地方競馬ドキドキコラム

2023年度のばんえい競馬を振り返る

2024年04月01日

 3月17日で2023年度のばんえい競馬の開催が終了した。
 ばんえい競馬は4月下旬に始まって、翌年3月までが1シーズン。ばんえい競馬は、条件クラスのレースまで含めて、開催が進むごとに負担重量が重くなっていく。
 たとえば2歳の一般戦ではシーズン当初は490kgから始まって徐々に負担重量が増え、最後の開催では2歳A級で580kg、2歳D級で550kgとなる(牝馬は20kg減、セン馬は10kg減)。実際の負担重量は、年度内の収得賞金によってさらに加増がある。
 古馬の主要重賞では、シーズン最初に行われる古馬重賞、ばんえい十勝オッズパーク杯の基礎重量は720kgだが、シーズンが進むに連れて重い重量での争いとなり、1月の帯広記念は基礎重量が890kg、そしてばんえい競馬の最強馬を決めるクライマックス・ばんえい記念は1000kgでの争いとなる。
 それゆえばんえい競馬は、平地競馬よりも年度(1シーズン)の区切りがはっきりとしている。
 
 今シーズンの古馬戦線は、一昨年、昨年のばんえい記念で順序を変えて3着以内に入ったメムロボブサップ、アオノブラック、メジロゴーリキという3強の活躍がより際立つシーズンとなった。
 シーズン最初に行われる古馬重賞・ばんえい十勝オッズパーク杯こそスピードを活かしてインビクタが勝ったが、その後、ばんえい記念の前までの主要古馬重賞では、メムロボブサップが北斗賞、旭川記念、ばんえいグランプリと3勝、アオノブラックも岩見沢記念、北見記念、チャンピオンカップと3勝、メジロゴーリキは帯広記念を制した。
 
 そして開催最終日、迎えたばんえい記念は、今シーズンそれまで14戦10勝、2着2回ときわめて安定した成績を残してきたメムロボブサップの単勝が1.9倍、アオノブラックが2.8倍、そしてメジロゴーリキが5.0倍で、3頭の3連複は、なんと1.8倍。昨年がこの3頭の決着で3連複4.5倍だったので、その数字を見ただけで今シーズンはいかに3強体制が強固なものになったかがわかる。
 勝ったのはメジロゴーリキ。第2障害手前まで早めに進め、十分に息を入れて障害も先頭。メムロボブサップは障害4番手から追いかけたが、障害を越えてから一度も止まることなく歩いたメジロゴーリキが振り切って勝利。メムロボブサップは持ち味である後半の脚を繰り出したものの、メジロゴーリキをとらえるまでには至らず2着。今シーズンそれまで出走した古馬重賞5戦ですべて掲示板を確保していたコマサンエースが3着に入り、一旦は3番手という場面もあったアオノブラックはゴール前で力尽き4着だった。
 ばんえい記念を前に降り出した雪でやや軽くなった馬場は、高重量戦でタイムのかかる決着を得意とするアオノブラックには向かなかったようだ。
 一昨年に続いてばんえい記念2勝目を挙げた10歳のメジロゴーリキは、レース前から言われていたようにこれで引退。レース後のインタビューで松井浩文調教師が、ときおり涙で声を詰まらせる場面が印象的だった。
 
240317ばんえい記念.jpgばんえい記念2勝目となったメジロゴーリキ(写真:ばんえい十勝)

 
 そうなると来シーズンの古馬戦線は、メムロボブサップ、アオノブラックという8歳の2本柱を中心に展開されることは間違いないだろう。前半の比較的軽い重量の重賞や雨で軽馬場になれば、同じく8歳のインビクタも勝負になる。前述のとおり重賞で常に掲示板を確保した同じ8歳のコマサンエースが2強にどこまで迫れるか。ひとつ下の7歳では、帯広記念3着で、ばんえい記念では第2障害を2番手で越えた(5着)コウテイが高重量戦で台頭してきそうだ。
 
 5歳世代では、柏林賞、銀河賞、天馬賞の4歳シーズンの三冠を制したキングフェスタが、2歳シーズン、3歳シーズンにもそれぞれ二冠を制していただけに圧倒的な存在。古馬重賞本格参戦となるであろう来シーズンに注目だ。
 3歳三冠(現4歳世代)では、ばんえい大賞典、ばんえい菊花賞の二冠を制したマルホンリョウユウに三冠の期待がかかったが、ばんえいダービーは、それまでの二冠とも掲示板外だったタカラキングダムが勝利。
 3歳世代(2歳シーズン)は確たる主役不在のまま混戦で推移してきたが、ライジンサンがシーズン終盤にヤングチャンピオンシップ、翔雲賞、イレネー記念と重賞3連勝で一気に台頭した。
 牝馬ではドリームエイジカップを制した6歳のサクラヒメが現役最強といえる存在。牝馬限定のカーネーションカップでは2着、ヒロインズカップでは3着に負けているが、トップハンデを背負わされていただけに、むしろ負けて強しといえる。
 
文/斎藤修

 

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