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GIRLS KEIRIN × OddsPark

  • GIRLS KEIRIN × Odds Park Ver.4

    日本競輪学校 滝澤 正光校長

    赤見 千尋

トップ選手から校長先生になられた経緯というのは?

滝澤:もともと選手時代から教官を兼任でやらせていただいていて、引退後に教官で入って、その後約1年半で校長になりました。最初にお話をいただいた時は「わたしのような者が?」という気持ちもありましたが、期待していただいたことに感謝して、自分なりに頑張ってみたいという気持ちもあってお引き受けしました。今そこから5年経ったところです。

教える立場になって難しい部分はありますか?

滝澤:現役選手から校長になったというのが過去にはなかったですから、その特徴をしっかりと出して指導していきたいと思っているのですが、自分がこうなって欲しいという気持ちと、生徒側の気持ちとがあるじゃないですか。そこに温度差は感じています。そこは常に合わせていかないと、片方だけ熱くなっても機能しないので、お互いが一つの目標を共有できるようにと考えています。

この生徒は成績が伸びていくないうようなところは見えますか?

滝澤:そうですね。100%ではないですけれども、そういう風に感じて実際に強くなった生徒もいますし、傾向というのはわかって来た気がしています。やはり人よりも多く練習をするということは大きいですね。一番大事にしているのは、競輪学校というのはカリキュラムがきっちりと決まっているので、生徒側からするとそれをやらされていると感じるというか、与えられた課題をこなしていくことで精いっぱいになるんです。その中で、自分で考えて努力することが大事なので、そういう子はやっぱり伸びて行きますね。

滝澤先生は訓練指導もされるんですか?

滝澤:今までは、比較的上位成績の生徒を指導することが多かったんですけど、今回生は全般的に見ることが多いですね。もともと自分も下の方から上がって行ったので、成績が伸び悩んでいる生徒に対しては、その経験を活かしてアドバイスを送りたいなと。

先生のご経歴を伺うと、学校時代は失礼ながら下の方の成績だったという…

滝澤:仰る通りです(笑)。わたしは自転車経験なく競輪界に入って来たものですから、上手くいくのに時間が掛かりました。その中で心が折れそうになったこともありますけど、「とにかく強くなって日本一になる!」っていう信念がものすごく強かったので、進んでいけたんだと思います。

先生のご経験は生徒たちにとっても相当な説得力がありますよね。

滝澤:生徒たちに話した時にはポカンとして聞いてましたけど(苦笑)。ちょっと熱く語りすぎちゃって、生徒たちは引いていたというかね…。

最近社会的にも言われていますけれども、冷静な子が多いですか?

滝澤:そうですね。最近特に感じるのは、内側には秘めたものがあると思うんですけど、もっと外に発信して欲しいなと。見ていてスマートなんですけど物足りなさは感じます。そうなると、こちらが熱くなればなるほど相手は引いてしまいますからね。僕は昭和の人間ですけど、生徒たちはほとんどが平成ですから。もっと生徒間で競争意識を出してもよいと思っています。

伸び悩んでいる生徒にはどんな風に声を掛けるんですか?

滝澤:目標を持てって言いますね。当たり前のことなんですけど。目標があるとそれに向けて努力するわけじゃないですか。日本一を獲るためには日本一練習しなければならないですから。

やっぱり気持ちの問題というのは大きいですね。

滝澤:大きいですよ。時速60キロ以上で勝負する中で、最後は日々の練習と精神力の勝負ですから。気持ちと普段の積み重ねが大事なんです。

生徒たちにお話を伺うと、みんな「先行選手になりたい」って言っていました。

滝澤:先行というのは選手の基本なので、そこを目指すことは大事です。風圧を受けるので一番力を使うし、脚力がなければ勝負できない。だから、若い時にその基礎をしっかりと築いておけば、先行ができなくなっても人の後ろから追い込むようになったりと、スムーズに転向できるんです。わたしも先行にこだわって現役時代やってきました。人それぞれ戦法に関しては考えがある中で、自分は先行にこだわってきたことに悔いはないです。ぜひ生徒たちにも勧めたいので、日々話はしています。

先行というのはそんなに大変なことなんですか?

滝澤:肉体的にも精神的にも苦しいですね。競輪学校の教育の中で、克己、誠実、親和という3つを挙げているんですけど、先行を通して克己の気持ちを育ませることができるんです。なぜかというと、先行選手は自分の前には誰もいないんですよ。信じるのは自分しかいない。追い込み選手は前に人がいて、この人を追い込めば1着だとか、常に人を目標にして走れるんですけど、先行選手は後ろから誰がいつ来るのかわからない中で戦うので、己に勝つということに最高に適した戦法なんじゃないかと思います。簡単じゃないことに猛然と立ち向かっていく経験というのは、若い時には大切ですよね。何かあった時に常に避けるのではなく、高い壁にも突き進んでいく気持ちの強さを育めば、先の人生にも繋がって行くんじゃないかと。

今回生は入学して4か月、ここまで指導してきていかがですか?

