オートレースのスタート
2024年06月28日
スタートに関する話
オートレースにおいてレースの展開を大きく左右する可能性があるスタート。オートレースでは車が止まった状態からスタートするが、選手によって車の出て行き方が違う。また、ハンデ位置によっても有利不利があり、レース序盤の展開に影響を与える。今回は、どういった流れで選手がスタートを切るのかや、ハンデ位置がどのような意味を持つのかなどを考察していきたい。
まず選手はレースを開始する前に所定のスタート位置に付く。そこではエンジンがかかった状態で、ギアはニュートラルに入れられている。そして、スタートの大時計が動き始める前にクラッチを握り、ギアをローに入れておく。そこから大時計の針がゼロになるのに合わせてクラッチを離し、エンジンの動力をタイヤに伝える。
この時、ある程度グリップを開けた状態でクラッチを離すことになるのだが、グリップを開け足りないと車が出て行く時に加速が乗らないし、グリップを開けすぎるとエンジンの動力が一気に加わりすぎてフロントタイヤが浮いてしまったり、リアタイヤが空回りしたりする。このグリップの開け具合が絶妙な選手が、いわゆるスタート巧者と呼ばれることが多い。他にもグリップの開け具合だけではなく、クラッチレバーの離し方も大事で、クラッチレバーを一気に離すと動力が一気に伝わり、正常なスタートになりにくくなる。逆にクラッチレバーをゆっくり離すと動力が伝わるのが遅くなり、車の出て行き方が鈍くなる。ただし、このクラッチレバーの離し方は選手によって違いがあり、先述のとおり一気に離すという選手もいる。そうなると正常なスタートが切りにくくなりそうなものだが、それでも正常なスタートを決める選手もいる。グリップをちょうどよい加減で開けることができる選手だ。よく選手が「スタートの切り方を変えている」とコメントしている場合は、このグリップ開閉とクラッチレバー操作の修正していることを指す。スタートの巧拙は、センスによるところが多いようにも思えるが、スタートの切り方を変えたり練習を繰り返すことによってスタート力が向上することもある。
ハンデ位置によるスタートの有利不利は、基本的に内枠が有利。同じハンデ位置に数車並んでいる場合は、内枠の方が1コーナーに近い分、先に飛び込んで行ける可能性が高まる。これは0メートル線からのスタートよりも、10メートル、20メートルとハンデが後ろからのスタートになる時の方が顕著にその傾向が表れる。なぜならハンデ位置が後ろになればなるほど、スタートラインに角度が付いて、内枠の方がより1コーナーに近くなるからだ。つまり重いハンデからスタートする場合よりも軽いハンデからスタートする場合の方が、まだ外枠から先行するケースが多く見られる。逆に重いハンデ、例えば30メートル線や40メートル線で数車並んでいる場合の内枠は断然有利になる。こういった状況を踏まえてスタート後の位置取りの想定をすると、より確度を高めて行うことができる。
文/高橋
夏場の狙い
2024年06月21日
オートレースファンの間で定説になっている事柄はいくつかあるが、その内の一つ、夏場は軽ハンの選手を狙えという常識がある。確かに冬場よりは夏場の方が軽ハン勢の活躍が目立つのだが、そこにはどんな理由があるのか。今回の当ブログで考察していきたい。
夏は暑い。気温が高くなるので当然、走路の温度も高くなってくる。一般的に競争車のタイヤは走路の表面が冷えている時の方が食い付きが良くなる。逆に走路の表面が熱くなるとタイヤの食い付きが悪くなり、グリップを欠くことになる。各レース、みんな同じ気象状況で走っているので、条件は同じではないかという意見もある。ただ、オートレースの特徴であるハンデ戦では、この状況は逃げる側と追う側に大きな違いを生じさせる。
レース中は基本的に各選手は好きなコース取りで走りたいもので、一番前を走っている選手は好きなコースを走れる。後ろから追う側が1着になるためには前を走る選手を抜かなければならない。そして、インから抜く時は前を走る選手の内側に車を押し進めることになる。この時、タイヤに通常以上の負担がかかることになるが、タイヤが走路に食い付きのいい冬場ならそれも耐えられる。しかし、食い付きの悪い夏場だとグリップを失って車が外に流れかねない状況になる恐れがある。そのため、前を走る選手を抜きづらくなる。つまり、前から走る選手は抜かれづらくなるので軽ハンの選手を狙えとなる。
結論を言うと夏場は全選手のタイヤのグリップが悪くなるという条件は同じだが、追う側は人を抜く時にタイヤに負担をかける走りをしなければならないので不利になるということ。
