2024各地のリーディング
2025年01月24日
1月も半ばを過ぎてしまったが、2024年の各地の騎手リーディングを振り返る。なお特に断りのない限り、対象競馬場での所属騎手のみの成績・順位とした。
【岩手】
岩手のリーディングは近年、村上忍騎手と山本聡哉騎手の争いとなっていて、2015年以降の10年間では両名とも3位以内を外したことがない。さらに両騎手以外で3位以内に入ったのも高松亮騎手か山本政聡騎手に限られる。なかなか3位以内に若手が食い込む余地がない。
そうしたなかで2024年は山本聡哉騎手が181勝で1位。154勝で2位の村上騎手に27勝の差をつけた。勝率でも山本聡哉騎手21.6%に対して、村上騎手15.9%と圧倒的だった。
しかしながら村上騎手はフジユージーンで岩手二冠制覇に加え、園田・楠賞でも全国の強豪を相手に勝利。また11月19日には、岩手所属騎手の通算最多勝記録を更新する4,128勝を挙げるなど、ベテランとして印象的な活躍が目立った。
【金沢】
金沢のトップジョッキーといえば吉原寛人騎手だが、とにかく他場での騎乗が多く2011年を最後に金沢ではトップに立っていない。それゆえかどうか金沢リーディングは群雄割拠という状況で、2012〜24年の13年間で6名の騎手がトップに立っている。
2023年には2015年デビューの栗原大河騎手が初めてトップに立ち、そして2024年は2014年デビューの中島龍也騎手が169勝をマークし、2位の栗原騎手(120勝)に49勝という大差をつけて初めて金沢リーディングに輝いた。
【笠松】
笠松ではデビュー8年目の渡邊竜也騎手が笠松競馬場における年間最多勝記録を3年連続で更新し、断然の一強となっている。2024年は笠松競馬場で232勝。2位3位は名古屋所属の岡部誠騎手、塚本征吾騎手で、笠松所属騎手として2位の藤原幹生騎手が74勝なので、じつにトリプルスコア以上の差をつけた。
渡邊騎手の笠松での勝率は37.7%、連対率は57.2%で、2回に1回以上連対し、3回に1回以上勝っていることになる。また地方競馬全体では689戦245勝、勝率35.6%は全国でもダントツの成績で、NARグランプリ2024で最優秀勝率騎手賞を受賞した。
【名古屋】
名古屋では、3月21日に歴代7人目となる地方競馬通算5,000勝を達成した岡部誠騎手の牙城がほとんど揺るぎない。"ほとんど"というのは、他場での期間限定騎乗などで地元を留守にすることが少なくないため。近10年では、南関東で期間限定騎乗をしていた2014、15、18年、韓国・釜山競馬場で短期免許で騎乗していた2016年以外はいずれの年もトップに立っている。
2024年は名古屋競馬場で170勝。131勝で2位の塚本征吾騎手に39勝差をつけた。名古屋では若手の台頭が目立っており、その塚本騎手は2021年デビュー、3位は2006年デビューの今井貴大騎手が112勝、4位は2016年デビューの加藤聡一騎手で104勝と、2位争いは接戦だった。さらに2023年デビューの大畑慧悟騎手が90勝で6位、2024年4月デビューの望月洵輝騎手は9カ月間で82勝(地方全体では95勝)を挙げ、いきなり7位にランクインしている。
また日本の女性騎手として通算勝利数の記録を更新し続けている宮下瞳騎手は93勝で5位。地方全体で116勝は自身のキャリアハイの勝利数だった。
【兵庫】
兵庫では2018年に初めて吉村智洋騎手がトップに立つと同時に、全国でもトップに立って以降、吉村騎手の天下が続いている。
2024年は全国1位の森泰斗騎手(船橋)が11月29日の騎乗を最後に引退し、その時点で森騎手295勝に対して、吉村騎手は257勝(地方全国)。残り約1カ月で38勝差を逆転するのはさすがに難しく、吉村騎手は9勝差の286勝で全国2位だった。
