松尾康司 岩手競馬ダートグレード シリーズを語る。
2024年07月09日
いよいよ岩手競馬にダートグレード・シリーズの季節が到来する。
・7月15日(祝月)
「第28回マーキュリーカップ」(JpnIII盛岡ダート2000m)
・8月12日(振月)
「第29回クラスターカップ」(JpnIII盛岡ダート1200m)
・9月3日(火)
「第56回不来方賞」(3歳・JpnII盛岡ダート2000m)
・10月14日(祝月)
「第37回マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnI盛岡ダート1600m)
岩手伝統の3歳重賞・不来方賞はJpnIIへ昇格。今年から創設されたダート三冠の最終決戦・ジャパンダートクラシックのトライアル競走となった。
今年、ダート競馬の体系整備が本格的にスタートしたが、不来方賞がJpnII格付けになったことにより、岩手競馬は4ヵ月連続でダートグレード競走を満喫できる。しかもJpnIIレースの実施は岩手競馬で初めてのこと。
各方面から注目を集めているが、それを祝福するかのように"無敗の岩手二冠馬"フジユージーンが早々と出走を表明。
自身も岩手三冠制覇を目指す。
今さら伝えることではないと思うが、フジユージーンはデビューから無敵の8連勝中で重賞も5連勝中。

いずれもワンサイドで他を圧倒し続け、地方競馬全国交流・南部駒賞、ダイヤモンドカップで遠征馬を軽く一蹴。全国に名をとどろかせている。
しかし不来方賞はJRA、全国地方競馬のトップクラスが参戦。
フジユージーンは正念場を迎えたが、ファンからすれば"晴れ舞台"。これまでどおりの強さを発揮するか。
それとも一敗地にまみれてしまうのか。岩手のファンならずとも、必見のJpnII=不来方賞となった。
余談だが、現在、フジユージーンは休養中。今年3戦の疲れを取るため短期放牧に出ている。予定では調教再開はレース1ヵ月前から。
しっかり英気を養い、不来方賞へ向け万全の仕上げで遠征馬を迎え撃つ。
JRA勢はどんな布陣で臨んでくるのか。他地区の地方勢はどのような顔ぶれになるのか。刻一刻と変わる動向に注視したい。

今シーズンのダートグレード第一弾は盛岡ダート2000mを舞台に行われる「第28回マーキュリーカップ(JpnIII)」。
ここで盛岡ダート2000mのコース特徴を紹介してみたい。発走地点は4コーナー奥ポケット。
1コーナーまで約600mに及ぶ直線の攻防が最初の見どころ。
有力各馬は自己ポジションを取れることが多いが、逆のケースも多々ある。一昨年、昨年と2年連続で2着を確保したテリオスベルがその典型だった。
不運なことに2年とも内枠を引き当ててしまったため、外から続々と被せられて後方まで下がった。
スタートダッシュがきかない上、馬ごみを嫌うため、後方まで下がるしかなかったが、そこからが江田照男騎手=テリオスベルの真骨頂。
隊列が落ち着くのを確認し、ひとまくり。2コーナーで先頭に立ち、あとは強じんな粘りを発揮した。
通常は1~2コーナーで一旦ペースダウンして残り800mから徐々にペースアップ。勝負どころの3コーナーで隊列が崩れ、直線は約300mでゴールするが、1周目スタンド前、ラスト200mで2度の上り坂。
実は盛岡ダート1600m以上にタフさとスタミナが要求される。
一昨年(2022年)、テリオスベルは逃げ込みを図ったが、最後の最後でバーデンヴァイラーがきっちり捕らえてクビ差で優勝。テリオスベルは2度目の上り坂がこたえた。

