ばんえい競馬クライマックスに向けて
2025年01月09日
年末には競馬場ごとに2024年を振り返ったが、ばんえい競馬では年末・年始に世代ごとの重賞競走が行われ、3月のシーズン終盤にむけてさらに盛り上がる。そのクライマックスに向けての勢力図を世代ごとに紹介する。
【2歳(明け3歳)】
2歳(明け3歳)世代は、年末までの成績で、10戦7勝、2着2回のスーパーシン、14戦6勝、2着6回のキョウエイエースという2強が抜けた存在となっている。
2歳シーズン一冠目のナナカマド賞(10月13日)は、基礎重量570kg(牝馬20kg減)の条件で、青雲賞(2歳特別)を制していたキョウエイエースが1頭だけ別定10kg増の580kg。ほぼ同時に第2障害を越えた2強が抜きつ抜かれつの一騎打ちとなって、ゴール寸前でわずかにキョウエイエースが前に出ての勝利。その差はわずかコンマ4秒。3着ヤマノドラゴンは10秒以上も遅れてのゴールとなった。
ばんえい競馬では、生産頭数が圧倒的に多い十勝地区の産駒の層が厚いが、この世代は例年以上にその傾向が顕著だった。二冠目ヤングチャンピオンシップの予選として行われる産地別特別は十勝産駒特別が事実上の決勝戦と言われ、565kgのスーパーシンが、トップハンデ570kgのキョウエイエースを振り切った。
そして迎えたヤングチャンピオンシップ(12月29日)は、2強の馬連複が1.2倍と人気が集中。第2障害で最初に仕掛けたスーパーシンがすんなりひと腰で越えると、そのまま後続を寄せ付けず完勝。一方のキョウエイエースは障害3番手から一旦は2番手に上がったものの、残り10mで一杯になってまさかの4着。2着は北央産駒特別で2着だったウンカイダイマオー、3着は北見産駒特別1着だったアバシリタカラコマ。2強は明暗が分かれる結果となったが、キョウエイエースは別定20kg増で、スーパーシン(600kg)より10kg重い610kgというハンデがあっただけに、まだ勝負付けが済んだとはいえない。
年が明けて、牡馬限定の翔雲賞(2月2日)、そして2歳シーズン三冠目のイレネー記念(3月9日)となるが、引き続き2強を巡る争いとなりそうだ。
2歳牝馬では、白菊賞(特別・8月11日)を勝ち、いちい賞(特別・9月15日)で2着だったキョウエイカスミが10月までに4勝を挙げてリードしていたが、その後は賞金的に牡馬のトップクラスとの対戦となって足踏み。いちい賞を勝って3勝目としたマツサンブラックも同じように秋以降は足踏み。年末までに3勝、2着5回のウンカイマジックらが収得賞金では上位となっているが、2歳シーズン(明け3歳)女王決定性の黒ユリ賞(2月9日)に向けて、これから台頭してくる馬も出てきそうだ。
【3歳(明け4歳)】
この世代は、ヤングチャンピオンシップ、翔雲賞、イレネー記念と重賞3連勝を含め2歳シーズンの終盤に5連勝でシーズンを締めくくったライジンサンが、3歳シーズンの序盤は休養。初戦として出走したのが3歳一冠目のばんえい大賞典(7月7日)だったが、トップハンデもあって第2障害を越えてからの動きが重く7着。障害をひと腰先頭で越えたホクセイハリアーがそのまま押し切った。
二冠目のばんえい菊花賞(11月3日)でもホクセイハリアーが第2障害を先頭で越え、そのまま押し切るかに思えた。しかしゴール前で脚取りが鈍ったところ、差し切ったのが出走馬中唯一の牝馬スマイルカナで、ばんえいオークス(12月1日)も制した。スマイルカナは2歳シーズンには黒ユリ賞を制し、イレネー記念でもライジンサンの2着と、3歳になっても男勝りの能力を発揮している。
そして迎えた三冠目のばんえいダービー(12月30日)は、2歳シーズンのチャンピオン・ライジンサンが第2障害を先頭で越えると、ゴール前では一度詰まったものの、すぐに立て直して押し切った。ばんえい菊花賞は4着に敗れていたものの、その後自己条件を使われて調子を上げ、イレネー記念以来の勝利。ライジンサンは、2歳シーズン、3歳シーズンで頂点に立った。
そのほかこの世代では、ミチシオがばんえい大賞典2着、ばんえい菊花賞3着、ばんえいダービー2着と健闘。またウルトラコタロウは2歳時から通算して重賞で3着5回という成績で存在感を示している。
【4歳(明け5歳)】
