NARグランプリレポート VOL2
2025年02月14日
2月3日に都内で行われたNARグランプリ授賞式のリポート第2弾。
今回は各賞を受賞した競走馬と調教師について、競馬リポーターの大恵陽子がリポートをお届けします。
【年度代表馬】ライトウォーリア
2024年の年度代表馬に輝いたのはライトウォーリア。JRA時代はその気性からレース展開一つで能力を発揮できる時とそうでない時があったのですが、22年夏に地方競馬の川崎に移籍すると、逃げるレースで強さを発揮していきました。そして昨年2月、川崎記念JpnIを逃げ切り勝ち。
秋には韓国・コリアカップに遠征して4着など、地方競馬を代表する活躍を見せました。
吉原寛人騎手
「年度代表馬の背に乗れたことをすごく誇りに思いますし、感謝しています。年明け初戦の報知オールスターカップでは状態が良くて掛かりすぎて、気を付けないといけないなと思っていましたが、川崎記念の返し馬ではさらに前向きになっていて、もっと気を付けないといけないなと思っていました。そこがピークなくらい、一番いい状態でした。
レースは4コーナーでもひと踏ん張りしてくれて、会心の勝利でした。ゴールでは大きなガッツポーズが出てしまいました」
なお、吉原騎手は特別賞も受賞。
地方通算3000勝達成、地方競馬全場(現存する平地)での重賞制覇などメモリアルな一年でもありました。
内田勝義調教師
「このような大きな賞をいただき、感謝しかありません。これもひとえに、川崎記念で激走してくれたおかげです。
秋のコリアカップは初めての海外遠征でしたが、そのわりにはいい雰囲気で出走できたと思います。ゲートボーイを見てスタートで遅れた分、前に行けませんでしたが、3コーナーからの脚を見て『おぉ!もしかしたら』と感じました。JRA時代はそういうレースをすると全然ダメだったので、この形で競馬ができたことはプラスでした。
今年も報知オールスターカップから川崎記念というローテーションを予定しています」
【最優秀勝利回数調教師賞】【最優秀勝率調教師賞】打越勇児調教師
「馬主やスタッフ、ジョッキー、ファンの皆様に恵まれての結果で、嬉しく思います。昨年はできすぎなくらいでしたが、人と馬との縁や運に恵まれました」
地元ではプリフロオールインで高知三冠を達成し、シンメデージーではダート三冠のうち東京ダービーとジャパンダートクラシックに出走し、4着、5着でいずれも地方最先着を果たしました。
「新しいレース体系もあり、チャレンジできてよかったです」
地方全国リーディングは5回目の受賞で、24年に挙げた232勝はキャリアハイ。そして最優秀勝率調教師賞は初の受賞となりました。
収得賞金も全国2位。賞金トップは例年、賞金の高い南関東所属の調教師ということを考えると、高知からのランクインは素晴らしいことです。
高知競馬が売り上げ増に伴い、賞金もアップしたことに加え、前述のダート三冠をはじめ他地区へ遠征して結果を残したこともあと押ししたことでしょう。"準三冠"となりました。
【最優秀賞金収得調教師賞】小久保智調教師
「こればっかりは自分一人でできるものではないので、オーナー、スタッフのみんなに感謝しています」
昨年挙げた160勝はキャリアハイでしたが、小久保調教師は少し悩みながらこう話しました。
「数字は出るけど、代表馬を出していません。どっちを重視したらいいのかなというのが悩みです。目指しているのは、目の前の馬にいかに最大のパフォーマンスを出し切らせるかなので、そういうところでは納得できる部分があります」
さて、ここからはオッズパークともゆかりの深い競馬場所属の馬を中心に、各部門の受賞馬を見ていきましょう。
【最優秀短距離馬】アラジンバローズ
昨年の短距離界ではスマイルウィがテレ玉杯オーバルスプリントJpnIIIを勝つなど、地方馬によるダートグレード制覇が複数見られました。
そうした中、サマーチャンピオンJpnIIIを勝ち、JBCスプリントJpnIで地方馬最先着の3着に入ったアラジンバローズが最優秀短距離馬を受賞しました。
JRA時代、ダート1700m~1800mで3連勝してオープン入りした同馬は23年秋の兵庫移籍後も中距離を主戦場としていました。しかし、移籍初戦の鳥栖大賞(2000m)こそ勝ったものの、道中は掛かって力を発揮しきれないレースが続いていました。
転機が訪れたのは昨夏のマーキュリーカップJpnIII。
地方移籍後初のコーナー4回の競馬は陣営の予想以上に折り合えていい雰囲気で運ぶことができました。
そこでレース後、下原理騎手は「1400mがいいかもしれません」と、新子雅司調教師に提案。なぜ1400mかと言うと、拠点とする西日本では小回りコースとなるため、コーナー4回のレースはこの距離になるのです。
そこで矛先を向けたのが佐賀のサマーチャンピオン。台風の影響で3日順延となり、佐賀県へ輸送途中だった同馬は山口県内で引き返して地元に一旦戻り、再輸送となりましたが、それを跳ね除けての優勝でした。
さらに、追い切りから抜群の雰囲気を見せていたJBCスプリントでは同厩舎で22年、23年のNARグランプリ年度代表馬のイグナイターを退けての地方最先着。