これは走路温度が最も高くなる真夏の方が顕著にこの傾向が表れやすいかといえばそうでもない。もちろん走路温度が高ければ高いほどタイヤが食い付きにくくなるのだが、真夏になる頃には各選手、暑さ対策も多少取られるようになる。むしろ、冬場から夏場に移行する時期、特に夏に近づく6月ぐらいの方が、これまで食い付きの良かった体感とはズレが生じ、追い込みの効きづらさが目立つようになる。つまり、今の時期の方が軽ハン勢の連絡みが増え始める印象がある。そして、車券的にも軽ハンの選手は人気になりづらいので高配当をゲットできるチャンスが大きくなる。こういったことを踏まえて車券戦術を練るのも面白い。
車券の狙い方は一年通して同じではない。重走路やブチ走路でも車券の買い方は変わるし、走路温度の変化によっても狙い目は変わってくる。また、一日を通してでも同じではない。15時ごろが第1Rになるナイター開催では、まだ昼間の時間帯に行う前半のレースと、夜の時間帯になる後半レースで展開が変わってくるのはよくあること。これまで述べてきたことを考慮すると、ナイター開催の前半レースは軽ハン狙い、後半は追い込み重視でいいとなる。もちろん、競争をする選手たちには好不調があったり、走りに特徴があったりするので、それによってもレース展開は変わってくるという大前提はあるが...。
文/高橋
2級車の特徴
2024年06月14日
2級車とは
現在、オートレースで使用されるエンジンは大きく分けて2つ。スズキ製のセア(Super Engine of Auto Raceの頭文字でSEAR)で、排気量が500ccの2級車と600ccの1級車。選手が新人としてデビューしてから約1年半は、2級車での競走を強いられる。その後は1級車に乗り換えて、企画レースでもなければ1級車に乗り続けることになる。では、この排気量の違う1級車と2級車ではどのようなことがレースに影響するのだろう。2級車の特性をメインに述べていく。
性能
1級車と比べて排気量が少ない分、グリップを開けた時のパワーが違う。具体的にはスタート時や、グリップを1度絞って再び開ける時の車の進み方が良くない。そのため、スタートダッシュが付きにくいし、コーナーの立ち上がりでの加速が非常に良くない。2級車に乗っている選手が、ハンデが後ろの選手にスタートで叩かれるシーンが多いのはこのためでもある。もちろん、スタート切り方やクラッチミートが巧い新人なら後続の選手に叩かれず安定して出ていくことも多い。しかし、エンジンパワーの差は明らかにある。
コース取り
2級車はスタートを切って周回を重ねる時に、大きなコースを通ることが多い。小さいコースを通るとなると、コーナーの入り口でグリップをある程度絞らなくてはならない。遠心力のことを考えると、スピードが乗ったままではコーナーを回り切れないからだ。そして、コーナーの立ち上がりで再びグリップを開けることになるのだが、その時パワーがない分、トップスピードになるまでに時間がかかる。大きなコース取りをすると、コーナーの入り口でそこまでグリップを絞らなくてもよくなる。そして、立ち上がりでもスピードがそんなに落ちていないので、トップスピードになるまでに時間がかからない。
実情
結果としてコース取りが大きくなって走る距離が増えたとしても、短い時間で1周を回ることができる。2級車での競走で早くゴールを迎えるとなると、コース取りはほぼこの1択になる。先頭を走っている時は自分の好きなコースを走れるので問題ないが、ハンデを背負ってのレースとなると難しくなる。前を走る選手が大きなコース取りをしていると、なかなか抜けない。その選手より更に外を回らなくてはならないからだ。
例外
しかし、最近ではその常識を打ち破る走りをする選手が登場している。36期の栗原佳祐選手や37期の浅倉樹良だ。デビューしてから快進撃を続け、早々とハンデを背負うレースが増えていったが、当初はこれまでの新人と同じように人を抜いていくレースに苦しんでいた。もちろん、スピードの違いで外から交わして好成績を残すレースもある。しかし、稀に内から抜いていくケースも見られるようになった。普通なら内から抜くとなるとコーナーの入り口でグリップを絞ることになるので、コーナーの立ち上がりで車速が乗らなくなるのだが、この両者はあまり車速が落ちず立ち上がっていけている。競走車のコントロール、巧みなグリップワークがなせる業だと思うのだが、やはりレースセンスが高いのだろう。1級車に乗り換わった時、どんな強烈な走りを見せてくれるのか、今から楽しみでならない。
文/高橋
レース場の特徴知れば、雨走路も怖くない!
