なぜ速く走れる!?
2024年11月01日
速く走れる選手とそうでない選手は何が違うのか
基本的に同じメーカー、同じ排気量(新人としてデビューしてからの一定期間は排気量の少ない2級車に乗るルールはあるが)のエンジンで競争しているオートレース。試走タイムや上がりタイムに差が出るのは、どのような要因があるからなのだろうか。筆者なりに考察してみたい。
まずはエンジン作り。その日の天候などによりエンジンの回転数に変化が出るが、それを細かい調整で最高出力を出せるように取り組む。キャブレターの調整、電気位置(点火時期)の調整、カム位置の調整、バルブスプリング(通称バネ)の調整などいろいろ扱える箇所がある。それが完全に合っている状態でもエンジンが上向かなければ、今度はパーツ交換などの整備に取り組む。簡単なところから言えばピストンリング(通称リング)の交換。他にもカムやキャブレターの交換、ヘッドの交換、シリンダーやピストンの交換、ロッドの交換、ケースやクランクの交換。これでもどうにもならなければ、エンジン本体の乗せ換えなどが行われる。エンジン状態の仕上がりの差は、試走タイムなどに大きく影響すると言っていい。
ただ、それよりももっと大事なのはグリップワークや乗り方ではないだろうか。オートレースの競争車はギアが2段階ある。スタートする時はローギアで、そこから数十メートル走った後はトップギアに入れる。その後はゴールするまでずっとトップギアのまま走ることになる。つまり、トップギアに入れてからはギアによるスピードの変化は起こらない。同じトップギアで走っている時にスピードの変化が起こるとしたら、グリップ開閉によるものとなる。スタートしてからゴールするまでの間、少しでもグリップを開けている時間が長い方がスピードに乗って走れていると言える。
↓右足を乗せるステップの少し上にあるのがギア変動を行うチェンジレバー
速いスピードで走れている選手は、コーナーの立ち上がりで早くグリップが開くし、コーナーに突っ込んで行く際、グリップを絞り始めるタイミングが遅い(少しでもスピードを落とさずコーナーに入っていく)。ただ、スピードに乗ったままコーナーを回ろうとすると、そうでない場合と比べて遠心力が大きくなる。つまり、コーナーの途中で車が外へ流れてしまうのが物理の法則。ここで大事なのが車のコントロール。車の乗り方や寝かせ方となるのだが、S級選手になるとこの技術が高い傾向がある。スピードに乗ったままコーナーを回っても、大きく流れることなく車の向きを変えて立ち上がり、直線を迎えられることになる。ここに各選手の技量が表れるのではないだろうか。
言葉で言うのは簡単だが、このグリップワークと車のコントロールがスピードの差、そしてタイムの差につながっていると思われる。オートレースの直線距離は想像以上に短い。コーナーをどれだけ減速せずに回れるかが、速く走れるかどうかの大きなカギとなってくる。
文/高橋