今年はさらなる活躍が期待されます。
【特別表彰馬】ラブミーチャン
昨年8月31日に亡くなったラブミーチャン。
現役時代は笠松所属で全国のダートグレード競走で活躍し、引退後は地元ではその功績を称え、2歳牝馬による重賞が「ラブミーチャン記念」と名付けられました。
無敗のまま全日本2歳優駿JpnIを制し、2歳ながらNARグランプリ年度代表馬を受賞。
3歳春にJRA阪神競馬場で行われたフィリーズレビューGIIに出走時には大応援団も駆け付けていました。
【2歳最優秀牡馬】ソルジャーフィルド
JBC2歳優駿JpnIIIの勝利は地方馬としては4年だったソルジャーフィルド。その後の全日本2歳優駿JpnIでも地方馬最先着の3着に入りました。
【2歳最優秀牝馬】プラウドフレール
プラウドフレールは大晦日の東京2歳優駿牝馬を勝利。年末に南関東で行われる2歳女王決定戦を制しました。
【3歳最優秀牡馬】サントノーレ
3歳最優秀牡馬はダート三冠で地方最先着を2回果たしたシンメデージーとサントノーレが同数票を獲得しましたが、委員会規定に基づき、委員長によりサントノーレが選定されました。
春に京浜盃JpnIIを7馬身差をつけて圧勝し、ダート三冠初年度からサントノーレが地方代表として活躍するのでは、と期待が寄せられていましたが、直後に骨折が判明。春は休養を余儀なくされましたが、復帰初戦の戸塚記念を勝ち、ダート三冠最終戦のジャパンダートクラシックに間に合いました。そこでは7着でしたが、昨年ダートグレード制覇を果たしたことが受賞の大きな決め手となったことでしょう
【3歳最優秀牝馬】ローリエフレイバー
前年の東京2歳優駿牝馬を勝ったローリエフレイバー。24年はロジータ記念のみの勝利でしたが、地方全国交流重賞を勝ったことが評価されました。
【4歳以上最優秀牝馬】キャリックアリード
昨年、ダートグレード競走で地方最先着を果たすこと4回。グランダム・ジャパン古馬の春・秋シーズンを連覇しました。
【ダートグレード競走特別賞馬】フォーエバーヤング
この賞はもうこの馬しかいないでしょう。アメリカ・ケンタッキーダービーで僅差の3着で、世界の頂に手が届きかけた興奮と悔しさを日本の競馬ファンに味わわせてくれたダート馬が、秋初戦に大井競馬場で行われたジャパンダートクラシックJpnIに登場。管理する矢作芳人調教師、鞍上の坂井瑠星騎手ともに父が大井競馬場の元調教師と元騎手で、彼らにとってはルーツとなる地で力強い走りを見せると、ブリーダーズカップクラシック3着を挟み、年末には東京大賞典GIも勝利。JRA馬が、所属の垣根を越えて地方競馬を大いに盛り上げてくれました。
【3歳ダート主要競走出走馬主への記念楯贈呈】
昨年は新競走体系が始まり、ダート三冠や3歳短距離路線の整備など改革年でした。そこに積極的にチャレンジした地方馬からは上位入着を果たす活躍も多く見られ、今回のNARグランプリ授賞式では、3歳ダート主要競走(羽田盃・東京ダービー・ジャパンダートクラシック・兵庫チャンピオンシップ・関東オークス)で5着以内に入った地方馬の馬主に記念楯の贈呈が行われました。
【ばんえい最優秀馬】メジロゴーリキ
帯広記念、ばんえい記念と高重量戦を制し、ばんえい記念をもって現役を引退したメジロゴーリキが受賞しました。
あいにく関係者の出席はありませんでしたが、力強いレースを見せてくれました。
文/大恵陽子
NARグランプリレポート VOL1
2025年02月07日
NARグランプリ授賞式が2月3日、都内ホテルで行われました。
2024年の地方競馬を彩った人たちが一堂に会した華やかな授賞式のリポートを、競馬リポーターの大恵陽子が今年もお届けします。
まずは騎手部門から。
昨年の最優秀勝利回数騎手賞は森泰斗騎手(船橋)でした。いわゆる地方全国リーディングで、昨年11月末をもって騎手を引退して1カ月の空白期間がありながらも2位吉村智洋騎手(兵庫)に9勝差をつけての獲得。それだけ11カ月間の勝利数が抜けていて素晴らしいということなのですが、ご本人は複雑な思いを抱いていたようです。
「12月はレースに乗っていなくて、引退発表した人間が獲ってしまっていいのかな、と複雑な思いでいます。
昨年は体も不調な部分があり、到底、納得できる騎乗はできませんでした。数字の面でも一番勝っていた年で400勝近くだったので、昨年の295勝はだいぶ落としていて、不本意なシーズンでした」
自分自身に納得がいかない中でも、後輩騎手の台頭がなかったことなどが影響しての森騎手の受賞となったのでした。
引退後の現在の生活は「不摂生をしてみたんですけど、体にしみついた習慣はあまり抜けなくて、今は寝る時間も食事も騎手の頃と変わらない生活に戻りました」と規則正しい生活。そうした中で、現在は調教師を目指しています。
「少し離れて色々考えてみて、やっぱり近くで馬に関わりたいと思いました。叶うのであれば、培ってきた知見を生かしていい馬を育てたいですし、自分の経験や足りなかった部分を伝えながら騎手も育てたいです。スタージョッキーは地方競馬の発展に必須だと思います」
