2024年を振り返る(岩手・金沢・笠松・名古屋)
2024年12月24日
【岩手】
2024年の岩手競馬の主役は、なんといってもフジユージーン(牡3)だろう。新たなダート三冠が始まった年に、全国レベルで注目となる1頭だった。
シーズン当初は羽田盃の前哨戦からというプランもあったが、体調が整わず前半は開幕から地元戦を使われ、デビューから無敗のまま8連勝で東北優駿を制した。そしていよいよ中央馬との対戦となったのが、この年からダート三冠目の前哨戦としてJpnIIに格付けされた不来方賞ということでは、なお期待が高まった。結果は4着だが地方馬最先着で、地元期待の面目は保った。三冠目のジャパンダートクラシックJpnIにも挑戦し、4番手あたり好位を追走したが、勝負にいったぶん直線では脚が上がって10着だった。
それでも園田に遠征した楠賞(1400メートル)は距離不足かとも思われたが、先行勢ハイペースの激戦から直線3頭の接戦を制し、あらためて全国レベルの能力を示した。
古馬では中央1勝クラスから転入したヒロシクン(セン5)が連戦連勝。ダートグレードはさすがに厳しかったが、地元馬同士では7戦全勝。重賞は、一條記念みちのく大賞典、青藍賞、トウケイニセイ記念を制した(12月23日現在)。大晦日の桐花賞も勝って1年を締めくくるかどうか。
牝馬では、昨年東北優駿やひまわり賞など牡・牝の3歳変則四冠を制したミニアチュール(牝4)が幅広い距離をこなし、ビューチフルドリーマーカップ、ヴィーナススプリント、すずらん賞と重賞3勝。またゴールデンヒーラー(牝6)は短距離に専念して、白嶺賞、栗駒賞、岩鷲賞と重賞3勝を挙げた。なおゴールデンヒーラーは12月23日のスプリント特別(5着)がラストランとなった。
記録的なことでは、阿部英俊騎手が10月21日に地方通算2,000勝を達成。村上忍騎手が岩手競馬歴代通算最多勝記録となる4,128勝を11月19日に達成した。
残念だったのは大雨の影響で盛岡芝コースの走路状態が悪化し、7月下旬以降、芝コースの使用を断念したこと。7月21日までで芝コースのレースが行われたのはわずか8戦。そのうち2歳新馬戦は1戦のみで、重賞はいしがきマイラーズが行われたのみ。7月30日以降に予定されていた芝重賞8レースはすべてダートに変更して実施された。
【金沢】
金沢を盛り上げたのはハクサンアマゾネス(牝7)。昨年(2023年)末に移転50周年記念金沢ファンセレクトカップを制して重賞21勝とし、カツゲキキトキトによる地方競馬の平地重賞最多勝記録(20勝)を更新したが、7歳になった24年も現役を続行。利家盃、百万石賞ではともに4連覇を果たし、園田に遠征しては兵庫サマークイーン賞、兵庫クイーンカップをともに連覇し、重賞25勝。ばんえい競馬のオレノココロによる地方競馬の重賞最多勝記録に並んだ。そして引退レースとなった中日杯には記録更新を賭けて臨んだが、果敢な逃げを見せたマリンデュンデュン(牡4)をとらえきれず2着。タイ記録までで記録更新はならなかった。それでも平地競走としては断然の記録。12月3日には引退式が行われた。
3歳戦線では、中央未勝利から転入したナミダノキス(牡3)が石川優駿、サラブレッド大賞典の二冠を制して6連勝。中日杯でもゴール前で2着ハクサンアマゾネスにハナ差と迫る3着に好走を見せた。
記録的なことでは、吉原寛人騎手が2月22日に姫路競馬場の兵庫ユースカップを高知のリケアサブルで制し、地方競馬(平地)全場重賞制覇を達成。また4月18日には浦和競馬第2レースを勝って、地方通算3,000勝を達成した。
残念だったのは、ショウガタップリ(牝4)が8月28日に腸捻転に伴う疝痛のため死んだこと。デビューから無敗のまま11連勝で石川ダービーや加賀友禅賞を制し、佐賀に遠征して西日本ダービーも制した。通算成績は17戦12勝(うち重賞7勝)。なお吉原騎手はその西日本ダービー(23年9月10日)を制したことで、地方競馬全場重賞制覇へ、残すは姫路のみとしていた。
ショウガタップリは残念だったが、同じ馬主、調教師のショウガマッタナシ(牝2)がネクストスター金沢を制し、翌年への期待をつないだ。
【笠松】
笠松の重賞戦線では、名古屋や他地区の馬たちを相手に地元馬は苦戦が続いた。笠松競馬場で実施された重賞を地元馬が制したのは、サマーカップのエイシンヌウシペツ(牝5)、オータムカップのキャッシュブリッツ(牡3)、そして笠松所属馬のみで争われるネクストスター笠松のブリスタイム(牡2)の3頭だけ。大晦日の東海ゴールドカップでは、キャッシュブリッツ、中央オープンから転入して初戦を制したサヴァ(牡6)らに地元の期待がかかる。
一方で記録的なことでは、渡邊竜也騎手が笠松競馬場における年間最多勝記録を更新。昨年(2023年)自身でマークした183勝を上回る184勝目を10月23日に達成。その後も勝ち星を伸ばし、12月22日現在、笠松で227勝としている。また12月13日には地方競馬通算1,000勝をデビュー8年目で達成した。
その渡邊騎手の所属厩舎、笹野博司調教師も笠松競馬場における年間最多勝記録を更新。前年自身でマークした173勝を上回る174勝目を11月19日に達成。12月22日現在、笠松で187勝と記録を伸ばしている。
【名古屋】
名古屋では、フークピグマリオン(セン3)が東海地区の3歳三冠を制覇。12月22日現在で、今年は重賞のみ9戦して6勝、2着3着各1回。3着以内を外したのは園田に遠征した楠賞の5着だけだった。大晦日の笠松・東海ゴールドカップで古馬も含めた東海地区の頂点に立つことができるかどうか。
古馬戦線では、セイルオンセイラー(セン5)がウインター争覇、飛山濃水杯、くろゆり賞と笠松で重賞を3勝。昨年長距離戦で活躍したアンタンスルフレ(セン6)は、今シーズンなかなか結果が出なかったものの、金沢の北國王冠(金沢)で今年の初勝利を挙げるとともに、同レース3連覇を達成した。
記録面では、岡部誠騎手が3月21日に通算5,000勝を達成。
宮下瞳騎手は、令和6年春の褒章で黄綬褒章を受賞。11月21日には今年106勝目を挙げ、自身が持つ日本人女性の年間最多勝記録を更新。12月22日現在で116勝まで記録を伸ばしている。
そして地方競馬の調教師として最多勝記録を更新し続けている角田輝也調教師は、12月5日に地方競馬通算4,300勝に到達した。
文/斎藤修