岩手競馬の調教がいよいよ始まりました!
2024年02月15日
2月12日(月祝)、盛岡・水沢競馬場の馬場が開放。3月10日(日)から再開する水沢競馬へ向け、コースを使った調教がスタートした。
冬休み間、岩手競馬の競走馬はどうしているか。基本は競馬期間中に溜まった歴戦の疲れを取るため、きゅう舎内で完全休養。開いた窓から外をボーッと眺めていたり、時に横になったり、飼い葉を食んだりしている。また牧場へ移動する馬がいるし、在きゅう馬でもサンシャインパドック、丸馬場などで放牧するきゅう舎もある。
きゅう舎スタッフも同様。競馬シーズンが終わるとローテーションを決め、各スタッフは1週間から10日ほどの休暇が取ることができる。かつては県内出身者が多かったが、今は県外から岩手競馬へ来たスタッフも多い。
さらに現在はウズベキスタン、インド、フィリピンなど海外からの"出稼ぎ"も年々増加。国内外を問わず、冬休みを利して故郷へ里帰りする(戻らないスタッフもいます)。これが通年開催ではない岩手競馬の強みとも言える。
永田幸弘きゅう舎(盛岡)の東江(あがりえ)くんの実家は東京。"冬休みは何をしてたの?"と聞いたら、東江くん「中山競馬場へ行きました。メインはアメリカジョッキーズクラブカップでしたが、京都の東海ステークスを勝ったウィリアムバローズ、強かったですね!」。つくづく競馬が好きだと思った。こんな会話ができるのも楽しみの一つだ。
調教後、愛馬にバンテージを巻く永田幸宏トレーナー
調教が再開する特にこの時期、きゅう舎スタッフはケガなどに注意を払わなければならない。元気が有り余っているからだ。競走馬の頭脳は人間に例えると2、3歳時ぐらいだが、体的には8倍以上。
外に出ることによる解放感、また広いコースに入ってテンションが上がったり、はしゃいだりするのだが、担当者が持て余すほどのパワー。いきなり走ったり、制御できないほど暴れることも少なくない(あくまでも競走馬に悪意がある訳ではありません)。
余談だが、かつての岩手競馬は11月中旬には開催が終わった上、当時は特別開催もなく4月から新シーズンがスタート。4ヵ月以上の冬休みがあった。自分が競馬の世界に入った当時がそうだった。
その長期間、きゅう舎仕事がなかったかと言えば、そうではない。競馬シーズンが終わると競走馬が総入れ替えされる。冬期間も走らせたい場合は紀三井寺競馬、中津競馬などへ移動。より高いステージを求める場合は南関東だったが、空いた馬房にはデビュー前の1歳馬(当時表記では2歳馬)が入った。
今は北海道などに多くのトレーニングセンターがあるため、馴致されてきゅう舎へ入るが、当時は完全な野生馬。鞍をつける前段階として毛布を背中につけて慣れさせることから始まり、競走馬になるための数々のコミュニケーションを"0(ゼロ)"から教えていった。現在のホッカイドウ競馬と似ていると思う。
コースに雪が積もる冬も格好だった。仮に馬から落とされても雪がクッション代わりにもなった。もちろん初期段階でも走るか、走らないかはある程度分かり、その上位ランク馬は馴致を進めると岩手デビューではなく、南関東へ入る馬も多かった。そう、かつての岩手競馬の盛岡・水沢競馬場はトレーニングセンターでもあった。
今年の特別開催は3月10日にスタートするが、今回、馬場開放した2月12日(月祝)はおよそ1ヵ月前。競走馬は言うまでもなくアスリート。調教再開後、徐々に負荷をかけてレース仕様に仕上げていくが、疲れのピークは調教再開から約2、3週間後ぐらい。レース再開時に仕上がりの差が出る要因の大きな一つとなる。まだ1ヵ月先の話だが、岩手競馬の検討材料に入れてくだされば幸いだ。
文/松尾康司