調教師試験への合格が待たれます。
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その森騎手の隣で「(森)泰斗さんの壁は大きくて、泰斗さんが1カ月休んだにもかかわらず勝利数を大きく引き離されたのは情けないです」と話したのは笹川翼騎手(大井)。最優秀賞金収得騎手賞を受賞しました。
「昨年は不甲斐ないシーズンで、賞金も地方競馬だけなら矢野貴之さんに負けていました。馬が頑張ってくれたから獲れた賞です」
そう厳しいジャッジを下しますが、昨年はカタール遠征、そしてイグナイターとのドバイ遠征と貴重な経験をしました。ドバイでは勝ちを意識できる走りを感じられた一方、直線の進路取りで制裁を受けるなど正と負の感情をどちらも抱いたのでは、と思います。
今年も2月22日、サウジアラビアで行われるリヤドダートスプリントにイグナイターと参戦予定。
「昨年のドバイでは悔しい思いもしましたし、今後のジョッキー人生で感じさせられるものもありました。サウジに行くのは初めてですが、昨年、2カ国に行ったことは自分の中では大きなアドバンテージになっています。自信を持って、悔いの内容一生懸命乗りたいです。
また、今年は自分に発破をかけて、厳しくレースに向き合って全国リーディングを獲りたいです。あえて、この場で言います」
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最優秀勝率騎手賞は渡邊竜也騎手(笠松)が初の受賞となりました。
東海地区からは初めてどころか、同賞は2009年の創設以降、赤岡修次騎手(高知)と山口勲騎手(佐賀)、宮川実騎手(高知)の3名しか受賞したことがありませんでした。それだけ毎年、受賞者が固定されがちな部門。
そこを目標に掲げたのは、地元紙の記者から「勝率が高いよ」と教えてもらった3月頃でした。そこからは毎週、競馬が終わるたびに勝率をチェック。
「1年間、目標に頑張ってきたので嬉しいです」と喜びました。
また、昨年は12月に地方通算1000勝を達成。
「笹川騎手を目標に頑張ったんですが及ばなかったので、2000勝は笹川騎手より最短で達成できるように頑張ります」
※笹川騎手はTCK史上最速のデビューから2784日目で地方通算1000勝を達成。
JRA初勝利や自身の持つ笠松の年間最多勝更新もあり、とにかく濃い一年でした。
「昨年は目標が多く、いろいろ達成できましたが、今年はまだコレという目標は立っていません。目の前の一つ一つを追いかけながら、新しい目標を立てられたらと思います」
同じ東海からは宮下瞳騎手(愛知)が優秀女性騎手賞と特別賞を受賞。
昨年は自身2度目の年間100勝を達成し、116勝は国内女性騎手最多でした。これまでは地元・名古屋競馬場での騎乗が中心で、常時交流のある笠松競馬場での騎乗は少なかったのですが、昨年は281鞍で、一昨年の60鞍から一気に増加。これにはご家族の支えもあってのものでした。
「主人をはじめ、子供たちの応援もあってこのような結果を残すことができました。特に主人にはたくさん協力してもらって、助かっています。
関係者のみなさまのおかげでいただけた賞だと思うので嬉しく思います。
毎年ケガをしてしまうんですが、昨年は大きなケガなく、いい馬に乗せていただいた結果だと思います。笠松への遠征も増えて、騎乗数も多くなったと思います」
元騎手の小山信行さんは騎手引退後、韓国で攻馬手をしていましたが、現在は帰国して名古屋競馬で厩務員をしています。
「受章を聞いた時は正直ビックリしました。私なんかがもらっていいのかな、と思いましたが、すごく嬉しかったです。今まで頑張ってきてよかったなと思いましたし、それらが報われたので、これからもっと努力したいです。ケガが多いので、ケガなく一鞍一鞍、大事に乗って1勝ずつ自分の記録を積み重ねたいです」
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フェアプレイ賞は村上忍騎手(岩手)。
「30年以上ジョッキーをしていますが、こういう賞は縁がなかったので光栄です」と、意外にも初受賞。
「いま思えば、若い頃は勝ちたい思いが強かったですが、年齢を重ねるごとに馬を御しながら、周りを見ながら少しだけ冷静に騎乗しようという気持ちが強くなったことが、今回の受賞に繋がったのかなと思います」
昨年は東北優駿や園田・楠賞を勝ったフジユージーンとの活躍も目立った年でした。
「デビュー前から期待が高くて、今年も楽しみな馬です。プレッシャーもある程度ありますが、それよりも『今日はどんな走りをしてくれるんだろう』と僕自身も楽しみが強い馬です」
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最優秀新人騎手賞は加藤翔馬騎手(金沢)。
23年にデビューし、昨年は112勝を挙げる活躍で、ヤングジョッキーズシリーズではファイナルラウンドに進出も果たしました。
