目覚ましい新人騎手のレベルアップ
2025年02月27日
JRAではまもなく新人騎手がデビューを迎え、地方競馬でも3月下旬には騎手免許試験合格が発表され、4月1日以降に新人騎手が順次デビューとなる。
それで思うのは、近年デビューしてくる新人騎手のレベルアップが目覚ましい、ということ。
NARグランプリ2024で最優秀新人騎手賞に輝いた加藤翔馬騎手(金沢)は、デビュー2年目で112勝を挙げた。ちなみにこの2024年は4月にデビューした望月洵輝騎手(愛知)も実質9カ月で95勝を挙げていたが、受賞は加藤騎手ということになった。
NARグランプリ最優秀新人騎手賞(2022年までは優秀新人騎手賞)の規定は、「前々年の3月31日以降に新規に免許を取得し、前年の地方競馬、中央競馬及び地方競馬登録馬による外国の競走で30勝以上をあげた地方競馬の騎手を対象に、勝利回数、収得賞金額、勝率、重賞競走成績等を総合的に評価して最も成績が優秀であった者」となっている。
大雑把に言うと、デビュー2年以内の騎手から成績優秀者が選ばれる。
そして、2019年以降の受賞者の当該年の勝利数を一覧にすると...
2024 加藤翔馬(金沢) 112勝
2023 山田義貴(佐賀) 118勝
2022 塚本征吾(愛知) 84勝
2021 飛田愛斗(佐賀) 145勝
2020 小野楓馬(北海道) 68勝
2019 岩本 怜(岩手) 87勝
これ以前の優秀新人騎手賞受賞者の当該年の勝利数は、おおむね50〜60勝台が多く、年によっては30勝台で受賞している騎手もいる。そう考えると、近年の新人騎手賞争いのハードルがいかに高くなっているかがわかるだろう。
なお、これ以前に80勝以上を挙げて受賞したのは以下。
2011 島津新(ばんえい) 86勝
2001 吉原寛人(金沢) 95勝
2000 御神本訓史(益田)152勝
1997 岡田 大(益田) 110勝
御神本騎手の152勝というのが目を引くが、デビュー年が80勝で、これは2年目の数字。2年目でいきなり益田リーディングのトップに立った。一方、吉原騎手の95勝はデビュー年のもので、4月デビューから約9カ月でこの数字をマークした。
なお、NARグランプリの表彰は1990年から行われているが、1994年までは表彰者はわかるものの、手持ちの資料では勝利数がわからなかったので、1990〜94年の記録は含まれていない。
そして近年では新人騎手だけでなく、女性騎手のレベルアップも著しい。
優秀女性騎手賞も、かつては50勝程度かそれ以下で選ばれることが多かった。また「最優秀」ではないので複数名が受賞することもめずらしくなく、2006年に3名が同時受賞ということもあった。
この賞のハードルを上げてきたのが、2024年に、じつに14度目の受賞となった宮下瞳騎手(愛知)といえる。2020年には国内の女性騎手として初めて年間100勝を超える105勝をマーク。そして2024年は116勝として自身の記録をさらに更新した。
一方で、新人騎手、女性騎手の成績が上がったことによって、ここ2年、不運にも受賞を逃したといえるのが、ばんえいの今井千尋騎手だ。
今井騎手は2022年12月にデビューし、2023年にはいきなり103勝をマーク。ばんえい競馬の騎手として、デビューから通算100勝達成の最短記録を更新した。その2023年には優秀女性騎手賞を受賞。年間3桁の勝利は、年が違っていれば優秀新人騎手賞とのダブル受賞にもなっただろうが、この年は冒頭の表のとおり、山田義貴騎手(佐賀)が118勝で上回った。勝利数だけでなく、勝率でも、重賞勝ちがあったことでも山田騎手が上回っていたので、残念なが今井騎手は新人騎手賞のほうは逃すという、レベルの高い争いだった。
そして今井騎手は、2024年にはさらに自身の記録を伸ばして105勝。新人騎手賞の対象からはすでに外れていて、優秀女性騎手賞ならと思われたが、前述のとおりさらに上をいく116勝の宮下瞳騎手がいた。3桁勝利であれば、かつてのように優秀女性騎手賞2名でもよかったように思うが、残念ながらそうはならなかった。
今井騎手には次年度以降、幸運が訪れることを期待したい。
文/斎藤修