各地のリーディング 前編(岩手、金沢、東海)
2024年08月13日
地方競馬は、競馬場ごとに所属する人数が限られていることから、トップジョッキーに人気馬の騎乗が集中することで勝利数や勝率が突出してしまうこともめずらしくない。ときに勝率4割、連対率6割という成績の騎手が出てくる。たとえば昨年でいえば、高知の赤岡修次騎手は、近年騎乗数を制限するようになったこともあり、必然的に勝てる可能性の高い馬に多く乗ることになって、勝利数(172)こそ全国で12位だが、勝率38.5%、連対率52.6%では断然の数字を残した。「地方競馬は騎手で買え」というようなことをよく言われるのはそのためだ。
※以下、通算成績は地方競馬全体での数字。それ以外は特に明記のない限り所属場(地区)での数字を示す。
■岩手
岩手リーディングは、岩手所属騎手として歴代最多の地方通算4127勝を挙げた菅原勲騎手(現調教師)が2012年3月限りで引退して以降、村上忍騎手、山本聡哉騎手によるツートップの争いが続いている。
その2012年から15年までは村上騎手1位、山本聡騎手2位が4年続いたが、16年には初めて年間200勝をマークした山本聡騎手がトップに立ち、18年まで200勝前後の争いで山本聡騎手が3年連続でトップをキープ。
しかし19年には、岩本怜騎手、鈴木祐騎手ら若手が勝ち星を伸ばしてきたことで勝利数が分散し、150勝前後の争いとなって村上騎手が1位に返り咲き、山本聡騎手が2位となった。
そして17年ごろから3位、4位を争っているのが、山本政聡騎手と高松亮騎手。
20年には村上騎手が6月から1カ月ほどの休養があったため、1位は山本聡騎手で、2位に高松騎手が食い込んだ。
21年は再び村上騎手が175勝でトップに立ち、山本聡騎手はわずか3勝差の172勝で2位。22年は山本聡騎手212勝、村上騎手186勝と、再びハイレベルな争いとなった。
23年は山本聡騎手が6月に3週間ほど、8月から2カ月半ほど怪我による休養があったため、村上騎手がトップで、2位は高松騎手だった。
そして今年は8月8日現在、山本聡騎手が93勝で1位。2位は高松騎手80勝、3位は山本政騎手75勝、村上騎手は67勝で4位となっている。とはいえ、トップ4の顔ぶれは変わらない。
年齢でいえば現在、村上騎手47歳、山本政騎手39歳、高松騎手38歳、山本聡騎手36歳。そろそろ20代の若手の台頭も期待したいところ。
■金沢
金沢競馬は年ごとにリーディングの入れ替わりが激しい。それは絶対的な存在である吉原寛人騎手が他場への遠征が多く、地元金沢では騎乗数がそれほど多くないためでもある。
過去10年、2014〜23年のリーディング1位は、吉田晃浩騎手(14年)、田知弘久騎手(15年)、藤田弘治騎手(16、17、19、20年)、青柳正義騎手(18、21、22年)、栗原大河騎手(23年)。
金沢競馬は冬季休催があり、基本的には週2日、年間の開催日数は90日(23年実績)と地方競馬では少ない部類で、20年1位の藤田騎手が98勝だった以外、トップ争いは100勝をやや上回る数字となっている。
ちなみに23年の金沢競馬場のランキングは、122勝を挙げた栗原騎手がデビュー9年目で初めてトップに立ち、以下、2位が120勝で青柳騎手、3位が89勝で中島龍也騎手。吉原騎手は86勝で金沢では4位だが、期間限定騎乗していた高知での58勝などを含め金沢以外でも86勝、年間計172勝を挙げており、金沢所属騎手の地方競馬全体の勝利数では、やはり吉原騎手がダントツの勝利数となっている。さらに昨年の収得賞金は、高知で1億8783万円、金沢で9073.8万円と、賞金の高い高知では金沢の2倍以上を稼いだ。
今年も8月7日現在、栗原騎手が72勝でトップで、2位が67勝で中島騎手。そして50勝で3位にデビュー2年目の加藤翔馬騎手が躍進している。
■東海(笠松・名古屋)
笠松・名古屋は常に騎手が行き来しているので、まずは東海地区としてリーディングを見ていく。
東海地区では、それまでの吉田稔騎手に替わって2004年に初めてリーディングとなった岡部騎手が、現在まで20年に渡ってほぼ不動といっていいトップを続けている。2014年以降の過去10年で見ても、長期休養があった15年と16年にはトップを譲ったが、それ以外の年はずっと年間200勝前後をキープして東海地区のリーディングとなっている。
その岡部騎手は、名古屋所属騎手として通算最多勝記録を更新し続け、今年3月21日には地方競馬通算5000勝を達成。8月7日現在の地方通算5109勝は、地方競馬全体で現役4位、歴代でも6位の記録となっている。
東海地区では開催日数の多い名古屋所属騎手が上位を占めることが多いが、近年、躍進が目覚ましいのが、今年デビュー8年目を迎えた笠松の渡邊竜也騎手だ。22年には所属する笠松競馬場で164勝、23年には同183勝を挙げ、2年連続で笠松競馬場における年間最多勝記録を更新している。東海地区の数字では、22年188勝、23年191勝で、ともに岡部騎手に次ぐ2位となっている。
今年も8月8日現在、東海地区では184勝で岡部騎手がダントツリーディングを走っているが、2位が135勝でデビュー4年目の塚本征吾騎手(名古屋)、渡邊騎手は133勝で3位。絶対王者・岡部騎手に次ぐ2位の座を、名古屋、笠松の若手2人が争っている。
岡部騎手は現在47歳。近い将来に来るであろう東海地区の世代交代で、誰がトップに立つのか気になるところ。
文/斎藤修