ヤングジョッキーズシリーズ・ファイナルラウンド園田をリポート!

2024年12月20日

今年の「ヤングジョッキーズシリーズ・ファイナルラウンド」は、12月12日(木)が園田競馬場で、14日(土)がJRA中京競馬場。出場騎手は地方競馬とJRAそれぞれの東日本・西日本の予選(トライアルラウンド)でたくさんのポイントを獲得した上位4名、合計16名です。


唯一の例外は、ファイナルラウンドに進出を決めていた大江原比呂騎手(JRA関東所属)がケガをしてしまったため、予選5位から繰り上げ出場となった石田拓郎騎手。 大江原騎手のことは気にかけながらも、
「出場できることになったのは正直なところ、うれしく思いました」
とのこと。ちなみに、もともと土曜日は中京競馬場にいる予定だったそうです。



それでは改めて、出場騎手をおさらいしましょう。


【地方競馬・東日本】
室陽一朗(むろ・ひいろう・浦和=今年は愛知で期間限定騎乗をしました)
鷹見陸(たかみ・りく・大井)
谷内貫太(たにうち・かんた・大井)
及川烈(おいかわ・れつ・浦和=一昨年は笠松、今年は高知と佐賀で期間限定騎乗をしています)


【地方競馬・西日本】
土方颯太(ひじかた・そうた・兵庫=今年デビュー)
長江慶悟(ながえ・けいご・笠松)
加藤翔馬(かとう・しょうま・金沢)
望月洵輝(もちづき・じゅんき・愛知=今年デビュー)


【JRA・東日本】
佐藤翔馬(さとう・しょうま)
長浜鴻緒(ながはま・こお=今年デビュー)
土田真翔(つちだ・まなと)
石田拓郎(いしだ・たくろう)


【JRA・西日本】
橋木太希(はしき・たいき=今年デビュー)
河原田菜々(かわはらだ・なな)
田口貫太(たぐち・かんた)
古川奈穂(ふるかわ・なほ)


園田競馬場は同時に出走できるのが12頭までなので、16名の騎手は3つのレースのうち2つに騎乗します。



第3レース後の紹介式には、大井の2名が調教を終えてから移動したため間に合わず。そのため並んだのは14名でしたが、渡された記念品の「そのたんティッシュケース」(各騎手の勝負服キーホルダーつき)を手に、ひとりずつ意気込みを話しました。



ちなみにこの商品は、園田競馬場のスタンド1階にある「そのたんショップ」で販売されています。
しかし平日の正午前だというのに、西ウイナーズサークルの前に集まったカメラ持参のファンの多いこと!



そのなかには出場騎手の家族の姿もありました。そういえば、各地区の出場騎手のなかには「父が騎手だった」という人が1人ずつ含まれていますね。そして4人の父はすべて、現在は調教師。そのなかのひとりが佐藤翔馬騎手で、お母さんが園田競馬場に来て、競馬学校で同期だった河原田菜々騎手のお母さんと一緒に見守っていました。 その2名はファイナルラウンド園田・第1戦に登場。佐藤騎手は9番人気馬で4着、河原田騎手は4番人気馬で9着でした。 この写真は、佐藤騎手のクランテミスを管理する諏訪貴正調教師がゼッケンを手にしたところ。ついでに河原田騎手のゼッケンも持ってもらいました。




このレースで勝利を挙げたのは大井の鷹見騎手。単勝1.6倍と断然人気でしたが、パドックでは興奮ぎみ。さらに、気温が低いのに馬体からは汗が......



それでもゲートが開くと楽に先手を取って押し切りました。そのレースを振り返ってもらうと、
「返し馬でも待機所でもなんかヘンな感じで、それで(兵庫の)土方騎手に『いつもこんな感じなの?』と聞いたら、もしかしたら待避所で大きく回っているからかも、と教えてくれて、それで小さく回るようにしたら落ち着いてくれました」とのこと。勝利へのアシストをした土方騎手は8着でした(10番人気馬でしたが)。


2着に入ったのは及川騎手。ところで勝負服がいつもよりテカってない?



