NARグランプリレポート VOL2
2025年02月14日
2月3日に都内で行われたNARグランプリ授賞式のリポート第2弾。
今回は各賞を受賞した競走馬と調教師について、競馬リポーターの大恵陽子がリポートをお届けします。
【年度代表馬】ライトウォーリア
2024年の年度代表馬に輝いたのはライトウォーリア。JRA時代はその気性からレース展開一つで能力を発揮できる時とそうでない時があったのですが、22年夏に地方競馬の川崎に移籍すると、逃げるレースで強さを発揮していきました。そして昨年2月、川崎記念JpnIを逃げ切り勝ち。
秋には韓国・コリアカップに遠征して4着など、地方競馬を代表する活躍を見せました。
吉原寛人騎手
「年度代表馬の背に乗れたことをすごく誇りに思いますし、感謝しています。年明け初戦の報知オールスターカップでは状態が良くて掛かりすぎて、気を付けないといけないなと思っていましたが、川崎記念の返し馬ではさらに前向きになっていて、もっと気を付けないといけないなと思っていました。そこがピークなくらい、一番いい状態でした。
レースは4コーナーでもひと踏ん張りしてくれて、会心の勝利でした。ゴールでは大きなガッツポーズが出てしまいました」
なお、吉原騎手は特別賞も受賞。
地方通算3000勝達成、地方競馬全場(現存する平地)での重賞制覇などメモリアルな一年でもありました。
内田勝義調教師
「このような大きな賞をいただき、感謝しかありません。これもひとえに、川崎記念で激走してくれたおかげです。
秋のコリアカップは初めての海外遠征でしたが、そのわりにはいい雰囲気で出走できたと思います。ゲートボーイを見てスタートで遅れた分、前に行けませんでしたが、3コーナーからの脚を見て『おぉ!もしかしたら』と感じました。JRA時代はそういうレースをすると全然ダメだったので、この形で競馬ができたことはプラスでした。
今年も報知オールスターカップから川崎記念というローテーションを予定しています」
【最優秀勝利回数調教師賞】【最優秀勝率調教師賞】打越勇児調教師
「馬主やスタッフ、ジョッキー、ファンの皆様に恵まれての結果で、嬉しく思います。昨年はできすぎなくらいでしたが、人と馬との縁や運に恵まれました」
地元ではプリフロオールインで高知三冠を達成し、シンメデージーではダート三冠のうち東京ダービーとジャパンダートクラシックに出走し、4着、5着でいずれも地方最先着を果たしました。
「新しいレース体系もあり、チャレンジできてよかったです」
地方全国リーディングは5回目の受賞で、24年に挙げた232勝はキャリアハイ。そして最優秀勝率調教師賞は初の受賞となりました。
収得賞金も全国2位。賞金トップは例年、賞金の高い南関東所属の調教師ということを考えると、高知からのランクインは素晴らしいことです。
高知競馬が売り上げ増に伴い、賞金もアップしたことに加え、前述のダート三冠をはじめ他地区へ遠征して結果を残したこともあと押ししたことでしょう。"準三冠"となりました。
【最優秀賞金収得調教師賞】小久保智調教師
「こればっかりは自分一人でできるものではないので、オーナー、スタッフのみんなに感謝しています」
昨年挙げた160勝はキャリアハイでしたが、小久保調教師は少し悩みながらこう話しました。
「数字は出るけど、代表馬を出していません。どっちを重視したらいいのかなというのが悩みです。目指しているのは、目の前の馬にいかに最大のパフォーマンスを出し切らせるかなので、そういうところでは納得できる部分があります」
さて、ここからはオッズパークともゆかりの深い競馬場所属の馬を中心に、各部門の受賞馬を見ていきましょう。
【最優秀短距離馬】アラジンバローズ
昨年の短距離界ではスマイルウィがテレ玉杯オーバルスプリントJpnIIIを勝つなど、地方馬によるダートグレード制覇が複数見られました。
そうした中、サマーチャンピオンJpnIIIを勝ち、JBCスプリントJpnIで地方馬最先着の3着に入ったアラジンバローズが最優秀短距離馬を受賞しました。
JRA時代、ダート1700m~1800mで3連勝してオープン入りした同馬は23年秋の兵庫移籍後も中距離を主戦場としていました。しかし、移籍初戦の鳥栖大賞(2000m)こそ勝ったものの、道中は掛かって力を発揮しきれないレースが続いていました。
