高知VS兵庫の戦いが熱い

2025年09月29日

 9月26日のその金ナイター開催で行われた1400mの重賞・園田チャレンジカップ。西日本地区の交流ではあったが、他地区からの遠征馬は高知のみ。しかも地元兵庫5頭に高知5頭の10頭立てという、兵庫VS高知の対抗戦のようになった。
 単勝1.8倍の断然人気に支持されたのは、中央所属の2歳時に兵庫ジュニアグランプリJpnIIを制したこともある兵庫のオマツリオトコだったが、勝ったのは高知のロレンツォ。2着にも高知のミスズグランドオーが入り、オマツリオトコは3着。以下4〜6着も高知が占め、オマツリオトコが高知勢の一角を崩したのみで、"対抗戦"としてみると高知の圧勝だった。
 
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高知のロレンツォが園田で重賞初勝利(写真:兵庫県競馬組合)
 
 近年「高知の馬は強い」と言われるようになり、今年高知所属馬では、ほかに園田で6月の園田FCスプリントを3歳牝馬のユアマイドリームが古馬の牡馬を相手に逃げ切ったのも印象的だった。
 
 とはいえ逆に、兵庫所属馬の高知での活躍も見逃せない。2月にはレジーナディンヴェルノ賞をサンオークレアが勝ち、今年から地方全国交流となった福永洋一記念をエコロクラージュが制した。そしてジュゲムーンに高知三冠がかかった黒潮菊花賞では、5番人気の兵庫・ラピドフィオーレがジュゲムーンに6馬身差をつけて圧勝。ラピドフィオーレは、今年高知での開催となった西日本3歳優駿も連勝。2着にキミノハートが入り、西日本3歳優駿は兵庫所属馬のワンツーだった。
 
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黒潮菊花賞を制した兵庫のラピドフィオーレ(写真:高知県競馬組合)
 
 近年は高知の黒船賞JpnIIIでも兵庫所属馬の好走が目立っている。2022年に制したイグナイターは、翌23年にも3着。24年は高知のヘルシャフトが2着に入ったが、兵庫のタイガーインディが3着。そして今年はアラジンバローズが3着。ダートグレードで4年連続、馬券圏内という活躍ぶりだ。
 
 先に、<近年「高知の馬は強い」と言われるようになった>と書いたが、じつは強くなったのは近年のことではない。高知所属馬は、馬券の売上が落ち込み、賞金もどん底だった頃から他地区への遠征で活躍していた。
 2008年には田中守厩舎のスペシャリストがオグリキャップ記念(笠松)を勝利。中央準オープン(現3勝クラス)から雑賀正光厩舎に移籍したグランシュヴァリエは、その初戦として遠征した2010年1月の報知オールスターカップ(川崎)で1/2馬身差2着に好走すると、同年のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIでは4コーナーで先頭に立とうかという勢いで3着に激走した。
 高知優駿の1着賞金が27万円、高知県知事賞が135万円という時代だ。
 当時の話を雑賀調教師にうかがうと、「応援してくれる馬主さんがたくさんいて、強い馬を入れてくれた」というが、それにこたえて遠征で結果を出した関係者もすばらしい。
 高知競馬の売上は、1990年以降でもっとも落ち込んだ2008年度が年間約39億円だったが、2024年度は999億円余り。16年で約25倍と、驚異的に売上を伸ばした。これによって、いま、高知優駿の1着賞金は1600万円、高知県知事賞は2000万円となっている。
 
 こうして高知競馬は、瀬戸内海を挟んだ兵庫の馬たちと高いレベルで切磋琢磨し、西日本の地方競馬を盛り上げているのだが、興味深いのは売上面でも同じレベルで争っていること。
 基本的に、高知競馬は週2日、兵庫は週3日と、開催日数が異なるため、年間の売上では比較にならないが、2024年度の1日当たりの平均売得額では、高知が約9億2570万円に対して、兵庫が約7億8730万円。四国の一地方都市に過ぎない高知の競馬が、大阪・神戸という巨大都市の商圏にある兵庫の競馬を追い越してしまった。今や高知の1日平均の売上は、南関東4場に次いで全国の地方競馬で5番目となっている。
 
 とはいえグレード勝ち馬という面で見ると、兵庫所属馬では近年だけでもイグナイターが2023年にJBCクラシックJpnI(大井)を制し、昨年はアラジンバローズがサマーチャンピオンJpnIII(佐賀)を制したのに対して、高知所属馬のグレード勝ちは、1998年、第1回黒船賞GIIIをリバーセキトバが制したのが唯一となっている。
 さて、9月30日の白山大賞典JpnIII(金沢)で、シンメデージーが高知所属馬として2頭目のグレード勝ち馬となるか、注目だ。
 
文/斎藤修

 

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