「新人賞は師匠でもある父(加藤和義調教師)も受賞していて、新人の間の限られた枠なので、受賞したいとデビュー前から思っていたので嬉しいです。前目の位置で競馬をすることが自分の持ち味だと思っていて、それをより磨きながら、そうじゃない競馬ももっと上手く乗れるように頑張りたいです」
次回のコラムでは各部門を受賞した競走馬や調教師についてリポートします。
文/大恵陽子
2025・M&Kジョッキーズカップが実施されました
2025年01月30日
1月19日(日)に佐賀競馬場にて、M&Kジョッキーズカップが開催されました。
2つのレースに騎乗するのは、岩手所属騎手4名と、佐賀の前年のリーディング上位8名。レース名の「M」は"みちのく"で、「K」は九州。以前は岩手の騎手と佐賀&荒尾の騎手との対抗戦でしたが、2011年に荒尾競馬が廃止されたことで岩手と佐賀の対抗戦に。それでも名称は以前のまま、引き継がれています。
新型コロナウイルスの影響で実施されない時期がありましたが、昨年の1月に復活。そして昨年の8月4日に盛岡競馬場で佐賀所属騎手4名、岩手リーディング上位8名(その時点における当年の成績)による「M&Kジョッキーズカップ」が実施されることになりました
そのときは、山口勲騎手、竹吉徹騎手、田中純騎手、田中直人騎手が遠征。しかし......
ゲリラ豪雨による馬場状態の悪化でレースが取り止めに。佐賀の4名は1泊2日の盛岡旅行をしただけになってしまいました。
というわけで「M&K」の開催は1年ぶり。今回は岩手から大坪慎(おおつぼ・まこと)、鈴木祐(すずき・ゆう)、関本玲花(せきもと・れいか)、高橋悠里(たかはし・ゆうり)の4名が佐賀に来ました。
このうち、初めての佐賀となるのが鈴木騎手で、
「騎手会長に行けと言われたので」
と、苦笑い。ほかの3名は佐賀経験があって、大坪騎手は「たしか4回目かな。行きの飛行機はジャンボ焼き鳥のお店の人と同じ」とのことでした。
関本騎手はレディースヴィクトリーラウンドで来たことがあって、高橋騎手は2020年の「M&K」に出場するなどで佐賀コースの経験があります。
ただ、佐賀競馬場は2023年の夏を境に、以前とは砂の質が違っているんですよね。岩手の騎手はそれを知っているのかな?
と思ったので、冬は佐賀での期間限定騎乗が恒例になっている小林凌騎手に聞いてみました。佐賀コースの特徴とか、誰かに教えました?
「いや、誰も聞きにきていないので......」
そうなの?
するとそこに、本日の騎乗を終えた小松丈二騎手が登場。小松騎手は騎乗できる騎手が足りなくなった昨年末の水沢競馬で、応援騎乗をしてきました。
「水曜日くらいに言われて、金曜日に移動して土曜日から乗りました」
ちなみに小松騎手はデビューの地が岩手。盛岡競馬場の所属で2年少々騎乗して、2005年に佐賀へ移籍しました。
「岩手から離れたのは昔のことですが、けっこう覚えてもらっていましたし、こちらも知っている人が多かったですね。でも、4日間で勝てなかったのは残念だったなあ」
せっかくなので、元・岩手の騎手と現・岩手の騎手で並んでもらいました。
では改めて、お二人に現在の佐賀競馬場の特徴を聞いてみましょう。
「砂が変わってからは、外があまり伸びなくなりました。前は、後方から大外を回って差し切れることがありましたが、今はかなりペースが速くならないとムリですね。逆に、わりと早めに仕掛けても意外と粘り込める感じがあります」
と、小松騎手。小林騎手も同意見で、
「今は、力量的にちょっと、という馬でも乗りかたひとつでチャンスがある感じになっています。ただ、インコースから積極的に行きすぎると最後に止まることが多いです」
その話を聞いたのは第1戦(第6レース)の前。岩手所属騎手の紹介式は、第4レースのあとに行われました。
高橋悠里騎手「佐賀競馬を盛り上げられるように頑張ります」
鈴木祐騎手「初めての競馬場ですが、全力で頑張ります」
関本玲花騎手「さっきのレースに乗せていただけて、なんとなく雰囲気はつかめたかなと思うので、ひとつでも上の着順を狙います」
大坪慎騎手「佐賀のジョッキーに負けないように頑張ります」
この騎手紹介式を見守っていたのが、盛岡競馬場名物のジャンボ焼き鳥「とりっきー」のスタッフ。紹介式のあと、スタンドを通り抜けて正面入口に向かうと、ものすごい煙が出迎えてくれました。
「ここではナマから焼き始めるので時間がかかりますね」
と店主。ただ、佐賀競馬場に来るのは2回目で、出張販売に慣れてきた様子です。
さて「2025M&Kジョッキーズカップ」の第1戦は1400m。C2クラスの18組なので、佐賀では最下級に近い条件です。しかし出走馬の間には実力差がある印象で、先行した3頭が3着以内を独占しました。単勝人気順では1→3→2番人気。
各騎手の騎乗馬は抽選で決まりますが、このレースに関してはクジ運がすべてでしたね。岩手の最先着は大坪騎手で、7着。関本騎手が9着、高橋騎手が10着、鈴木騎手は11着。その着順と単勝人気は、ほとんど同じでした。
それはともかく、レースを終えての感想を聞いてみましょう。鈴木騎手、ラチが近くにない競馬はどうでした?
