2024年を振り返る(兵庫・高知・佐賀)
2024年12月30日
【兵庫】
2024年、兵庫で最大のトピックといえば、イグナイター(牡6)のドバイ(ドバイゴールデンシャヒーン)遠征だろう。兵庫からの海外遠征は初めてのことで、多くのことが手探り状態での5着は健闘といえる。今後、地方競馬からも海外遠征の機会が増えると思われ、イグナイター関係者だけでなく、大きな経験になったはずだ。
イグナイター不在となった春に短距離路線で輝いたのがタイガーインディ(牡7)だった。2月の兵庫ウインターカップで遠征馬を相手に5馬身差で圧勝すると、高知・黒船賞JpnIIIでは7番人気ながら3着に好走。今年から1400メートルに距離短縮となった兵庫大賞典でも5馬身差で圧勝。笠松・オグリキャップ記念では、黒船賞JpnIIIで先着(2着)された高知のヘルシャフトをクビ差で抑えての勝利となった。そして夏には佐賀・サマーチャンピオンJpnIIIに遠征し、ここでも3着に好走してみせた。しかしその後に骨折が判明し、引退となったのは残念だった。
そのサマーチャンピオンJpnIIIを8番人気で制したのがアラジンバローズ(セン7)。中央時代はダート1600〜1800メートルを中心に活躍してオープンまで出世。兵庫移籍後も佐賀・鳥栖大賞(2000メートル)や新春賞(1870メートル)を制するなど、当初は中距離で活躍したが、中央時代にも経験のなかった1400メートルの舞台でも能力を発揮した。サマーチャンピオンJpnIIIは54キロのハンデに恵まれたこともあったが、同じ佐賀1400メートルが舞台のJBCスプリントJpnIでも中央の一線級相手に3着に好走。イグナイター(4着)にも先着して、短距離路線でイグナイターとともに新子雅司厩舎の2枚看板となった。
中距離路線では兵庫生え抜きで、古馬中距離路線では常に中心的存在だったジンギが、8歳になった今年は2戦とも着外となって引退。7月25日には引退式が行われた。
代わって古馬中距離路線を牽引したのが、白鷺賞、六甲盃を制したラッキードリーム(牡6)だったが、同馬はその六甲盃を最後に大井に移籍した。
そして今年後半、一気に台頭したのが、3歳のマルカイグアス(牡3)だった。2歳時にも園田ジュニアカップを勝っていたが、3歳になっての今年前半は菊水賞を回避するなど順調には使えず、西日本クラシックでも高知からの遠征2頭に先着されて3着だった。しかし兵庫優駿を制すると、園田オータムトロフィー、さらに古馬初対戦となった年末の大一番・園田金盃も勝って重賞3連勝。2025年の古馬中距離戦線では中心的な存在となりそうだ。
【高知】
高知では近年の賞金アップにともなって生え抜きから全国区の活躍馬が出ているが、この年の3歳馬では2頭が印象的な活躍を見せた。
2歳時、デビュー2戦目から連戦連勝のプリフロオールイン(牡3)は、圧倒的な強さで高知三冠を制覇。2着につけた着差は、6馬身、7馬身、5馬身というものだった。
一方、2歳のデビューから無敗のまま土佐春花賞を制したシンメデージー(牡3)は、園田に遠征した西日本クラシックを勝利。あらたにJpnIとなった東京ダービーでは地方馬最先着の4着、金沢で行われた西日本3歳優駿を大差で圧勝すると、ジャパンダートクラシックJpnIでも地方馬最先着の5着。地元に戻って土佐秋月賞を制すると、古馬初対戦となった名古屋大賞典JpnIIIでもゴール前接戦の3着に入った。ダートグレード3戦いずれも地方馬最先着で、まだ地方馬には先着されていない。
この2頭は同じ打越勇児厩舎。うまくレースを使い分けてこられたためここまで未対戦。4歳になっての古馬戦線で直接対決が実現するのかどうか、注目だ。
古馬短距離路線では、23年に最下級条件からA級まで出世したヘルシャフト(牡7)が絶対的な存在となった。黒潮スプリンターズカップ、御厨人窟賞を連勝すると、ダートグレード初挑戦の黒船賞JpnIIIでも2着。さらにトレノ賞、建依別賞も制し、1300/1400メートルの重賞で4勝を挙げた。
古馬中距離戦線で注目となったのが、22年の二冠馬ガルボマンボ(牡5)、23年の三冠馬ユメノホノオ(牡4)の対戦。二十四万石賞ではユメノホノオがガルボマンボに1馬身差をつけて勝利。珊瑚冠賞では逆にガルボマンボがユメノホノオに3馬身差をつけて勝利。それぞれ今年のタイトルはここまでひとつずつだが、大晦日の高知県知事賞が昨年に続いて雌雄を決する舞台となる。昨年、直線2頭が馬体を併せての一騎打ちは、半馬身差でユメノホノオに軍配が上がったが、果たして今年は。
なお打越調教師は今年12月28日現在で、227勝、勝率32.7%は、ともに2位に差をつけての全国1位。収得賞金5億2000万円余りも、浦和・小久保智調教師(7億1900万円余り)に次ぐ2位となっている。
【佐賀】
佐賀では、ウルトラノホシ(牡3)による新たなダート三冠に向けての挑戦が全国的な注目となった。2歳時の全日本2歳優駿JpnI(6着)に続いて南関東遠征となったブルーバードカップJpnIIIでは、勝ったアンモシエラにわずか0秒2差の4着で地方馬最先着。さらに雲取賞JpnIIIにも遠征したが6着。ダート三冠への挑戦は断念することとなったが、地元では佐賀皐月賞、栄城賞の二冠を圧倒的な強さで制した。
古馬では、テイエムフェロー(牡5)が佐賀スプリングカップ、佐賀がばいスプリント、吉野ヶ里記念と、1300〜1800メートルという幅広い距離で今年前半に重賞を3連勝。また、春に大井から転入したアエノブライアン(牡6)は、佐賀王冠賞、九州大賞典と長距離重賞2勝をはじめ、8戦オール連対と安定した走りを見せた。
そして年末の中島記念では、JBCクラシックJpnI・4着好走のあと佐賀に移籍したシルトプレ(牡5)が、アエノブライアンに5馬身差をつけて圧勝。2025年の佐賀記念JpnIIIでは地元の期待となりそうだ。
2歳では牝馬ミトノドリームが、九州ジュニアチャンピオン、ネクストスター佐賀を制してデビューから3連勝。2着との着差が6馬身、5馬身、4馬身差といういずれも圧勝だっただけに、年明けの3歳戦線で注目となりそうだ。
文/斎藤修