メムロボブサップに期待される数々の記録

2025年08月30日

 メムロボブサップが、8月10日に行われたばんえいグランプリを制し、5連覇を達成。ばんえいグランプリでは1991年から94年にアサギリが4連覇を達成したことがあったが、同重賞5連覇はばんえい競馬では史上初の快挙となった。
 
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ばんえいグランプリ5連覇を達成したメムロボブサップ(写真:ばんえい十勝)
 
 今年3月、ばんえい記念2勝目を挙げたメムロボブサップは、今シーズンまず最初の目標としたのがばんえいグランプリで、そこに向けて7月28日の特別・サマーカップで復帰。ばんえい記念直前の調教中に怪我を負い、ばんえい記念でメムロボブサップの手綱をとることができなかった主戦の阿部武臣騎手もまだ万全の体調ではなかったようだが、これに合わせて7月26日に復帰。迎えたばんえいグランプリでは、第2障害を先頭でクリアすると、確かな脚取りで後続を寄せ付けず、危なげなく勝利。
 勝利騎手インタビューで阿部騎手は、ファンからの歓声と拍手に涙で声を詰まらせる場面があった。ばんえい記念の乗替りと、復帰までの道のりはそれほどつらかったのだと想像される。
 そして調教師のコメントに「今後は帯広記念に向けて......」とあったように、今シーズン2つ目の大目標は、だいぶ先のことになるが、1月2日の帯広記念。帯広記念には、これまたばんえい競馬では史上初となる古馬重賞全制覇という記録がかかっている。
 
 メムロボブサップが今シーズン、それほどレースを絞って使われているのは、ばんえい競馬独特の賞金格付ルールのため。
 ばんえい競馬は4月から翌年3月が1シーズン。古馬重賞ではばんえい記念など一部のレースを除いてほとんどが別定重量戦となっていて、シーズンの前半で勝ちまくって賞金を稼ぐと、シーズン後半には別定重量を背負って勝つことが難しくなる。
 メムロボブサップがこれまで帯広記念を勝てなかったのはそのため。昨シーズン(今年1月2日)の帯広記念でも、他馬より30kg以上重い930kgを背負い、惜しくもコウテイの2着に敗れていた。帯広記念には2022年から毎年出走していて、9、2、2、2着。その4回とも、単独で最も重い930kgでの出走だった。
 そういうわけで今シーズンは唯一残された古馬重賞・帯広記念を勝つために、このあともレースを絞って使われると思われる。
 
 メムロボブサップが目指す記録はほかにもある。現在重賞は通算24勝。ばんえい競馬の重賞最多勝記録は、オレノココロによる25勝で、あとひとつで並ぶことになる。
 
 さらにメムロボブサップによって達成されそうな記録が、ばんえい競馬の収得賞金記録の更新だ。
 メムロボブサップは今年3月のばんえい記念を勝って、ばんえい競馬では史上8頭目となる通算賞金1億円を達成。スーパーペガサスが2006年に達成して以来19年ぶりのことだった。
 それほどこの記録が達成されなかったのは、売上減によって賞金が下がっていたため。重賞25勝のオレノココロもそうだが、その間、かつての1億円馬の成績と比較しても1億円に手が届いてもよさそうな実績馬は何頭かいた。それでも近年、ようやく馬券の売上とともに賞金も上昇してきたことで、メムロボブサップが久しぶりに1億円の大台に到達することになった。
 ばんえい競馬の収得賞金記録は、初代1億円馬で昭和の時代にその記録を達成したキンタローの1億1672万5000円。そして現在、メムロボブサップの通算収得賞金は1億578万7500円。帯広記念の1着賞金は昨シーズンまでの500万円から800万円にアップしており、帯広記念とあとひとつ重賞を勝てば到達する。また仮に帯広記念を勝てなかったとしても、昨年までの1000万円から一気に倍増の2000万円となったばんえい記念3勝目となれば、文句なしの記録更新となる。
 
 今シーズンのメムロボブサップには、ばんえい競馬におけるさまざまな記録を塗り替える可能性がある。
 
文/斎藤修

 

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