「よくわからないまま終わりました。流れに乗っていこうと思ったんですが、なんか不思議な感じでしたね。この経験をいかせればと思いますが、次はコーナーが6回あるんですよね......」
一方、高橋騎手は「年末の水沢競馬は馬場がドロドロ。だから佐賀の馬場は乗りやすかった(笑)。内ラチから離れていても、馬群がギュッと固まっているので、それほど違和感はなかったです」
最先着の大坪騎手は「うまくインコースをさばければと思っていたんですが、後ろのままでしたね。砂の感じが以前とは違って、外を回ると厳しいという感じは受けました」
とのことでした。なお、関本騎手は、第1戦と第2戦の間にある第7レースにも騎乗したので、早々に待機所に向かいました。
第2戦はC1クラスで、1750mが舞台。しかしJRAから佐賀に移って6連勝中のホーハイトが断然人気。せっかくのジョッキー戦なのになあ......
しかしホーハイトは2周目の向正面あたりからの動きがちょっとヘンで、3コーナーで競走中止(左前肢跛行とのこと)。このレースはスタートから流れが速く、小松騎手が言っていた「かなりハイペースにならないと」という展開になっていました。ところが2番手を進んだ断然人気馬がいきなり不在に。逃げていた飛田愛斗騎手はプレッシャーがなくなったことで粘りが効いて2着に残る一方で、後ろで脚を溜めていた馬が続々と台頭!
ひときわ目立つ脚で伸びてきたのは、道中で後方2番手にいたイツモハラペコ&関本騎手。ゴール直前で差し切りを決めました。
粘った飛田騎手の後ろは半馬身差で追い込んだ2頭が並ぶ形。大外を回った大坪騎手か、間を割ってきた田中直人騎手か。写真判定の結果は「同着」で、3連単と3連複は、2通りが的中となりました。
その配当は、3連単が【234万8030円】と【156万5370円】で、3連複が【12万720円】と【14万4850円】という恐ろしい高配当!
単勝人気順では5→8→4&6。ジョッキー戦らしい結果といえば、そういうことになるのかも......
「引っかかるタイプだと聞いていたので、後ろから外を回っていきました。最後は飛田くんが前に見えて1着か2着かなと思いましたが、ペースが速めだった分、間に合ってくれました」
と関本騎手。この経験は佐賀競馬場で3月8日(土)に実施されるレディースジョッキーズシリーズにつながりそうですね。
2戦の結果での総合優勝は、1着と3着と結果を残した田中直人騎手。2位は関本騎手で、3位は飛田騎手となりました。
ところで、岩手競馬では2月初旬に「調教始め式」が行われます。多くの騎手は大晦日からそこまでが「冬休み」。
ただ、高橋騎手は「僕はこれが"仕事納め"。水沢の最終日のあとも体を動かしていました」とのこと。大坪騎手は盛岡に戻って冬休みを取るそうですが、逆に鈴木騎手は「前日までが冬休みで、このあとは茨城の牧場に行く」そうです。
2025年の岩手競馬は、3月9日(日)の水沢で開幕。岩手も佐賀も引き続き熱い戦いが続いていきます!