滝澤:タイムは決して悪くないけど、勝負師としての気持ちがまだまだですね。後半はその辺りもしっかり指導していきたいです。今の子は体は大きいんですけど、力とか基礎体力は弱いんですよ。だから、体の皮は大きいんですけど、芯の強さはこれからです。

ガールズが始まって今回で5期目ですけれども、先生は1期生からご指導されてきたそうですね。

滝澤:1期生の頃は女子教育というものが初めてだったので、どこまでやっていいのかという物差しが出来ていませんでした。今思うともう少し追い込んでも良かったのかなと。2期目3期目と重ねてある程度育て方も構築されて来たので、今はしっかりと指導できていると思っています。

年上の生徒は他のスポーツを極めてから入学して来る方が多いですけれども、そういう生徒の難しさというのはないですか?

滝澤:一番気にしているのは、燃え尽き症候群になっていないかどうか。前のスポーツで頂点を極めちゃっていると、競輪をゼロから始める時にどっぷりとハマれないんです。例えば、前にプロ野球選手で多額の契約金を貰ったけどダメで、また一から競輪選手へっていう時に、気持ちを引きずってしまうんですね。アイススケートでオリンピックを目指していたような生徒でも、当時のように練習に没頭できないっていう。年齢的にも前は若い時にがむしゃらにやれていたものが、今は頭で考えて効率のいいところだけを探してしまうんです。スポーツって、とにかく没頭する時間が必要じゃないですか。その時間が使えないんですよね。無駄に思えて。

間口が広い分、そこは難しいですね。

滝澤:いろんなスポーツからたくさんの子が競輪に来ていますけど、気持ちをきっちり切り替えられるかどうかが大きいです。今女子で活躍している小林優香選手はバレーボールをやっていたんですけど、彼女は頂点を極めてなかった。その分、競輪で極めようという気持ちが強いですね。先ほども言いましたけれども、精神面が相当大きいです。いかに練習に真剣に取り組んだかっていうことが結果に繋がりますから。

これからガールズの競輪選手を目指す子にとっては、サマーキャンプという大きな行事がありますよね。

滝澤:あそこから選手になった子が多いので、登竜門になってきました。今回も多くの子が競輪学校志望の子でしたから、今後の広がりに期待したいです。まぁ、お子さんで自転車競技というのはなかなか日常的なスポーツではないんですよね。なぜかと言えば自転車が約30~50万円もしますから。個人で負担するのは大きなハードルです。もっともっと安価になれば、競技人口が広がることによってよりいい選手が生まれると思うんです。とにかく圧倒的に競技人口が少ないですから。ガールズに関して言えば他競技から競輪学校に入って1位で卒業していく人が多いんです。自転車経験がある人にとっては歯がゆいですよね。その辺りを見ると、やはり層が少ないんだと思います。今後は東京オリンピックという大きな大会がありますから、そこへ向けて増やしていきたいですね。オリンピックで活躍する選手が出れば、一気に注目度が上がるんです。チャンスを考えると、女子の方がメダルに近い位置にいると思います。競技の方でもぜひ新たなスター選手が生まれて欲しいですし、そのサポートができたら嬉しく思います。

※ガールズサマーキャンプとは
トラック自転車未経験の方から経験者の方まで参加できる、競輪学校で開催される女性限定のキャンプ。今年は未経験者が8月8日~10日、経験者が11日~14日の日程で開催された。
競輪選手と同時にオリンピックを目指している生徒もいるということですけれども。

滝澤:今もちょうど日本代表チームの強化指定に所属している鈴木奈央という生徒がいます。基本的には競輪選手を養成する学校なので、そこはベースとしてあるんですけど、競技に熱のある子に関してはできうる限り協力しています。

では、今後の目標を教えて下さい。

滝澤:指導者の立場ですから、いい選手を輩出することに尽きます。いい選手というのはどういう選手かといえば、お客さんに貢献できる選手、車券に貢献できる選手ですね。そういう選手を一人でも多く育てるため、日々努力していきます。

  • 滝澤 正光(たきざわ まさみつ)

    日本競輪学校第23代校長

    生年月日:1960年3月21日 / 千葉県八千代市出身。
    KEIRINグランプリ優勝2回、日本選手権優勝3回、高松宮記念優勝5回、オールスター競輪優勝2回など、中野浩一、井上茂徳、山口国男、佐々木昭彦らとともに競輪黄金時代を率いた競輪界のレジェンド。通算獲得賞金17億5644万円は歴代2位。
    現役時代の2007年より日本競輪学校の名誉教諭を務め、2010年4月1日、日本競輪学校の第23代校長に就任。現在に至る。

  • ■主なタイトル

    ・KEIRINグランプリ優勝2回(1987,1993)
    ・日本選手権競輪 優勝3回(1984,1986,1988)
    ・オールスター競輪 優勝2回(1987,1990)
    ・高松宮記念杯 優勝5回(1985,1986,1987,1989,1992)
    ・競輪祭 優勝 (1990)
    ・全日本選抜競輪 優勝 (1987)
    ・寛仁親王牌 優勝(1993)
    -通算787勝、優勝150回-

インタビュアー:赤見 千尋(あかみ ちひろ)

【プロフィール】
平成10年10月高崎競馬場にて騎手デビュー。以来、高崎競馬が廃止される平成17年1月まで騎乗を続け2033戦91勝。現在は競馬リポーター、ライター、そしてオッズパークの予想ブログ"赤見千尋のRed View"も好評執筆中。

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