悲願のばんえい十勝オッズパーク杯制覇のメムロボブサップ、目指すは千代の富士!?
2024年05月07日
飛行機で降り立った瞬間、「北海道はでっかいどー!」「は~るばる来たぜ北海道!」と毎回言いたくなるのはなぜでしょうか。
オッズパーク会員のみなさん、こんにちは。競馬リポーターの大恵陽子です。
今回、新千歳空港から高速バスに乗り込み、向かった先は帯広。
この日は帯広競馬場でばんえい十勝オッズパーク杯が行われるのです。
約2時間半。山間を走り、次第にパッチワークのような緑と茶色の畑が見え始めると、十勝地方。帯広駅でバスを降りると、ひんやりした空気が肌をかすめました。
JR帯広駅に到着。市内には桜が咲いていました。
さぁ、ここから競馬場へ。
......というところなのですが、まだお昼過ぎ。ナイター開催のため第1レースには早いし、帯広周辺は温泉の宝庫。モール泉という、古代の植物が堆積してできた地層を通って湧き出た湯はアメリカンコーヒーのような濃茶色をし、5分も浸かれば体の芯からポカポカしてくるんです。
というわけで、路線バスに乗って約10分。モール泉が楽しめるスーパー銭湯が第一目的地となりました。490円というお手頃入浴料ながら、期待を裏切らぬいいお湯。東京から約1ヶ月遅れでやってきた北海道の春の空気は爽やかで、露天風呂で清々しい汗を流しました。
そうして向かった帯広競馬場。
スタンド壁面の写真はいつ見ても迫力たっぷり
ん?なんだかものすごい人だかりができているぞ!と歩いていくと、群衆の先にいたのはばんえい競馬でお馴染みの芸人・スキンヘッドカメラさんたち。その後には吉本芸人も登場して、「オッズパークpresents吉本芸人大集合!」のお笑いステージが行われました。
大盛況だったお笑いステージ
スタンド1Fでほっこりする醤油ラーメンをすすり、入場門外にある「とかちむら産直市場」で人気ナンバーワンという本格ポテトチップスを買い、珍名馬で人気のウチュウジンのパドックを見てはしゃいでいるうちに、日は暮れてあっという間にばんえい十勝オッズパーク杯の時間となりました。
ナイター照明の下、パドックに一番に入場したのは誘導馬。胸前には手作りのマキバオーのタペストリー、頭にはチュウ兵衛親分が乗っていて、オッズパークのイメージキャラクター『みどりのマキバオー』の世界観たっぷり。
漫画『みどりのマキバオー』の世界観たっぷりの誘導馬
マキバオーは手作りで愛嬌あふれます
続いて入ってきた出走馬の中に、ひときわ迫力のあるマッチョな馬がいました。
「あっ、これがメムロボブサップか!」
ボブサップといえば、平成の時代にお茶の間を賑わせたゴリマッチョの格闘家を思い出しますが、メムロボブサップの父ナリタボブサップがまさにそんな馬だったと地元ファンは話します。背も高いし、幅もあって筋肉もすごかった、と。
メムロボブサップのムッキムキの筋肉はその父の遺伝子なのでしょうか。
阿部武臣騎手の勝負服カラーに合わせた紫と白のボンボンをたてがみにつけ、輝いて見えます。
そういえば、ばんえいファンの友人がこう言っていました。
「メムロボブサップはパドックで元気が良すぎるくらいの方が状態がいい、と個人的には思っているんです」
目の前のメムロボブサップはパドックを出ていく時、ゲートに向かう道と、何度か走り出しそうなくらいの気合いを見せました。
「これは好調の証なのかな!?」
過去3度敗れたばんえい十勝オッズパーク杯の悲願の制覇へ、期待が高まります。
他の馬たちも素晴らしく、コウテイも迫力ある体で、オーシャンウイナーは水色(もしかして海色!?)の飾りをつけて闊歩、アオノブラックやインビクタもカッコいい体に映りました。
1,100kg超えのコウテイ
水色の飾りをつけたオーシャンウイナー