2024各地のリーディング
2025年01月24日
1月も半ばを過ぎてしまったが、2024年の各地の騎手リーディングを振り返る。なお特に断りのない限り、対象競馬場での所属騎手のみの成績・順位とした。
【岩手】
岩手のリーディングは近年、村上忍騎手と山本聡哉騎手の争いとなっていて、2015年以降の10年間では両名とも3位以内を外したことがない。さらに両騎手以外で3位以内に入ったのも高松亮騎手か山本政聡騎手に限られる。なかなか3位以内に若手が食い込む余地がない。
そうしたなかで2024年は山本聡哉騎手が181勝で1位。154勝で2位の村上騎手に27勝の差をつけた。勝率でも山本聡哉騎手21.6%に対して、村上騎手15.9%と圧倒的だった。
しかしながら村上騎手はフジユージーンで岩手二冠制覇に加え、園田・楠賞でも全国の強豪を相手に勝利。また11月19日には、岩手所属騎手の通算最多勝記録を更新する4,128勝を挙げるなど、ベテランとして印象的な活躍が目立った。
【金沢】
金沢のトップジョッキーといえば吉原寛人騎手だが、とにかく他場での騎乗が多く2011年を最後に金沢ではトップに立っていない。それゆえかどうか金沢リーディングは群雄割拠という状況で、2012〜24年の13年間で6名の騎手がトップに立っている。
2023年には2015年デビューの栗原大河騎手が初めてトップに立ち、そして2024年は2014年デビューの中島龍也騎手が169勝をマークし、2位の栗原騎手(120勝)に49勝という大差をつけて初めて金沢リーディングに輝いた。
【笠松】
笠松ではデビュー8年目の渡邊竜也騎手が笠松競馬場における年間最多勝記録を3年連続で更新し、断然の一強となっている。2024年は笠松競馬場で232勝。2位3位は名古屋所属の岡部誠騎手、塚本征吾騎手で、笠松所属騎手として2位の藤原幹生騎手が74勝なので、じつにトリプルスコア以上の差をつけた。
渡邊騎手の笠松での勝率は37.7%、連対率は57.2%で、2回に1回以上連対し、3回に1回以上勝っていることになる。また地方競馬全体では689戦245勝、勝率35.6%は全国でもダントツの成績で、NARグランプリ2024で最優秀勝率騎手賞を受賞した。
【名古屋】
名古屋では、3月21日に歴代7人目となる地方競馬通算5,000勝を達成した岡部誠騎手の牙城がほとんど揺るぎない。"ほとんど"というのは、他場での期間限定騎乗などで地元を留守にすることが少なくないため。近10年では、南関東で期間限定騎乗をしていた2014、15、18年、韓国・釜山競馬場で短期免許で騎乗していた2016年以外はいずれの年もトップに立っている。
2024年は名古屋競馬場で170勝。131勝で2位の塚本征吾騎手に39勝差をつけた。名古屋では若手の台頭が目立っており、その塚本騎手は2021年デビュー、3位は2006年デビューの今井貴大騎手が112勝、4位は2016年デビューの加藤聡一騎手で104勝と、2位争いは接戦だった。さらに2023年デビューの大畑慧悟騎手が90勝で6位、2024年4月デビューの望月洵輝騎手は9カ月間で82勝(地方全体では95勝)を挙げ、いきなり7位にランクインしている。
また日本の女性騎手として通算勝利数の記録を更新し続けている宮下瞳騎手は93勝で5位。地方全体で116勝は自身のキャリアハイの勝利数だった。
【兵庫】
兵庫では2018年に初めて吉村智洋騎手がトップに立つと同時に、全国でもトップに立って以降、吉村騎手の天下が続いている。
2024年は全国1位の森泰斗騎手(船橋)が11月29日の騎乗を最後に引退し、その時点で森騎手295勝に対して、吉村騎手は257勝(地方全国)。残り約1カ月で38勝差を逆転するのはさすがに難しく、吉村騎手は9勝差の286勝で全国2位だった。
吉村騎手は初めて全国のトップに立った2018年が296勝(地方全国)で、以降は毎年300勝超の勝ち星を重ねてきたが、2024年は6年ぶりに300勝を割った。NARグランプリ2023の表彰式のインタビューで「昨年(2023年)は精神的にもきつかった。目標を決めると昨年のようにしんどくなるので、今年(2024年)は怪我なく楽しく乗れればいいかなと思っています」と話していた。全国トップを続けるといいうのは、我々には想像できないほど精神的に追い込まれるもののようで、数字にはこだわらなかった結果が2024年の成績と思われる。
とはいえ兵庫での勝利数284は、2位の下原理騎手(191勝)に100勝近い差をつけた。2022年から3年連続2位は下原騎手で、それまで2位・3位を争っていた田中学騎手が現在は長期療養中のため、近年台頭著しい廣瀬航騎手が2023年の4位から2024年は3位に繰り上がった。
兵庫では近年若手の活躍も目立たないわけではないが、リーディングの上位はまだまだベテラン騎手の寡占状態が続いている。
そうした中で2024年8月には小牧太騎手が中央から復帰。兵庫所属となって騎乗を再開した8月14日から年末までに限っての兵庫リーディングを集計してみると、吉村騎手114勝、下原騎手71勝、小牧騎手66勝という順。2025年は小牧騎手も含めたリーディング争いに注目だ。
【高知】
