「2024 IWATE KEIBA AWARDS」授賞式報告~3/9開幕へ

2025年02月27日

岩手競馬は2ヵ月あまりの冬休みが明け、3月9日(日)から再開する。それに先立ち2月7日(金)、盛岡・水沢両競馬場で「調教始め式」を実施。"安全祈願祭"、"馬場清め"を行った。


例年は同日に馬場を開放していたが、折からの寒波襲来による影響で水沢競馬場は2月10日(月)、盛岡競馬場は2月12日(水)まで馬場入れがずれ込んだものの、以降は3月競馬へ向けて着々とトレーニングが進んでいる。


競馬再開へ弾みをつける行事が毎年恒例の「2024 IWATE KEIBA AWARDS」授賞式。今年もホテルメトロポリタン盛岡NEW WING」を会場に2月14日(金)、来賓、競馬関係者、ファンなど約200名が出席。授賞式および交流会が盛大に行われた。


司会はテレビ岩手アナウンサー・中島あすかさん(年度代表馬選考委員会にも出席)、IBC岩手放送・徳岡伶美アナウンサーが務め、式冒頭に岩手県競馬管理者・達増拓也岩手県知事があいさつをした。
「昨年岩手県競馬組合が設立されて節目の60周年を迎え、ダートグレード競走を4ヵ月連続で実施。年度当初の売り上げ計画を上回り、岩手競馬を支持してくれるファンの皆さん、競馬関係者の努力に感謝します」


続いてきゅう舎関係者等表彰(別掲)、岩手県競馬組合創設60周年感謝状贈呈、岩手競馬アワード授与式が行われた。 まず壇上に立ったのは最優秀牝馬ミニアチュール、最優秀短距離馬ゴールデンヒーラーの関係者。2頭ともオーナー・平賀敏男さん、佐藤祐司調教師、渡辺正彦きゅう務員のゴールデントリオで二部門を授賞した。





平賀敏男さん「ゴールデンヒーラーが無事、生まれ故郷の下河辺牧場さんへ移動。繁殖生活に入ったことを報告します。現役時代の5年間はあっと言う間でした。佐藤祐司調教師、渡辺くんが一生懸命に手をかけてくださったおかげです。思い出に残るレースはマイルチャンピオンシップ南部杯5着(2022年)。JBCレディスクラシックは脚部不安のため出走取り消しをしましたが、重賞11勝もしてくれました。今後はいいお母さんになってほしいと思っています。ミニアチュールは小柄な牝馬ですが、シーズン最後の桐花賞でクビ差2着。2000mでも頑張りを見せてくれて私も感動しました。今年5歳になりますが、これからも岩手競馬を盛り上げていってほしいと思っています」
佐藤祐司調教師「ゴールデンヒーラーは2歳で華々しい活躍をしてくれましたから3歳牡馬クラシックに挑戦させましたが、近年にないハイレベル。今振り返ると申し訳なかったと思いますが、引退式まで行っていただき、多くのファンに見送られました。ミニアチュールは門別から転入時、まっすぐ走らないから気をつけてくれと言われましたが、実習時代の(佐々木)志音に乗せたら問題なかった。ですから移籍2戦目以降は重賞路線を歩ませました。桐花賞でもあれだけ走ることを証明しましたからね。牝馬で難しい面がありますから、じっくり使うレースを考えたいと思っています」


2歳最優秀馬ポマイカイは菅原勲調教師、ガンガ・シンきゅう務員が出席した。アワード最優秀馬の担当きゅう務員では初めてインド人の授賞となった。会場にはサリーを身にまとった奥さんとお子さんも来場。岩手競馬も国際色が出てきたなと思ったのは自分だけではないはず。
菅原勲調教師「明日(15日)福島県の、テンコートレセンから帰厩します。今後のローテーションについては白紙です。まずは現時点での成長度合い、状態を把握したいと思っています。新馬戦は思った以上に走ったが、その後は折り合い面で難しいところを出していました。ひと冬を越して距離延長にも対応できるか、見極めたいと思っています。姉(ダイセンメイト)はうちのきゅう舎で年間11勝もした上、昨年は早池峰スーパースプリントを勝ってくれた。その弟でしたし、体も良かったので馬主さんにすすめましたが、1000万レース(ネクストスター盛岡)を勝ってくれてホッとしました」