今年の出走予定馬が発表され、全体像がかなり見えてきた。
現時点では出走予定馬(補欠馬も含み、仮に出走すればおもしろい馬もピックアップ)であることをご了解ください。
クラウンプライド(牡5歳父リーチザクラウン)は3歳時にUAEダービーを制し、ケンタッキーダービーに挑戦13着。
帰国後は盛岡で行われたJBCクラシックでテーオーケインズの2着、チャンピオンズカップはジュンライトボルトの2着。
昨年はサウジカップ、ドバイワールドカップ連続5着から帰国初戦の帝王賞でメイショウハリオの2着。続いてコリアカップを圧勝したが、以降は3戦連続で着外。マーキュリーカップ(JpnIII)はダートグレード別定。UAEダービー(GII)を制しているので57キロの負担重量を背負うが、陣営にしてみれば復活を賭けた一戦。このメンバーでは負けられない。
メイショウフンジン(牡6歳父ホッコータルマエ)は一昨年7着、昨年3着。好スタートを決めて逃げの手に出たが、テリオスベルのまくりに遭い、心もリズムも乱されてしまった。しかしテリオスベルが引退し、"天敵"が不在。しかも一連のダートグレードで好走し続けているが、ノンタイトルのため今年も54キロで出走できるのが強味。これまでのうっ憤を一気に晴らしたいところだろう。
テンカハル(牡6歳父キングカメハメハ)は母がBCディスタフを含めてアメリカGI6勝、通算12勝ジンジャーパンチという超良血馬。
超良血馬ならビヨンドザファザー(牡5歳)も譲らない。父カーリンはブリーダーズカップ・クラシック、プリークネスSなどGI7勝し、2年連続でエクリプス賞を受賞。母父は大種牡馬ガリレオと夢の配合。
ロードアヴニール(牡4歳父ドゥラメンテ)は今年1月以来の実戦だが、2戦目からダート路線へ変更後、5戦4勝。
目下3連勝中と昇竜の勢い
地元岩手はシアンモア記念馬グランコージー、一條記念みちのく大賞典馬ヒロシクンがそろって出走を表明。マーキュリーカップ(JpnIII)開催に花を添える。
紹介が前後するのをご了承いただきたい。クラスターカップ(JpnIII)は"世界の競馬に通ずる道"。
昨年優勝したリメイクはその後、コリアスプリント(ソウル)、リヤドダートスプリント(サウジアラビア)を優勝。
2着ドンフランキーは続く東京盃(JpnII)優勝で雪辱。ドバイゴールデンシャヒーンではリメイクに先着2着を確保した。
今年はクラスターカップ(JpnIII)からブリーダーズカップ・スプリント(デルマー競馬場)へ挑戦するともっぱらの噂だ。

2020年、クラスターカップを日本レコード(当時)で快勝したマテラスカイはリヤドダートスプリント2着、引退レースとなったJBCスプリント(JpnI)では5着に善戦した。
盛岡ダート1200mは3コーナー入りまで直線が約500m。位置取り争いが激しくなると差しタイプが届き、ペースが落ち着くと先行有利。出走メンバーの脚質と展開が重要なファクターとなる。
マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnI)は岩手競馬の看板レース。昨年はJBC開催を除く売り上げレコードを記録した。
盛岡ダート1600mのスタート地点は2コーナー引き込み最奥。向こう正面で約900mのほぼ直線が自慢のコース。

意外にも先行有利が過去の傾向だ。
例外は2019年、吉原寛人騎手とのコンビで優勝したサンライズノヴァだが、 出遅れながらも3コーナーでは逃げ馬の1秒以内の射程圏まで押し上げていた。
なぜ盛岡マイルは先行有利なのか。盛岡競馬場のコース特徴を知り尽くしていた菅原勲元騎手(現調教師)が語ったことがある。
"ワンターンの直線の上り坂なら、ある程度は惰性で行ける"と。
よって3コーナーの位置取りがカギを握る。
以上、駆け足でダートグレード4レースの見どころ、コース特徴を紹介したが、主役はもちろんサラブレッドと騎手。
今年の夏から秋にかけて行われる盛岡"ダートグレード4連発"をお楽しみください!
文/松尾康司(テシオブログ)