間が決められているので、ちょうどレースに出場する前後の選手はその練習に参加できない。また、夕方練習といって、その日の全てのレースが終わった後にも競走路で練習走行はできるが、そこでエンジンが思うような仕上がりになっていなかった選手は再びロッカーに戻ってエンジンの調整に入る。そこで夕方練習の時間が終わってしまうと、試走路でエンジン音の確認をすることになる。そのため、試走路は大事な場所となるのだ。
 
 エンジンの調整にシビアな選手は自分のロッカーでいろいろ扱い、試走路でエンジンをかけるという作業を永遠と繰り返す。川口の試走路は先述のとおり、建物の中にあるため外からは見えないが、他のレース場なら位置によっては観客スタンドから試走路の一部を見ることができる。距離的にはだいぶ離れているので、本気で見るなら双眼鏡など遠くの物を見るための道具があった方がいいだろう。何度も試走路にやってきてエンジンをかけている選手は、自分の出番に向けて入念に仕上げにかかっているとみていい。もちろん、実際の競走までに思うような状態にならなかったり、すでに早い段階でその日の調整をやり終えている選手もいるので一概には言えないが、車券戦術の参考になるケースもなくはない。レースの結果を予想する上で最も大事なのは試走だと思われる。次に、前日までの成績やレース内容。しかし、その他にも予想を楽しむ上でさまざまなファクターがあるのがオートレース。まさに奥の深い競技と言える。
 
文/高橋

 

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