レディスジョッキーズシリーズ園田レポート 「疲れない体の使い方ができているのかな」充実表情の木之前葵騎手(愛知)が優勝!

2025年03月27日

3月12日、園田競馬場で初めてレディスジョッキーズシリーズ(LJS)が行われました。平成の時代、インターナショナルクイーンジョッキーシリーズといって、海外から招待した女性騎手と地方競馬の女性騎手の交流レースがこの地で行われたことはありましたが、地方競馬の女性騎手のみで覇を競うLJSは初めて。園田・姫路競馬では2021年4月に佐々木世麗騎手がデビューするまで女性騎手がいませんでしたから、それも当然と言えます。しかし、近年は装鞍所の改築工事に合わせて女性用控室を作るなど少しずつ時代に合わせて進化。


今年のLJSは佐賀ラウンド2戦、園田ラウンド2戦で行われることとなりました。


園田でのLJS開催はファンにとっても待望だったようで、ウイナーズサークルには紹介式が始まる数レース前から人だかり。中島良美騎手(浦和)がエキストラ騎乗で4レースを勝つと、「おめでとう」「サインください」という声がたくさん聞こえてきました。





その4レースは中島騎手にとって今年初勝利ながら、見ていた地元記者は「昨日からの馬場傾向で一番いい位置につけてたね」と評価。本人は「掛かってるー、と思っていました」と言いますが、大山寿文調教師は「それくらいでこの馬はいいねん」と笑顔。先輩女性騎手からも祝福を受けていました。





和やかな紹介式を終えて、第1戦を勝ったのは地元の佐々木世麗騎手(兵庫)。ゲートが直線に入ったところに置かれる1230m戦で、最初のコーナーまでの距離が短くポジション争いが激しくなりやすいコースです。それでも、ゴール板の辺りで隊列はほぼ決まることが多いのですが、この時は違いました。


木之前騎手が逃げるかと思われたところ、1コーナーを回りながら外から並びかけたのが佐々木騎手。このタイミングで強気に位置を取りに行くのが彼女の武器でもあり、逃げ有利なこの日の馬場傾向を味方に押し切り勝ちを収めました。








「この馬に乗っていた大柿騎手から『流していっていいよ』とアドバイスをいただいていたので、馬の気持ちに任せて行ったら、勝てました」
と佐々木騎手。


2着は深澤杏花騎手(笠松)。
1コーナーまでハナ争いがもつれ込んだことでペースが少し速くなっていたため、差し馬に乗っていた彼女向きの展開となりました。
本人も「展開がハマったと思ったんですけど。あそこまでいったら勝ちたかったです」と悔しさを滲ませました。


ちなみに、騎乗馬の厩務員さんも女性で、LJSらしいコンビでした。





3着に塩津璃菜騎手(兵庫)。Bグループの騎乗馬ながら好ポイントを獲得しました。


検量室で泥を落としながら「ヤバい。表彰台にも残れないかも」と嘆いていたのは関本玲花騎手(岩手)。





4日前に行われた佐賀ラウンドでは写真のように和やかなムードで、佐賀第2戦も勝って暫定2位で園田ラウンドを迎えていましたが、ここは7着。


残す園田第2戦はAグループの騎乗馬が当たってはいるのですが、「次のレースは(木之前)葵さんで決まりでしょ。騎乗馬は時計が2秒も速いもん」とやや諦めムード。木之前騎手は佐賀第1戦を勝ち、最終戦を前にしても暫定1位ですから強力なライバルですが、それでもやっぱり表彰台には上りたい思いが伝わってきました。


そうして迎えた最終戦は、やはり木之前騎手が圧倒的に強い競馬を見せて勝利。騎乗馬は3カ月半の休み明けでしたが何のその。逃げ馬直後、園田では「ハコ」と呼ばれる絶好位につけると、4コーナーで外に出して抜け出す当地の王道競馬でした。








「LJSは騎乗馬の成績が順位を左右する部分があって、運が良かったです」


そう笑顔が弾けました。
そういえば、今年のLJSでは明るいキャラクターの木之前騎手の表情がいつも以上に生き生きしていたように思います。写真は佐賀ラウンド第1戦を勝った直後。





さらに振り返ると、ここ1~2年は充実した表情に感じることも多いかもしれません。
それについて聞いてみると、こう返ってきました。


「昔は体力がついてきていなかったのか、体が疲れていました。いまは調教頭数が2~3頭減ったにしても、余裕があります。色々とトレーニングをしたり、ホットヨガに最近通い始めました。体のバランスが持久力に関係していると思っていて、疲れない体の使い方ができているのかな、と思います。馬が好きだし、いま馬乗りが楽しくて仕方ないです」


この時の表情ったら、目を輝かせてキラキラ眩しかったくらい。
以前からトレーニングには取り組んでいて、ジムへの行き帰りも筋トレになれば、とロードバイクを漕いで行くなどしていました。そうしたことが少しずつ実を結んでいるんですね。


そう考えると、LJS優勝は騎乗馬のクジ運に恵まれただけでなく、木之前騎手自身のスキルアップもあるのでしょう。レースぶりを見ていても、安定感がありました。





2位は佐々木騎手。
地元開催とあって声援も多く、表彰式の合間にそれに地声で応える場面を見ると、優勝できずとも表彰台に上れたことは嬉しかったのでしょう。





一旦は諦めかけていた関本騎手は最終戦を3着にまとめて総合3位。なんとか表彰台を死守しました。





「ゴール前は内に(佐々木)世麗と(深澤)杏花がいて、この二人を抜かさないと表彰台はないぞと思っていました」


と胸中を話すと、すかさず深澤騎手が「私も3位ほしかったです」と悔しそうにツッコミ。深澤騎手は総合5位でした。





デビュー1年目でLJS初参戦だった塩津騎手は総合4位。


「第2戦はいけるかと思ったんですけど、勝ち馬が強かったです。2戦とも掛かり気味だったので、悔しいです」


ようやくデビューから丸1年を迎えようかというところで、まだまだ課題はたくさんあるのでしょうが、9番人気3着と6番人気2着は地元で存在感を示しました。





宮下瞳騎手(愛知)は不思議と女性騎手戦に縁がなく総合6位でしたが、昨年は自身2度目となる年間100勝達成など、その実力は誰もが知るところ。


総合7位は神尾香澄騎手(川崎)。
佐賀第1戦ではいい手応えで迎えた直線で進路が狭くなる不利がありながらも、しっかり切り替えて第2戦も騎乗しており、さすが激戦区の南関東でそれなりの数の騎乗を得ているだけあると感じました。


総合8位は中島騎手、9位に入籍したばかりの濱尚美騎手(高知)でした。


ちなみに濱騎手、3月3日に入籍を発表し、結婚後初勝利となったのがLJS佐賀翌日の高知7レース・ヴァンケドミンゴ。それがネットニュースになっていたよ、とレース前に伝えると、「え!そうなんですか。ヴァンケドミンゴ自身もJRA時代からファンの多い馬みたいですね。この馬はコンスタントに使えていたら、状態のいい証だと思っていただけたら」とのこと。LJSは残念でしたが、また地元・高知での活躍を期待しましょう。





文/大恵陽子