ジョッキーがダートコースを疾走!オッズパーク杯ゴールドトロフィーリレーマラソン@園田、開催
2024年11月06日
10月20日、園田競馬場で恒例の「そのだけいばダートランニング2024」が行われました。
例年、多くのランナーが集まるイベント。実際にレースで使っているコースを走れるとあって競馬ファンには嬉しいイベントに加え、競馬に馴染みのない方にとっても珍しいコースのようで、多くの市民ランナーが参加します。
それはもう、出で立ちから「違うな」というオーラがムンムンな方々も多数。それでも第2レースのチャンピオンシップ5555mランで上位入賞した猛者たちは「めちゃくちゃしんどいです!」と話しました。
フルマラソン経験者でも第一声がそうなってしまうくらいのコースは、公式Tシャツに書かれた「砂地獄」そのもの。
前日からの雨の影響で、水分を少し含んだ稍重のダートは、本来なら砂が締まって走りやすいはずなのですが、それは「ダートの中では」の話。芝生やコンクリートに比べると、足を取られるのは必然です。
加えて、園田では2020年4月にオーストラリア産の砂に入れ替えて、レースでも従来より時計がかかるようになりました。実際に歩いた感触でも、蹴り上げた力が伝わりづらく、スピードが逃げていくイメージ。そんな砂地獄を存分に味わっていただいたことになりますが、みなさん最後には笑顔で「楽しかったぁ!」と口を揃えてくださったのは、普段足を踏み入れることができない貴重な場所だからなのでしょう。
また、本物の実況アナウンサーの実況付き、というのもこの大会の魅力。この日は園田・姫路の実況を担当する木村寿伸アナウンサーが「おーっと、斜行した」「前5頭が...あ、5人だ(笑)。4コーナーにさしかかります」といった競馬を彷彿とさせる実況で楽しませてくれました。
さて、そうこうしていると、見慣れた勝負服姿のチームが現れました。
園田・姫路のジョッキーチームです。
毎年参加していて、今年もオッズパーク杯ゴールドトロフィーリレーマラソンに出走。過去には2位入賞の経験もあるようで、速いのは馬に乗っている時だけではないようです。
ベテランメンバーの鴨宮祥行騎手は「今年こそ優勝目指してがんばります!」と宣言。
さらに、石堂響騎手の選手宣誓でオッズパーク杯ゴールドトロフィーリレーマラソンは幕を開けました。
第1走者を務めたのは、騎手デビューを目指して厩舎実習中の小谷哲平候補生。
外枠から好スタートを切ると、私の手元集計では14番手で第2走者の米玉利燕三候補生にタスキを繋ぎます。
1コーナーでタスキを受け取った米玉利候補生はすぐに進路を内へ。多少、砂が深くても距離ロスを抑える作戦に出て、すぐに2人、3人と抜かしていくと、タスキは第3走者の新庄海誠騎手へ渡ります。
厩務員時代には12連勝で重賞・摂津盃を制したヒダルマを担当していた23歳のルーキーは超快足。
快足すぎて、顔がわずかにボヤけています(撮影ミス。苦笑)。みるみるうちにゴボウ抜きして、第4走者の高橋愛叶騎手もいい走りを見せます。
第5走者の土方颯太騎手は最後までバテない走り。この走りは、個人的には高知の一発逆転ファイナルレースで買いたいタイプでした。
第6走者は大山龍太郎騎手。先月、イモータルスモーク(高知)で園田チャレンジカップを勝って重賞初制覇を果たしたばかりの彼もまた快足っぷりを見せます。
しかし、写真では笑顔なものの、「トレーニングで馬場を走るのと違って、ダートランはプレッシャーが...」とお腹を抑え気味。このあたり、先輩からの「目指せ優勝!」の言葉がのしかかっていたのかもしれませんね。
第7走者の山本屋太三騎手は「今日、マキバオーのお守りをもらったんですよ」と、早速それを身に着けてのラン。きっと最後の直線はマスタングスペシャルを繰り出せたはずです。
第8走者・石堂騎手はショートパンツにサングラスとバッチリの恰好で、外から入るタイプかと思いきや、見た目に違わぬいい走り。前日は長谷部駿弥騎手とともに佐賀競馬場でナイター競馬に騎乗し、当日輸送で園田に来たとは思えぬ走りっぷりでした。
さらに驚いたのは第9走者の長谷部騎手。メンバー中で最も丹念に準備運動を行い、フォームがめちゃくちゃかっこイイ!一緒に見ていた人と思わず「かっこイイ~!」と黄色い声を上げてしまいました。
第10走者の鴨宮祥行騎手は「年々、キツい(苦笑)」と言いつつも、やりきった表情。「僕と小谷さんは1周だけなんです」と、開放感に包まれて去っていきました。(なぜか写真は物憂げだけど)
ここでリレーマラソンのルールなのですが、1チーム20周。チームの人数によっては何名かが2周走らねばならず、若手たちは同じ順番でもう1周を走る、というローテーションでした。
そこでちょっと胸アツなシーンも見られました。
それは第11走者の小谷周平騎手からタスキを渡されたのが長男・哲平候補生だったということ。12走者からは2周目に入るのですが、偶然か必然か、親子でタスキを繋ぐことになったのです。
走り終えてしんどそうな父・周平騎手と
笑顔で2周目のランを待つ長男・哲平候補生
子だくさんの大家族で知られる小谷家で上から2番目にあたる長男・哲平候補生。実習先の新子雅司調教師はその走りを見に来るつもりが、思いのほか速くて間に合わなかった...という事件もありましたが、「走り込みは毎日しっかりするように伝えているからね」と、速い走りを誇らしく感じているようでした。
そうして1周目と同じ順で若手たちは2周目に入っていったのですが、その多くがちょっと曇った表情でリレーゾーンへ。それだけダートコースを走るのはタフでしんどかったのでしょうね。
そうした中、意気揚々と現れたのはカッコイイフォームの長谷部騎手。
胸元につけたゼッケンには永井孝典騎手と書かれているのですが、どうしても外せない用事があり、同期の長谷部騎手が代打出走となったのでした。
「ゴールの時、余裕があったら永井のゼッケンをアピールします。同期と一緒にゴールするつもりで」
そう言い残してコースに駆け出してていくと、最後の直線、永井騎手のゼッケンを両手で持って笑顔でゴール。5位でのフィニッシュで、先輩・後輩たちからは笑顔で労いの言葉をかけられました。
オッズパーク杯ゴールドトロフィーリレーマラソンの優勝チームは「GRlab園田(まだ仮)」。今年で3連覇という偉業です。
さらに、3位の「GAIA競馬部 関西支部」にはスーパースプリント300mラン優勝者もいたようで、上位チームは格が違う走りでした。
その走りにはオッズパークのイメージキャラクター・マキバオーもビックリしたことでしょう。表彰式ではマキバオー、そのだ・ひめじ競馬のそのたん、ひめたんも記念撮影に収まりました。
ジョッキーたちも上位チームにはお手上げといった様子でしたが、普段は自分が走ることは少ない彼ら。そんな中、アスリートとしての意地を見せた一日でした。
文/大恵陽子