2024年06月07日
まもなく梅雨入りシーズンとなりますが、オートレースは晴走路と雨走路では、ガラリと予想が変わる事が多いのは常識ですね。
今回は川口、伊勢崎、浜松、飯塚、山陽の5場別にそれぞれの「雨走路」に注目し、その走路の特徴を考えたいと思います。降水量や乾き具合による差違はありますが、それぞれの場に個性があるので予想の参考にしたい所です。
まずは埼玉県川口市にある「川口オート」の雨走路。2022年11月に走路改修が終了して、新走路となりましたが、1年半を経過してやっと落ち着いてきました。走路改修が終わった当初は、「黒潮がついていない」「走路上の油分が落ち着いていない」などの理由で軽ハン勢の頑張りが目立ちましたが、現在ではまずまず食い付く雨走路に変化してきてた印象です。食い付くコースですが、インかアウトと一概には言えず、「インコースのやや外目」が利く印象です。
次に群馬県伊勢崎市にある「伊勢崎オート」の雨走路。2023年5月に走路改修が終了して、約1年が経ちました。新走路になった当初からきっちり追い込みも決まるイメージで、新走路特有の軽ハン勢が有利という印象はないです。食い付くコースは「中バンク」といわれる中間コースからやや外がいいと聞きます。また、特に伊勢崎は地元の選手が連に絡んでくるイメージがあります。
続いて静岡県浜松市にある「浜松オート」の雨走路。近年、走路改修は行われておらず、それまでは蓄積したデータが使えるので特徴がかなり見えやすいレース場です。食い付くコースはズバリ「インコース」です。雨走路では軽ハン勢が残りやすい環境になります。そして雨巧者がいないレースでは、雨の実績がない選手でも、ハンデが軽いという理由だけで絡む割合が高くなります。また、グレードレースの短ハンデ戦では、スタートで先行した体系のまま勝負が決まるケースもよくあります。
次は福岡県飯塚市にある「飯塚オート」の雨走路。ここも近年、走路改修は行われておりません。データ的にもここの食い付くコースはズバリ「アウト」です。選手それぞれに雨走路でも走る得意なコースが違いますが、ここは大外ブン回しと言われるライン取りが有効です。他場では雨走路が苦手な選手も、「飯塚では外が食い付くから乗れる」と言う選手も多いです。近況はインコースも全く利かないわけではなくなってきたようですが、雨走路なのにタイムが速いという一面もあります。
最後に山口県山陽小野田市にある「山陽オート」の雨走路。2023年12月に走路改修が終了して、新走路となりました。まだ、改修をして約半年という事もあり、若干インコースが有利に感じます。ミッドナイトの雨走路の状況は捲っての追い上げが利きづらい印象で、前残りの選手が穴を提供しているイメージ。地元山陽の選手がミッドナイト出走が多いため、自然と地元選手の活躍が目立つようです。
全国のオートレース場の雨走路の特徴を頭に入れて、ぜひ車券推理の参考にしてもらいたいです。
文/金子