2021年、22年とばんえい十勝オッズパーク杯を連覇しているアオノブラック
昨年覇者のインビクタ
でもやっぱりメムロボブサップが勝つところを見たいなぁと思い、第二障害の2番レーン(外詰め)にカメラの設定を合わせて発走を迎えました。
馬場水分は1.4%。
スタートして一斉に9頭が駆け出すと、砂埃が舞い上がります。シャンシャンという音とともに第一障害を先頭で駆け下りたのはメムロボブサップ。その後、第一障害と第二障害の間を6回刻み前半57秒でスムーズに第二障害に先頭でたどり着くと、障害のかかりしなで失敗した昨年とは打って変わってスンナリと第二障害もクリア。
余裕の手応えで先頭を譲らぬまま、2着アオノブラックに5秒2差をつけて完勝しました。
圧倒的な力を見せて第18回ばんえい十勝オッズパーク杯を制したメムロボブサップ
堂々の勝利で、記念撮影時にはあくびをする余裕さえ
口取り撮影にはこの日、お笑いライブで盛り上げ、表彰式プレゼンターも務めた吉本芸人のみなさんも
オッズ・パーク株式会社賞を受け取る竹澤一彦オーナー
「やっと獲れました」
安堵の笑みを浮かべた阿部騎手。4度目の正直でばんえい十勝オッズパーク杯初制覇となりました。
「2年は雨で馬場が軽くなってアオノブラックに敗れ、昨年は障害でアクシデントがありました。先行して前に行ければ余裕があるだろうし、障害さえ越えれば、と思っていました」
「4度目の正直で今年獲れてよかったです」とオッズパーク杯初制覇を喜んだ阿部武臣騎手
表彰式ではプレゼンターのスリムクラブ・真栄田賢さんがお祝いに財布から現金を渡そうとして、笑いに包まれる場面も
坂本東一調教師もこう話します。
「重量が700kgくらいまでならすごく気分よく行く馬なんです。年齢による衰えは全くありません」
メムロボブサップの(左から)竹澤一彦オーナー、坂本東一調教師、阿部武臣騎手
ばんえいは開幕の4月は斤量が軽く、シーズンが進むにつれて重たくなっていくというシステムに加え、賞金を獲得していくと重賞では追加で重量を背負うことになりますから、この先は重量との戦いもあるでしょうが、今年はいくつ重賞を勝つのだろう、とワクワクさせるレースでした。
ところで、ばんえいは初心者の私。思い切って坂本調教師にこう尋ねてみました。
「素人目にもメムロボブサップは迫力ある馬体で輝いて見えました。プロの目から見た長所は?」
すると、こんな答えが。
「私を見ていれば、そのまんまだと思います」
えっ!?
あ、カッコいいということでしょうか。
「あはは。マイクがないとたまにこういう冗談を言うんですよ(笑)。ボブサップはどちらかというとレースは自分で作る馬で、今日のようなパターンになってくれれば大丈夫。若い頃はばん馬では小さい方で、他の馬と比べたら50〜100kgくらい軽くて、背も小さかったんです。でも、筋肉はすごく張っていますよ。相撲界で言えば、舞の海や千代の富士。千代の富士くらい強くなってくれればいいねぇ。相撲とばん馬は一緒で、『食べれ。太れ』。調教で汗をかかせて、食べられるだけたらふく食べさせます。そうじゃないと荷物に負けちゃいますからね。昼休憩の時間帯や夜中に厩舎へ見に行って、エサを残していたら『ちょっとどこか変なのかな』と思います」
私が感じた迫力は、体の大きさというよりも、幅のある体や立派な筋肉からくるものだったのかもしれません。
正面から見ると、幅のある馬体であることがよく分かるメムロボブサップ
さて、阿部騎手は今後の夢をこう語ります。
「メムロボブサップがまだ勝っていない重賞を獲りたいです。あと、ばんえいグランプリ四連覇をしたいですね」
ばんえいシーズン最初の重賞・ばんえい十勝オッズパーク杯を制し、メムロボブサップの新たな一年がスタートしました。
文/大恵陽子