ばんえい復活の象徴メムロボブサップ
2026年02月27日
ばんえい競馬の現役最強馬メムロボブサップが2月22日のチャンピオンカップを勝利。この勝利で、ばんえい競馬の重賞最多勝記録を更新する重賞26勝目とし、また通算収得賞金でも、これまで長い間その記録が更新されることがなかったキンタローの1億1672万5000円を更新する、1億1801万7500円の記録となった。
メムロボブサップは、昨年3月16日のばんえい記念を勝った時点で賞金1億円を突破。2006年のスーパーペガサス以来19年ぶりのことで、ばんえい競馬では史上8頭目の賞金1億円馬となった。
1億円達成馬の出現にそれほどブランクがあったのは、馬券の売上げが落ち込み、それにともなって賞金も相当に減額されていたため。
たとえば、ばんえい競馬の最高峰・ばんえい記念の1着賞金は、1989年から2003年まで1000万円で、この間に1億円馬が5頭誕生している。バブルを挟んで、地方競馬全体の売上が好調だった時代だ。
1億円第1号のキンタローは、それ以前の活躍馬。また、ばんえい記念4連覇を達成したスーパーペガサスは、ばんえい記念初制覇を果たしたのが2003年で、このときは1着賞金1000万円だったが、その後の3回は700万円。この頃から賞金が徐々に下がり、2013年のばんえい記念は300万円にまで落ち込んだ。その年を底に、徐々に回復を見せ、2017年にようやく1000万円に戻った。
この賞金が落ち込んでいた時代に、歴代でも最強クラスといえる活躍を見せたのが、2011、13年にばんえい記念を制したカネサブラックであり、2017、18、20年にばんえい記念を制したオレノココロだった。
ばんえい競馬の重賞最多勝記録の変遷を見ると、スーパーペガサスが20勝、これを更新したカネサブラックが21勝、さらにオレノココロが25勝、そして冒頭のとおり、この記録を更新したのがメムロボブサップとなる。
中でも、もっとも不遇な時代の最強馬だったといえるのがカネサブラックだ。1度目(2011年)のばんえい記念勝利の賞金が500万円で、2度目(2013年)はもっとも落ち込んだ年で300万円だった。
カネサブラックにとってのさらなる不運は2012年。この年のばんえい記念でも当然有力視される筆頭だったのだが、厩舎地区にコロナウィルスが蔓延し、熱発の症状を示したことで直前回避となっていた。
カネサブラックは、前述のとおり当時のばんえい重賞最多勝記録を更新して引退したのだが、通算収得賞金は4440万円。歴代最強クラスであるにもかかわらず、1億円の半分にも満たない。カネサブラックの戦歴を、1億円馬が5頭誕生した当時の賞金に当てはめてみると、概算でじつに2億円を超える。
カネサブラックは、それほど賞金的に恵まれない時代に現役時代を過ごしたことになる。
オレノココロは、ばんえい記念の1着賞金が1000万円に戻った最初の年(2017年)に初めてばんえい記念を制し、3度制したばんえい記念の1着賞金はいずれも1000万円だった。しかし通算ではやはり1億円にはるかに及ばず7720万4000円だった。
このころは、ばんえい競馬の象徴であるばんえい記念の賞金だけはなんとか1000万円に戻したものの、それ以外の重賞賞金は以前ほどには回復せず、ばんえい記念に次いで高重量で争われる帯広記念を制しても、2016年が170万円、翌17年が200万円。最後の重賞勝ちとなった2021年の帯広記念でようやく500万円まで戻ったに過ぎなかった。
一方で、初代1億円馬のキンタローがばんえい記念(当時のレース名は農林水産大臣賞典)を制したのは1983、85、86年で、1着賞金はいずれも700万円。ではなぜ1億円に到達したかといえば、当時はばんえい記念の賞金だけが突出していたわけではなく、キンタローが制した重賞でいえば、岩見沢記念の650万円をはじめ、全体的に賞金が高かった。
それにしてもキンタローの通算収得賞金の記録がおよそ50年も破られなかったというのは驚くばかり。1980年代当時と現在の物価を比べると、おそらく2倍程度にはなっているのではないだろうか。ちなみに、ネットで大卒初任給(男子)の推移を検索してみると、1980年代はようやく10万円を超えたあたりで、2025年は23万円前後となっている。
メムロボブサップによる19年ぶりの賞金1億円達成と、約50年ぶりの通算収得賞金の記録更新は、景気に左右されながら一時期は廃止の危機も経験したばんえい競馬の復活の象徴といえる出来事でもあった。
なお、ばんえい記念の1着賞金は、今年一気に倍増の2000万円となった。キンタローが活躍した昭和の時代から、ばんえい記念の賞金もようやく物価の上昇に追いついた。
文/斎藤修