4歳以上最優秀馬はヒロシクン。壇上に佐藤雅彦調教師、佐藤航紀きゅう務員、そして主戦の高松亮騎手が壇上に上がった。
高松亮騎手「最初、騎乗した印象は子供っぽいけどかわいらしい馬―でした。最初はB級スタートでしたが、重賞3勝するまで成長してくれて本当にうれしいです。自分は首を骨折しましたが、しっかり治して今年もヒロシクンといっしょに成長していけたらと思っています」
佐藤雅彦調教師「B級で3連勝をした後、当時入院中だったオーナーの瀬谷隆雄さんを元気づけたいと思い、一條記念みちのく大賞典へ挑戦しました。桐花賞まで地元同士の戦いでは負けなし。オーナーも非常に喜んでくれました。ヒロシクンは常にマイペースの馬ですからね。どの距離がベストなのか分からないのが正直なところ。今年はいろいろ試しながらローテーションを決めたいと思っています」





馬事文化賞は『持続可能は馬資源の活用を目指す』ジオファーム八幡平 企業組合八幡平地熱活用プロジェクト代表理事・船橋慶延さん、全日本総合馬術・内国産総合馬術初代王者・菅原権太郎さん(日本大学職員)のお二人。
授賞式が終わり、交流会が始まる約15分の間、とある方が声をかけてきた。2006年当時、水沢青年会議所理事長の石川悦也さんだった。ご記憶の方もいるかもしれないが、同年6月、福永祐一元騎手(現調教師)が水沢競馬場の一日場長を務めてくださったが、実現に向けて尽力した中心人物が石川さんだった。
久々の再会に加え、場所がアワード受賞式だったので、思わず「なんで今日いるんですか?」と失礼な質問をしてしまった。
「実は菅原権太郎は長男。そして次男は現在、ジオファーム八幡平に従事していますから家族でダブル授賞です」と石川悦也さん。驚きを越して二人で大笑いしてしまった。これもかつて馬産地、馬の育成で名を馳せた岩手ならではだと思った。
すかさず隣にいた菅原健太郎さんに話を聞いた。「今後の乗馬を考えたとき、内国産部門の創設は意義あることですよね」。明確な返答だった。
「馬術競技で主流はヨーロッパ産ですが、日本のサラブレッドは現在、世界レベル。競馬で一流レベルの成績を残したサラブレッドが、乗馬へ転向しても活躍するケースは数多くあります。引退後、選択肢の一つとして積極的にお誘いしていきたいと取り組んでいます」
3月競馬が再開したら石川さんが経営するジャマイカ料理店「ROYALジャマイ館」に行こうと思っている。水沢駅(東北本線)東口から徒歩10分、水沢競馬場にも2キロ圏内。興味がある方は是非、訪れてみてください。





トリはもちろん満場一致で選ばれた年度代表馬および3歳最優秀馬フジユージーンの関係者。
有限会社富士ファーム代表・川口巌さん。「一昨年はフジラプンツェルで2歳最優秀馬。昨年はフジユージーンで2歳最優秀馬。今年は年度代表馬、3歳最優秀馬に選んでくださり、みなさんに感謝しております。印象に残っているのはジャパンダートクラシック挑戦。負けはしましたが、馬が育った気がします。楠賞ではスタートがうまくいかなくてひやひやしましたが、村上騎手が落ち着いて乗ってくれました。びっくりするくらい全国にファンが多くて、注目度がすごく高い馬だなと思っています。私自身が鞍つけから始まり、馴致しましたからより思い入れが強い馬。来シーズンの活躍も期待しています」
瀬戸幸一調教師「使う度にプレッシャーは大きかったですけど、その中でも調教などをきっちりやってくれたので、自信を持って出走させることができました。状態づくりがすごく難しく、スタッフのみんなが真剣に考えてくれていました。今年は昨年と同じくらいのペ-スで出走させたいと思っています」
フジユージーンの最大目標はJpnI・マイルチャンピオンシップ南部杯だと公言済み。そこへ向けてどのようなステップを踏んでいくのか、みなさんも注視してほしい。





岩手県競馬組合厩舎関係者等表彰
調教師部門
最優秀勝利回数 佐藤雅彦
最優秀賞金獲得 菅原勲
最優秀賞率   菅原勲


騎手部門
最優秀勝利回数 山本聡哉
最優秀賞金獲得 山本聡哉
最優秀勝率   山本聡哉
ベストフェアプレイ賞 村上忍
通算勝利2500勝 山本聡哉
通算勝利2000勝 阿部英俊
新人騎手      坂井瑛音





写真提供:岩手県競馬組合
文:松尾康司