吉原寛人騎手が目標とする記録

2025年07月29日

 「吉原寛人は、いったい何人いるんだ?」と言われるほど、日々、全国各地の地方競馬で騎乗している吉原寛人騎手。
 本人が昨年あたりから口にするようになった大記録達成が間近になった。
 それは、安藤勝己さんによる地方重賞200勝という記録の更新だ。7月27日、地元金沢の百万石かがやきナイター賞をリトルサムシングで制し、これが地方競馬重賞通算192勝となった。
 
 吉原寛人騎手は2001年4月にデビューし、その年は9カ月間の騎乗で95勝を挙げ、NARグランプリ優秀新人騎手賞を受賞。重賞初勝利は3年目、2003年7月1日のオールジャパンリーディングジョッキーという、金沢で当時行われていた騎手交流の重賞だった。
 以降は1年も欠くことなく毎年重賞を勝ち続けている。ただかつては所属場以外で騎乗できる機会はそれほど多くはなく、また金沢で行われている重賞もそれほど多くはないことから、年間の重賞勝利はほとんど一桁。初めて二桁に乗せたのが2013年のことで11勝。
 吉原騎手が南関東で初めて期間限定騎乗したのが2011年(1月17日〜3月11日)で、この間の勝利数は16勝、翌12年(1月10日〜3月9日)に21勝、さらに同年(4月9日〜6月8日)33勝、14年(1月1日〜2月28日)47勝、14〜15年(12月28日〜2月27日)61勝と、年を追うごとに南関東期間限定での勝利を伸ばした。吉原騎手が全国区になっていったのはこの頃だ。
 重賞11勝を挙げた2013年の内訳は、金沢8勝のほか、川崎、船橋、盛岡で各1勝ずつ。年度の関係でこの年は南関東での期間限定騎乗はなく、川崎、船橋での重賞勝利はスポット騎乗でのものだった。
 その後は、2014、18年を除いて毎年重賞二桁勝利を記録。コロナ蔓延によって他地区での騎乗が制限された20〜22年もそのペースはそれほど落ちることはなく、コロナの制限が明けた23年には初めて20勝を超える22勝をマーク。そして24年には28勝。さらに今年、1月2月は重賞勝利がなく足踏みしたが、6月には6勝の固め勝ち、7月にも4勝を挙げ(27日現在)、地方重賞通算192勝とした。
 安藤勝己さんによる、"地方所属騎手による"地方重賞200勝という記録の更新はもう目の前。となって、吉原騎手はまた新たな数字を目標に掲げている。
 実は安藤勝己さんは、中央移籍後にも地方競馬で重賞31勝を挙げている。合計231勝。吉原騎手の次なる目標は、すでにそこにある。
 
 吉原騎手は2024年2月22日、姫路競馬場の兵庫ユースカップを高知のリケアサブルで制し、史上初めて地方競馬の全場(平地)重賞制覇という記録を達成した。そしてもうひとつ、来年になるのか、再来年になるのか、地方競馬重賞最多勝記録の更新という、おそらく今後も容易には達成されないであろう2つ目の記録を達成しようとしている。
 
文/斎藤修

 

東海地区で若手騎手躍進

2025年07月01日

 早いもので今年も折り返し地点。そうしたところで東海地区の騎手リーディング(名古屋・笠松競馬場での成績)が、今年はこれまでと様相が変わって、若手騎手の台頭が目立っている。
 6月29日現在のトップ5は以下のとおり(数字は名古屋・笠松での)勝利数。
 塚本征吾(名) 125
 加藤聡一(名) 92
 渡邊竜也(笠) 90
 岡部 誠(名) 85
 望月洵輝(名) 82
 2017年から昨年まで不動のリーティングだった岡部誠騎手が現在騎乗していないということもあるのだが、岡部騎手がコンスタントに騎乗していた5月末現在の段階でもトップは塚本で107勝、次いで岡部84、渡邊83、加藤78、望月67だったから、2位以下の争いはどうなるかわからないような状況だった。
 
 こうした予兆は昨年からあって、昨年の東海リーディングでは、岡部259、渡邊241、塚本209と、岡部騎手がトップではあったものの、3名が200勝を超えるハイレベルな争いとなっていた。
 特筆すべきは、今年デビュー5年目となる塚本征吾騎手の一気の台頭だろう。デビューした2021年こそ4月からの9カ月間で44勝だったが、22年84勝、23年149勝、24年209勝と、年を追うごとに急上昇。今年は折り返し地点の手前で126勝(名古屋・笠松では125勝)というペースなら、無事に1年間騎乗すれば昨年の数字をさらに上回ることは確実だ。2016年デビューの加藤騎手、2017年デビューの渡邊騎手に先んじて、一気に東海地区のトップに立つ可能性が高い。
 
 さらに注目は、昨年デビューしたばかりの望月洵輝騎手の勢いだ。デビューした昨年は4月からの9カ月間で95勝をマーク。そして今年はここまで82勝。この勢いなら一気に年間200勝の大台に乗せてくるかもしれない。
 ちなみに望月騎手は、デビューからちょうど1年が経過した今年4月8日現在の勝利数が142で、2021年10月に飛田愛斗騎手(佐賀)が記録した、地方競馬におけるデビューから1年の最多勝記録127を更新した。そして今年5月4日には、重賞初制覇を東海優駿(サンヨウテイオウ)で果たしたことも記憶に新しい。
 
 また渡邊竜也騎手は昨年まで3年連続で笠松競馬場における年間最多勝記録を更新し、昨年は笠松だけで232勝を挙げた(地方全体では245勝)。
 
 このように新記録を達成している若手騎手たちだけに、リーディングを争うようになるのは当然のことでもある。
 そして、加藤騎手は2016年に、渡邊騎手は2018年に、塚本騎手は2022年に、それぞれNARグランプリ最優秀新人騎手賞を受賞しているというもの共通項。同賞はデビュー2年目までの騎手に資格があるため、望月騎手は今年の同賞の最右翼といえる。
 新人騎手として全国レベルで活躍している騎手がこれだけ東海地区に揃っているのだから、この騎手たちがリーディングを争うのも、むしろ当然のことといえる。
 
 さて、今年の東海地区のリーディングが年末までにどうなっているか。さらに向こう何年かで、東海地区のこの若手騎手たちがどんな活躍をしているのかを想像するのも楽しみではある。
 
文/斎藤修

 

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