吉村騎手は初めて全国のトップに立った2018年が296勝(地方全国)で、以降は毎年300勝超の勝ち星を重ねてきたが、2024年は6年ぶりに300勝を割った。NARグランプリ2023の表彰式のインタビューで「昨年(2023年)は精神的にもきつかった。目標を決めると昨年のようにしんどくなるので、今年(2024年)は怪我なく楽しく乗れればいいかなと思っています」と話していた。全国トップを続けるといいうのは、我々には想像できないほど精神的に追い込まれるもののようで、数字にはこだわらなかった結果が2024年の成績と思われる。
とはいえ兵庫での勝利数284は、2位の下原理騎手(191勝)に100勝近い差をつけた。2022年から3年連続2位は下原騎手で、それまで2位・3位を争っていた田中学騎手が現在は長期療養中のため、近年台頭著しい廣瀬航騎手が2023年の4位から2024年は3位に繰り上がった。
兵庫では近年若手の活躍も目立たないわけではないが、リーディングの上位はまだまだベテラン騎手の寡占状態が続いている。
そうした中で2024年8月には小牧太騎手が中央から復帰。兵庫所属となって騎乗を再開した8月14日から年末までに限っての兵庫リーディングを集計してみると、吉村騎手114勝、下原騎手71勝、小牧騎手66勝という順。2025年は小牧騎手も含めたリーディング争いに注目だ。
【高知】
2024年の高知競馬では、134勝の宮川実騎手が赤岡修次騎手(120勝)を抑えてトップとなった。宮川騎手の高知リーディング1位は2022年以来2度目で、2021年に初めて2位になって以降、赤岡騎手と1・2位を分け合っている。
宮川騎手は2021・22年にNARグランプリ最優秀賞勝率騎手賞を受賞していて、この年も29.8%(地方全体)という高い勝率をマークしたが、渡邊竜也騎手(笠松)の35.6%はあまりにも壁が高かった。
所属する打越勇児調教師は、これまで2018、19、21、22年に調教師のリーディング全国1位でNARグランプリ最優秀勝利回数調教師賞を受賞していたが、2024年には同賞に加え勝率でも全国1位となって最優秀勝率調教師賞とダブルで受賞。賞金でも小久保智調教師(浦和)に次いで2位だった。所属厩舎の好成績にともない宮川騎手も有力馬の騎乗機会が増えていると考えられる。
【佐賀】
佐賀では2008年以降、山口勲騎手がほとんどダントツの数字でリーディング1位を続けてきたが、2023年は怪我で約2カ月のブランクがあったためトップの座を飛田愛斗騎手に明け渡した。それでも2024年には山口騎手152勝に対して飛田騎手120勝と、32勝差をつけて再び首位に返り咲いた。
とはいえ山口騎手も今年3月で55歳。佐賀では近年若手騎手の活躍が目覚ましく、2020年にデビューした飛田騎手のほかにも、2022年にデビューした山田義貴騎手は2023年には118勝(地方全体)を挙げNARグランプリ最優秀新人騎手賞を受賞、2024年も99勝をマークしており、世代交代も近いかもしれない。
【ばんえい】
ばんえい競馬では、主催者の表彰や発表しているデータが年度単位(4月から翌年3月)となっているため簡単に。
ばんえい競馬では鈴木恵介騎手のトップが長く続いていたが、2020・21年度に阿部武臣騎手がその牙城を崩し、2年連続で1位となった。しかし2022年度以降は再び鈴木騎手がトップに立っていて、2024年度も1月20日現在、鈴木騎手が134勝でトップだが、西将太騎手が126勝で2位、島津新騎手が112勝で3位に迫っている。この時点で上位8名が100勝以上と、勝ち星を分け合っている状況だ。
文/斎藤修