「いつもこんな感じですよ。でも、これは自分が持っているなかでいちばんいい服ですね」 及川騎手は佐賀での期間限定騎乗を25年1月26日まで延長。オレンジの蛍光色が"ほとめきナイター"でたくさん目立つことを期待しましょう。


続く3着は長江騎手。「100勝にリーチがかかっている状態で来ちゃいました。ここで勝てれば」と話していましたが、残念ながらメモリアルは地元で、ということになりました。



続く第2戦は、第1戦で鷹見騎手に"勝利へのアドバイス"をした土方騎手が1番人気馬で余裕十分の差し切り勝ち。第2戦は1870mだったので、この距離での経験値が圧倒的に高い点はアドバンテージになったといえるでしょう。
「思ったよりもペースが落ち着いて、インコースを回っていたので前が開くかどうか、というところはあったのですが、そのあとうまく外に進路を見つけることができて良かったです」
と話す姿は、2007年2月9日うまれの17歳とは思えぬ雰囲気。でも表情は17歳かな?



それを近くで見ていたのが同期デビューの塩津璃奈(しおづ・りな)騎手。トライアルラウンドは16人中で13位でした。
「来年はファイナルに進みたいですね。レディースジョッキーズシリーズがあれば(地元のほかの新人騎手より)遠征機会が多くなるので、それをプラスにしたいです」



ただ、来年は兵庫に2名の新人騎手が誕生する予定。さらに厳しい戦いになるかもしれませんが、次はファイナルへの進出を期待しましょう。


今年の兵庫デビュー騎手は4名。土方騎手と勝ち星の数で競っている新庄海誠(しんじょう・かいせい)騎手は、
「来年はファイナルに出たいと思います」
と、普通のコメント。以前は早々にヤングジョッキーズシリーズに出られなくなる(つまり減量騎手を卒業する)というような話をしていた気が......
すると「あまり大きいことは言いたくないんで」と背中を丸めて退散。その様子を高橋愛叶(たかはし・まなと)騎手が先輩の鞍を磨きながら見ていました。引き続き、兵庫でのヤングジョッキーズの戦いにも注目です。



第2戦で2着に入ったのはJRAの橋木騎手。トライアルラウンドでは6戦して、2着4回という成績で1位通過でした。そしてファイナルラウンドでもまた2着。「もう2着はいいんですけど......」と、苦笑いでした。



3着は谷内騎手。「2番手に付けられましたが、反応させ切ることができなかったです」と、レース内容を振り返りました。それでも"大きい着順をなるべく取らない"ことがジョッキーレースでの注意点。実際、7番人気馬で4着に入った室騎手は、それが最終での結果につながることになりました。



最終戦となる第3戦は1400m。2戦連続2着で臨んできた馬に騎乗した長浜騎手が勝利。勝ち時計の1分34秒3は、同じクラスで行われた第1戦より1.5秒も遅いものでした。道中は11頭がほとんど一団で、2コーナーから仕掛け始める馬も複数いたほど。



その難しい流れのなか、好位から差し切った長浜騎手は、勝因のひとつに「先週、園田で乗ったこと」を挙げていました。



その「先週」とは、12月5日(木)の「JRA交流武庫川特別」(1400m)。そこに、所属している根本康広厩舎の馬とともに遠征したのです。これはおそらく根本調教師からの"アシスト"。その想いに応える結果となりました。


2着は最後方から追い込んできた鷹見騎手。金沢の加藤翔馬騎手は逃げ粘りましたが、2着からクビ差の3着でした。 「道中でガツンとくるところがあれば......」と、加藤騎手は言葉少なく振り返りましたが、ほかの競馬場への遠征機会が少ない金沢所属騎手は相対的に不利といえるかも。「左回りはデビュー前の教養センター以来。そこをもう1回、イメージし直して頑張ります」と、土曜日に向けて笑顔を見せました。



一方、9着、10着と2戦ともブービーだったのが望月騎手。
「第2戦は馬なりで気持ちよく行かせたんですが......。園田は名古屋と違ってインコースが開かないですし」と、初めての競馬場に戸惑いがあった様子。それでも気持ちを切り替えて土曜日の第2戦で単勝99倍のブービー人気馬(ちなみに根本厩舎)で勝利。さすが4月のデビューから80勝以上を挙げている"スーパーゴールデンルーキー"の腕を見せました。
望月騎手の実家は愛知県豊橋市。そこから最寄りの競馬場で、家族や親類が見守るなかで2着、1着と活躍し、総合2位に入りました。



優勝したのは園田で1着、2着と活躍した鷹見騎手。3位は中京の第1戦を制した室騎手で、地方所属騎手が表彰台を独占。この結果を見て、ファイナルに進めなかった騎手たちのモチベーションも上がったことでしょう!




文/浅野靖典