転機が訪れたのは昨夏のマーキュリーカップJpnIII。
地方移籍後初のコーナー4回の競馬は陣営の予想以上に折り合えていい雰囲気で運ぶことができました。
そこでレース後、下原理騎手は「1400mがいいかもしれません」と、新子雅司調教師に提案。なぜ1400mかと言うと、拠点とする西日本では小回りコースとなるため、コーナー4回のレースはこの距離になるのです。
そこで矛先を向けたのが佐賀のサマーチャンピオン。台風の影響で3日順延となり、佐賀県へ輸送途中だった同馬は山口県内で引き返して地元に一旦戻り、再輸送となりましたが、それを跳ね除けての優勝でした。
さらに、追い切りから抜群の雰囲気を見せていたJBCスプリントでは同厩舎で22年、23年のNARグランプリ年度代表馬のイグナイターを退けての地方最先着。
今年はさらなる活躍が期待されます。
【特別表彰馬】ラブミーチャン
昨年8月31日に亡くなったラブミーチャン。
現役時代は笠松所属で全国のダートグレード競走で活躍し、引退後は地元ではその功績を称え、2歳牝馬による重賞が「ラブミーチャン記念」と名付けられました。
無敗のまま全日本2歳優駿JpnIを制し、2歳ながらNARグランプリ年度代表馬を受賞。
3歳春にJRA阪神競馬場で行われたフィリーズレビューGIIに出走時には大応援団も駆け付けていました。
【2歳最優秀牡馬】ソルジャーフィルド
JBC2歳優駿JpnIIIの勝利は地方馬としては4年だったソルジャーフィルド。その後の全日本2歳優駿JpnIでも地方馬最先着の3着に入りました。
【2歳最優秀牝馬】プラウドフレール
プラウドフレールは大晦日の東京2歳優駿牝馬を勝利。年末に南関東で行われる2歳女王決定戦を制しました。
【3歳最優秀牡馬】サントノーレ
3歳最優秀牡馬はダート三冠で地方最先着を2回果たしたシンメデージーとサントノーレが同数票を獲得しましたが、委員会規定に基づき、委員長によりサントノーレが選定されました。
春に京浜盃JpnIIを7馬身差をつけて圧勝し、ダート三冠初年度からサントノーレが地方代表として活躍するのでは、と期待が寄せられていましたが、直後に骨折が判明。春は休養を余儀なくされましたが、復帰初戦の戸塚記念を勝ち、ダート三冠最終戦のジャパンダートクラシックに間に合いました。そこでは7着でしたが、昨年ダートグレード制覇を果たしたことが受賞の大きな決め手となったことでしょう
【3歳最優秀牝馬】ローリエフレイバー
前年の東京2歳優駿牝馬を勝ったローリエフレイバー。24年はロジータ記念のみの勝利でしたが、地方全国交流重賞を勝ったことが評価されました。
【4歳以上最優秀牝馬】キャリックアリード
昨年、ダートグレード競走で地方最先着を果たすこと4回。グランダム・ジャパン古馬の春・秋シーズンを連覇しました。
【ダートグレード競走特別賞馬】フォーエバーヤング
この賞はもうこの馬しかいないでしょう。アメリカ・ケンタッキーダービーで僅差の3着で、世界の頂に手が届きかけた興奮と悔しさを日本の競馬ファンに味わわせてくれたダート馬が、秋初戦に大井競馬場で行われたジャパンダートクラシックJpnIに登場。管理する矢作芳人調教師、鞍上の坂井瑠星騎手ともに父が大井競馬場の元調教師と元騎手で、彼らにとってはルーツとなる地で力強い走りを見せると、ブリーダーズカップクラシック3着を挟み、年末には東京大賞典GIも勝利。JRA馬が、所属の垣根を越えて地方競馬を大いに盛り上げてくれました。
【3歳ダート主要競走出走馬主への記念楯贈呈】
昨年は新競走体系が始まり、ダート三冠や3歳短距離路線の整備など改革年でした。そこに積極的にチャレンジした地方馬からは上位入着を果たす活躍も多く見られ、今回のNARグランプリ授賞式では、3歳ダート主要競走(羽田盃・東京ダービー・ジャパンダートクラシック・兵庫チャンピオンシップ・関東オークス)で5着以内に入った地方馬の馬主に記念楯の贈呈が行われました。
【ばんえい最優秀馬】メジロゴーリキ
帯広記念、ばんえい記念と高重量戦を制し、ばんえい記念をもって現役を引退したメジロゴーリキが受賞しました。
あいにく関係者の出席はありませんでしたが、力強いレースを見せてくれました。
文/大恵陽子