2024年の高知競馬では、134勝の宮川実騎手が赤岡修次騎手(120勝)を抑えてトップとなった。宮川騎手の高知リーディング1位は2022年以来2度目で、2021年に初めて2位になって以降、赤岡騎手と1・2位を分け合っている。
宮川騎手は2021・22年にNARグランプリ最優秀賞勝率騎手賞を受賞していて、この年も29.8%(地方全体)という高い勝率をマークしたが、渡邊竜也騎手(笠松)の35.6%はあまりにも壁が高かった。
所属する打越勇児調教師は、これまで2018、19、21、22年に調教師のリーディング全国1位でNARグランプリ最優秀勝利回数調教師賞を受賞していたが、2024年には同賞に加え勝率でも全国1位となって最優秀勝率調教師賞とダブルで受賞。賞金でも小久保智調教師(浦和)に次いで2位だった。所属厩舎の好成績にともない宮川騎手も有力馬の騎乗機会が増えていると考えられる。
【佐賀】
佐賀では2008年以降、山口勲騎手がほとんどダントツの数字でリーディング1位を続けてきたが、2023年は怪我で約2カ月のブランクがあったためトップの座を飛田愛斗騎手に明け渡した。それでも2024年には山口騎手152勝に対して飛田騎手120勝と、32勝差をつけて再び首位に返り咲いた。
とはいえ山口騎手も今年3月で55歳。佐賀では近年若手騎手の活躍が目覚ましく、2020年にデビューした飛田騎手のほかにも、2022年にデビューした山田義貴騎手は2023年には118勝(地方全体)を挙げNARグランプリ最優秀新人騎手賞を受賞、2024年も99勝をマークしており、世代交代も近いかもしれない。
【ばんえい】
ばんえい競馬では、主催者の表彰や発表しているデータが年度単位(4月から翌年3月)となっているため簡単に。
ばんえい競馬では鈴木恵介騎手のトップが長く続いていたが、2020・21年度に阿部武臣騎手がその牙城を崩し、2年連続で1位となった。しかし2022年度以降は再び鈴木騎手がトップに立っていて、2024年度も1月20日現在、鈴木騎手が134勝でトップだが、西将太騎手が126勝で2位、島津新騎手が112勝で3位に迫っている。この時点で上位8名が100勝以上と、勝ち星を分け合っている状況だ。
文/斎藤修
ばんえい競馬クライマックスに向けて
2025年01月09日
年末には競馬場ごとに2024年を振り返ったが、ばんえい競馬では年末・年始に世代ごとの重賞競走が行われ、3月のシーズン終盤にむけてさらに盛り上がる。そのクライマックスに向けての勢力図を世代ごとに紹介する。
【2歳(明け3歳)】
2歳(明け3歳)世代は、年末までの成績で、10戦7勝、2着2回のスーパーシン、14戦6勝、2着6回のキョウエイエースという2強が抜けた存在となっている。
2歳シーズン一冠目のナナカマド賞(10月13日)は、基礎重量570kg(牝馬20kg減)の条件で、青雲賞(2歳特別)を制していたキョウエイエースが1頭だけ別定10kg増の580kg。ほぼ同時に第2障害を越えた2強が抜きつ抜かれつの一騎打ちとなって、ゴール寸前でわずかにキョウエイエースが前に出ての勝利。その差はわずかコンマ4秒。3着ヤマノドラゴンは10秒以上も遅れてのゴールとなった。
ばんえい競馬では、生産頭数が圧倒的に多い十勝地区の産駒の層が厚いが、この世代は例年以上にその傾向が顕著だった。二冠目ヤングチャンピオンシップの予選として行われる産地別特別は十勝産駒特別が事実上の決勝戦と言われ、565kgのスーパーシンが、トップハンデ570kgのキョウエイエースを振り切った。
そして迎えたヤングチャンピオンシップ(12月29日)は、2強の馬連複が1.2倍と人気が集中。第2障害で最初に仕掛けたスーパーシンがすんなりひと腰で越えると、そのまま後続を寄せ付けず完勝。一方のキョウエイエースは障害3番手から一旦は2番手に上がったものの、残り10mで一杯になってまさかの4着。2着は北央産駒特別で2着だったウンカイダイマオー、3着は北見産駒特別1着だったアバシリタカラコマ。2強は明暗が分かれる結果となったが、キョウエイエースは別定20kg増で、スーパーシン(600kg)より10kg重い610kgというハンデがあっただけに、まだ勝負付けが済んだとはいえない。
年が明けて、牡馬限定の翔雲賞(2月2日)、そして2歳シーズン三冠目のイレネー記念(3月9日)となるが、引き続き2強を巡る争いとなりそうだ。
2歳牝馬では、白菊賞(特別・8月11日)を勝ち、いちい賞(特別・9月15日)で2着だったキョウエイカスミが10月までに4勝を挙げてリードしていたが、その後は賞金的に牡馬のトップクラスとの対戦となって足踏み。いちい賞を勝って3勝目としたマツサンブラックも同じように秋以降は足踏み。年末までに3勝、2着5回のウンカイマジックらが収得賞金では上位となっているが、2歳シーズン(明け3歳)女王決定性の黒ユリ賞(2月9日)に向けて、これから台頭してくる馬も出てきそうだ。
【3歳(明け4歳)】
この世代は、ヤングチャンピオンシップ、翔雲賞、イレネー記念と重賞3連勝を含め2歳シーズンの終盤に5連勝でシーズンを締めくくったライジンサンが、3歳シーズンの序盤は休養。初戦として出走したのが3歳一冠目のばんえい大賞典(7月7日)だったが、トップハンデもあって第2障害を越えてからの動きが重く7着。障害をひと腰先頭で越えたホクセイハリアーがそのまま押し切った。