この世代はタカラキングダムが4歳シーズン三冠馬となって、圧倒的な存在感を示した。2歳シーズンはばんえい大賞典、3歳シーズンはばんえいダービーと、それぞれ重賞は1勝ずつ。4歳シーズン序盤は、それまで稼いだ賞金でハンデに苦しめられ、同世代同士の特別戦でも、すずらん賞(4月27日)7着、ライラック賞(6月3日)4着と勝利には至らず。初勝利となったのは、4番人気で臨んだ一冠目の柏林賞(6月23日)で、そこからは連対を外さない快進撃。ひとつ下の3歳と混合の重賞・はまなす賞(8月25日)をトップハンデで制し、二冠目の銀河賞(9月22日)は牝馬のスーパーチヨコとは60kg差というトップハンデ750kgが課せられたものの、先に抜け出して単独先頭のクリスタルゴーストをゴール前でわずかにとらえて勝利。古馬一線級との対戦となったドリームエイジカップ(11月24日)は6着だったが、定量で争われる三冠目の天馬賞(1月3日)は、2番人気マルホンリョウユウが先頭で第2障害を抜けたところ、障害4番手から自慢の末脚で差し切った。
タカラキングダムの4歳シーズン三冠制覇では、柏林賞こそ差のない2番手から抜け出したが、銀河賞、天馬賞は、そこから届くのか?と思われるようなタイミングで第2障害を越え、しかし終わって見れば完勝という内容。4歳になって一気に本格化を見せた。それにしてもこれほどの追い込みで重賞を勝ちまくるというのは、かつてのフクイズミを思い起こさせる。
この世代でタカラキングダムに次ぐ存在は、3歳時にばんえい大賞典、ばんえい菊花賞の二冠を制したマルホンリョウユウで、4歳シーズンは柏林賞3着、天馬賞2着。年明け5歳馬でオープン格付けはこの2頭。
4歳2月から5連勝で成長を見せたクリスタルゴーストは、重賞初挑戦だった柏林賞で2着。はまなす賞、銀河賞でもタカラキングダムの2着に好走したが、天馬賞では第2障害を越えられず競走中止だった。
牝馬では、スーパーチヨコが銀河賞で3着に好走。4歳牝馬の重賞・クインカップ(11月10日)は3着だったが、トップハンデだっただけに、能力的にはこの馬が最上位といえそう。
【古馬】
古馬では、今シーズン最初の重賞・ばんえい十勝オッズパーク杯で、1着メムロボブサップ、2着アオノブラックという結果のとおり、今シーズンもこの2強が中心となって古馬重賞戦線が展開されると思われた。しかしアオノブラックが夏以降不振に陥り、メムロボブサップの天下となった。ドリームエイジカップ(11月24日)まで重賞5勝を含め8連勝。ばんえい競馬で、重賞を使われながらオープンクラスで連勝を続けるのは難しい。
メムロボブサップはこれまで、シーズン前半の重賞を勝ちまくり、後半の重賞では別定重量を課されてとりこぼすことが多かった。それゆえ今シーズンは、北斗賞(6月16日)、旭川記念(7月14日)という前半の重賞は自重。ばんえいグランプリ(8月11日)4連覇を達成すると、岩見沢記念(9月15日)、北見記念(10月27日)、さらに世代対抗戦のドリームエイジカップ(11月24日)は、いずれも初勝利。5頭立てとなった帯広記念(1月2日)を勝てば、史上初のばんえい古馬重賞全制覇となるところだったが、先頭で障害を越えたコウテイをとらえきず2着。今シーズン初の敗戦となった。負担重量はメムロボブサップ930kgに対し、ほかの馬たちは900kgか890kg。メムロボブサップは、これで帯広記念は3年連続930kgで2着。帯広記念をその重量で勝つのは難しい。
帯広記念を制したコウテイは、8歳ながらこれが重賞初勝利。昨年の帯広記念でも障害トップ抜けで3着と好走し、今シーズンは旭川記念、北見記念で2着と好走していた。そして帯広記念3着だったコマサンエースも、昨年のばんえい記念で3着好走があり、今シーズンはばんえいグランプリ2着のほか重賞3着が3回。この2頭はばんえい記念(3月16日)でも対抗格の評価となりそう。
今シーズン前半、メムロボブサップが不在となった北斗賞、旭川記念を連勝したのが、5歳(明け6歳)のクリスタルコルドで、急成長が目立った。ただその世代は4歳シーズン三冠を制したキングフェスタが最強という位置づけ。来シーズン以降、この2頭が古馬戦線における世代交代の中心として注目の存在となりそうだ。
文/斎藤修