二冠目のばんえい菊花賞(11月3日)でもホクセイハリアーが第2障害を先頭で越え、そのまま押し切るかに思えた。しかしゴール前で脚取りが鈍ったところ、差し切ったのが出走馬中唯一の牝馬スマイルカナで、ばんえいオークス(12月1日)も制した。スマイルカナは2歳シーズンには黒ユリ賞を制し、イレネー記念でもライジンサンの2着と、3歳になっても男勝りの能力を発揮している。
そして迎えた三冠目のばんえいダービー(12月30日)は、2歳シーズンのチャンピオン・ライジンサンが第2障害を先頭で越えると、ゴール前では一度詰まったものの、すぐに立て直して押し切った。ばんえい菊花賞は4着に敗れていたものの、その後自己条件を使われて調子を上げ、イレネー記念以来の勝利。ライジンサンは、2歳シーズン、3歳シーズンで頂点に立った。
そのほかこの世代では、ミチシオがばんえい大賞典2着、ばんえい菊花賞3着、ばんえいダービー2着と健闘。またウルトラコタロウは2歳時から通算して重賞で3着5回という成績で存在感を示している。
【4歳(明け5歳)】
この世代はタカラキングダムが4歳シーズン三冠馬となって、圧倒的な存在感を示した。2歳シーズンはばんえい大賞典、3歳シーズンはばんえいダービーと、それぞれ重賞は1勝ずつ。4歳シーズン序盤は、それまで稼いだ賞金でハンデに苦しめられ、同世代同士の特別戦でも、すずらん賞(4月27日)7着、ライラック賞(6月3日)4着と勝利には至らず。初勝利となったのは、4番人気で臨んだ一冠目の柏林賞(6月23日)で、そこからは連対を外さない快進撃。ひとつ下の3歳と混合の重賞・はまなす賞(8月25日)をトップハンデで制し、二冠目の銀河賞(9月22日)は牝馬のスーパーチヨコとは60kg差というトップハンデ750kgが課せられたものの、先に抜け出して単独先頭のクリスタルゴーストをゴール前でわずかにとらえて勝利。古馬一線級との対戦となったドリームエイジカップ(11月24日)は6着だったが、定量で争われる三冠目の天馬賞(1月3日)は、2番人気マルホンリョウユウが先頭で第2障害を抜けたところ、障害4番手から自慢の末脚で差し切った。
タカラキングダムの4歳シーズン三冠制覇では、柏林賞こそ差のない2番手から抜け出したが、銀河賞、天馬賞は、そこから届くのか?と思われるようなタイミングで第2障害を越え、しかし終わって見れば完勝という内容。4歳になって一気に本格化を見せた。それにしてもこれほどの追い込みで重賞を勝ちまくるというのは、かつてのフクイズミを思い起こさせる。
この世代でタカラキングダムに次ぐ存在は、3歳時にばんえい大賞典、ばんえい菊花賞の二冠を制したマルホンリョウユウで、4歳シーズンは柏林賞3着、天馬賞2着。年明け5歳馬でオープン格付けはこの2頭。
4歳2月から5連勝で成長を見せたクリスタルゴーストは、重賞初挑戦だった柏林賞で2着。はまなす賞、銀河賞でもタカラキングダムの2着に好走したが、天馬賞では第2障害を越えられず競走中止だった。
牝馬では、スーパーチヨコが銀河賞で3着に好走。4歳牝馬の重賞・クインカップ(11月10日)は3着だったが、トップハンデだっただけに、能力的にはこの馬が最上位といえそう。
【古馬】
古馬では、今シーズン最初の重賞・ばんえい十勝オッズパーク杯で、1着メムロボブサップ、2着アオノブラックという結果のとおり、今シーズンもこの2強が中心となって古馬重賞戦線が展開されると思われた。しかしアオノブラックが夏以降不振に陥り、メムロボブサップの天下となった。ドリームエイジカップ(11月24日)まで重賞5勝を含め8連勝。ばんえい競馬で、重賞を使われながらオープンクラスで連勝を続けるのは難しい。
メムロボブサップはこれまで、シーズン前半の重賞を勝ちまくり、後半の重賞では別定重量を課されてとりこぼすことが多かった。それゆえ今シーズンは、北斗賞(6月16日)、旭川記念(7月14日)という前半の重賞は自重。ばんえいグランプリ(8月11日)4連覇を達成すると、岩見沢記念(9月15日)、北見記念(10月27日)、さらに世代対抗戦のドリームエイジカップ(11月24日)は、いずれも初勝利。5頭立てとなった帯広記念(1月2日)を勝てば、史上初のばんえい古馬重賞全制覇となるところだったが、先頭で障害を越えたコウテイをとらえきず2着。今シーズン初の敗戦となった。負担重量はメムロボブサップ930kgに対し、ほかの馬たちは900kgか890kg。メムロボブサップは、これで帯広記念は3年連続930kgで2着。帯広記念をその重量で勝つのは難しい。
帯広記念を制したコウテイは、8歳ながらこれが重賞初勝利。昨年の帯広記念でも障害トップ抜けで3着と好走し、今シーズンは旭川記念、北見記念で2着と好走していた。そして帯広記念3着だったコマサンエースも、昨年のばんえい記念で3着好走があり、今シーズンはばんえいグランプリ2着のほか重賞3着が3回。この2頭はばんえい記念(3月16日)でも対抗格の評価となりそう。
今シーズン前半、メムロボブサップが不在となった北斗賞、旭川記念を連勝したのが、5歳(明け6歳)のクリスタルコルドで、急成長が目立った。ただその世代は4歳シーズン三冠を制したキングフェスタが最強という位置づけ。来シーズン以降、この2頭が古馬戦線における世代交代の中心として注目の存在となりそうだ。
文/斎藤修